1988年発売
女子プロ・餅田翔子は、日本女子オープン予選2日目、短い髪でサングラスをかけたヤクザ風の男の視線が気になり、スコアを崩した。あの男は、半年前にゴルフのプレイ中、事故死したあの人の息子ではないのか-。3日目の夜、ホテルの部屋のドア下に便箋があり〈重大な話あり。明日の試合後、地下のバーで待つ。来ないと後悔するぞ〉。ミステリー界の重鎮が、女子プロゴルフ界の内幕をベースに、殺人事件の謎と、勝負師の孤独ときびしさとを、サスペンスタッチで描く戦慄の渾身巨編。
「住村画伯の初期の遺作発見!」。大手デパート絵画部の広田は、話題の画商シャルルを探し、パリへ。シャルルは広田に「住村の愛人だったチチと一夜を過ごせ」と誘う。チチは日本人の広田に心を許し、驚くべき秘密を明かすが、その結果は?(モンパルナスの娼婦より)-ほかに著者が特選した、手に汗握る怪奇ミステリーを7編収録。
六本木のマンションの一室にあるレッド・ウイドウ相談室。カウンセラーの赤垣美晴は、三十歳を越えたばかりの若い未亡人。彼女には警視庁の特別秘密捜査官というもうひとつの顔があり、男女の性のトラブルから生じる難事件が、次々に押し寄せる…。エロスと推理が渾然一体となった連作官能サスペンス。
徒手空拳、非道なやり口で財界の大立者にのしあがった男・押田信介。彼をとりまく様々な人間が、その命を虎視眈々と狙っている。愛人も秘書も、別荘番も友人も、そして、同居中の甥までも…!押田は周囲を圧倒して君臨し憎悪を集めていたのだ。色と欲との殺人競演会の結末は?人間の謎を深く抉る傑作長編サスペンス。
「緊急事態発生!」沖縄行き巨人機に離陸直後、エンジン火災が発生。機は、羽田に緊急着陸するとの報が管制塔に入った。が、その直後、交信が途絶え、そのまま辛うじてC滑走路に着陸した。ところが、機内の乗員、乗客が全員死亡していたのだ…!航空ミステリーの第一人者が、空の密室犯罪に挑む傑作長編。
響三郎が久々に帰国した。世界中の殺人のホシを追い、やっと得た休暇だ。だが東京も国際都市。ポルノ仕掛けのスパイ探索に乗り出していく。国際刑事警察・特別捜査官に安全はない。生命がけの闘いが続き、さすがの響も、ついに敵の手に陥る。犯人は彼を囮に原爆製造犯人の釈放を要求。いよいよ迫力を増す超アクション。
北方領土へ潜入し、スパイ容疑で捕虜になった公安調査官を奪還せよ!-自衛隊二等陸佐砦洋介の命令で、特殊部隊の面々に緊張がみなぎった。雪の国後島に出撃した部隊を待ちうけるのは…?ペレストロイカ(改革)、北方領土返還問題など、現実の政治情況を的確にふまえて描く「特殊部隊シリーズ」大好評第3弾。
才気煥発の平賀源内は、讃州(四国高松)藩におさまりきれぬ、型破りの大器。若さにまかせて、長崎、大阪、そして江戸へー。幕閣の有力者田沼意次の知遇を得てその才能は花開く。機略縦横、本格時代小説巨編。
父信虎を追放してその領国体制を無傷で引き継いだ若き信玄は、文武両道に通じたエリートであり、源頼朝のように謀略性に富み、粘り強く且つ慎重な性格で、複雑な思考の持主であった。諏訪攻めを手始めに信濃全土の征服に向かって合戦を繰り返し、ついに越後の謙信と対決することとなった。この「信玄の巻(上)」は、諏訪攻めから川中島の大激戦前夜までを書いたものである。
戦国の英雄信玄は、当初、北国経由で上洛を考えていた。謙信と四つに組んだ理由もそこにある。しかし謙信を打ち破ることが出来ず、やむをえず方針を転換、駿河を攻めることとなった。だが、そこにもまた大きな障害があった。嫡男義信との対立・北条氏との同盟関係の崩壊がそれである。信玄は、その障害を無理に乗り越えていった。それは織田信長の動向に大いなるあせりを感じていたからである。合戦に明け暮れていた信玄は、三方ケ原の戦の後に四面を敵にしたまま陣没したが、このことが勝頼に過分の重荷を背負わせる結果となった。
杉苔が美しい尼寺・月心庵で死体が発見された、との知らせで現場へ急行した赤かぶ検事は、その異様な死体を見て思わず顔をそむけた。男女の判別もつかぬほど、巨大なナメクジが全身を覆いつくしていたのだ。発見者の二人の尼僧の話では、毎年八月十五夜になると群れをなしてナメクジが現れるという。立居振舞も風貌も男っぽい庵主と惚れ惚ぼれするほど艶っぽい美人の尼僧は、この怪事件に全く動ずるところがない。怪現象と二人の尼僧の関係を想像し、頭を悩ませていた赤かぶ検事の元へ、ヤクザに脅かされ女子高生が姿を消したという知らせと、尼寺の死体が、女子高生を脅迫し、売春をさせていたヤクザだったとの知らせが届いた。そして日をおかずして、またもや月心庵でナメクジに覆われた死体が発見された。死者は失跡していた女子高生で、しかも彼女は妊娠していた。さらに三人目の死体が月心庵の庭で発見され、事態は意外な展開を見せ始めた…。
ミス・マープルの甥っ子、レスター警部は、季節外れの休暇をとって、南フランスにある山間の田舎町にやってきた。ところが到着早々、買いたてのフェラーリが、盗まれたうえ運転席に死体をのせて崖下で大破しているのが発見される。状況に不審を抱いたレスターは、同じホテルに泊りあわせた伯母を髣髴させるイギリス婦人とひそかに捜査を開始するが、追うほどに事件の根は深く、悲痛なものであることが明らかになっていった!ゴンクール賞作家がグロテスクにしてアラベスクな怪事件の顛末を軽妙かつ重厚に綴るちょっとブラックな傑作ミステリ。