1988年発売
昼はOL、夜は探偵ー二足のワラジを履く花子はユニークなキャラクターで難かしい事件に体当り。南条・青野の両刑事を向うにまわして今夜もファッショナブルに町をゆく。日比谷、東京ドーム、代々木公園と東京再発見を兼ねた犯人さがしの末、事件は意外な結末を迎えた。キスより刺激的な、思いもかけない真犯人に迫る花子探偵の初仕事。
麻子、24歳。フランス留学から帰って三年半。仕事は料理の本の翻訳。恋人は兄の友人で、妻子ある鷲見信一。いつかは別れなくては、と思っているが…。或る日、留学中の恋人でモロッコ人のハミッドが、麻子への想い断ちがたく、結婚してくれと成田空港から電話をかけてきた。二人の男性、恋愛と結婚の間で揺れ動く女ごころを描いた、著者初めての書下し恋愛小説。
綾子、19歳。土佐の開拓団の子弟教育のため、夫の要の満州(現、中国東北部)行が決まると、大陸での生活を夢み、生後50日目の美耶を抱え、故郷を旅立った。広野での生活は不便さ半分、楽しさ半分だったが、戦局は悪化し、やがて日本の敗戦が知らされた…。宮尾文学の原点、自伝的長篇小説。
夫と美耶、20歳の綾子、満州(現・中国東北部)での生活は、日本の敗戦により逆転、凄絶この上ない地獄絵が展開された。飢えと病におびえながら、飢餓の極限状況の中で、炊事やおむつ洗い等々の日常生活を強いられ、ただ、ひたすら生きのびようと、逞しく戦っていった。…宮尾文学の原点、自伝的長篇小説。
裕福に暮らしながら、建築設計士の夫を裏切り若い男と密通する房子。事件の処理をまかされ、話をつけるため京都を訪れた雄三は、「大文字」の送り火の激しいゆらぎのなかに、嫂・房子への不思義な罪の共犯意識を覚えはじめる。家庭の秩序を超えてまで房子が求めようとしたものは何か?罪障を償うことも許されぬまま生きる人間の姿を描く会心作。
箱舟沈めて5億円、濡れ手で粟の保険金。詐欺師チームの行く先は波涛は燃える日本海。CIAの乱入で足を伸ばしてソ連領。叫ぶは百舌かマンモスか、連れに来ました要人を。スラプスティックな冒険の眠りなき夜の大長編。
ジェイムズ・ヘリオットはイギリスのヨークシャで獣医をしながら、70年代より作家としても活躍。動物への愛情にあふれた著書は、発表されるたびに欧米でベストセラーに入り、幅広い読者を得ている。名医ヘリオット先生のユーモアと感動の犬物語。
現金輸送車が襲撃された。犯人に名を呼ばれたことから当然疑いをかけられた運転手は、潔白を主張した。彼は、急に病欠した同僚に代って運転手を務め、事故に遭ったのだった。度重なる取調べと周囲の冷たい目に耐え切れず、彼は独力で真犯人を追うが、そのまま失踪してしまう。夫を信じる妻も又、孤独な戦いを挑むがー。社会の谷間で傷つく弱者を描き続ける著書の書下ろし長編。
13歳になったぼくは、前科二犯の父さんと結婚詐欺師の母さんに連れられて、一流の泥棒になるべく修行の旅に出た!ところが大変、抗争中のヤクザにおだてられて敵の親分さんのチワワを盗み出すはめになっちゃうし、ヘンな宗教団体には追いかけられるし、ぼくらの前途は多難。ぼくは立派な泥棒になれるだろうか?そして父さんはおじいちゃんの敵を討てるだろうか?
先端技術企業の金庫から機密資料が漏洩した。容疑者の守衛は無罪。その判決直後のある日、都内の火葬場の炉から出された遺骨にもう一つの髑髏が。一見無関係な場所で発生した二つの事件の背後に、競合会社の思惑と、謎の金庫破りの名人の存在が見えかくれする。守衛の上司の総務部長は独自の調査を開始するが…。元東大医学部教授の著者が専門知識を生かして描く本格推理長篇。
再びチャンスがめぐって来る日をダッグアウトの片隅でひたすら待ち続けた九人の選手たち。人知れず練習を重ねてきたセカンド、実力がありながら監督に認められる事のなかったショート、ピッチャーから転向したサウスポーのキャッチャー。やがて再起する者、去りゆく者、球界に生きる男たちの爽やかな後ろ姿を描いて、様々な人生のあり様を浮き彫りにした珠玉の連作短編集。
シベリア=西ヨーロッパ・パイプライン開通式を目前に控えた1983年12月、極寒の収容所から3人の囚人が脱走した。この事件はやがて凍土帯の少数民族の暴動へと発展する。クレムリンは軍を投入し事態の収拾に全力を傾けるが、脱走犯の足取りさえ掴めない。一方、現地に派遣された民警の女性検事アンナは捜査を進めるに従い、意外な真相に近付いていく。亡命作家が描く迫真のサスペンス。
CIAは、百万人に1人という心を覗く力を持つ男女を集めてスパイに仕立てあげ、国家の重要機密にかかわる情報戦に利用している。しかし彼らは、そのあまりにも“敏感な心”のために32歳以上は生きることが出来ない、という。ふとしたことから、自分の運命に疑問を抱いたスパイたちは、巨大な組織との対決を余儀なくされる。特殊な力を持つスパイたちの苦悩を描く異色サスペンス。
ハリウッドの著名なTVプロデューサーが、取材先で事故死した。テレビに毒され、病んでしまったアメリカ文明の実態を記録するため、大陸を横断し、最終地でネットワークの陰の大物にインタビューした直後だった。撮影済みのテープをめぐって、残された妻ジャンヌの周囲は急に騒がしくなった。夫の死に疑念を抱いた彼女はその謎を解くため、夫の足跡をそっくり辿る決心をしたー。
謎を秘めたた取材のテープを手に入れようと、テレビ界の実力者たちの追撃は執拗に続く。皮肉にもTV番組で旅程が公開されることによって、身の安全を保証されながら、ジヤンヌとその同行者は最終地に近づいた。様々な利権が絡むネットワークの醜悪な実態を目にし、気づかぬうちに先入観を植えつけられ操られる大衆の姿を見ながらー。現代文明への鋭い批判を込めた問題作。