1988年発売
推理作家・牧薩次は、ファンから贈られた“新幹線2階建て寝台”の切符で旅へ。が、車中で奇妙な事件が続発。その謎のカギは、ファンから預っていた“小説”に暗示されていた!?そこで牧の婚約者でスーパー・ウーマンの可能キリコも登場して…。著者お得意の“創案列車”と多層構造の異色推理長編。
幼いふたりの娘を残して母はクリスマスの夜とつぜんと失跡した。それから30年…。埼玉県隈ケ谷警察署に殺人現場目撃の匿名の手紙が届いた。それを裏づけるように金融業の男の他殺体がみつかり、男の貸し金庫からは一枚の暗号紙片が。事件は謎はらむ展開に!父娘合作で話題をよぶ感動の本格推理長編。
元M新聞サイゴン特派員の矢沢建彦のもとへ、シエーというベトナム人から1通の手紙が届いた。ベトナム戦争当時、戦闘中に死んだはずの友人でジャーナリストの叶吾郎が生きているというのだ。叶の行方を探すため、矢沢は急遽、バンコックへ向かった。ベトナムに生き、愛し、闘った男たちへのレクイエム。
大恐慌大不況はやはり避けられない!米株式とドルの暴落を予言し、そのメカニズムを息詰るドラマの中で見事に解明した「絵のない」劇画世界資本主義。奇想天外な設定とスピーディーなストーリー展開。-難解な国際金融を主人公にレーガノミックスの暗部を抉る、ビジネスマン必読の本格経済サスペンスノベル。
ロープスピナー=首吊り用の縄をなう人。それは西側資本主義を破壊して永久に葬り去る一大陰謀のコードネームだった。本計画の首謀者であるロシア人天才経済学者メンシコフが実行に際して下した手は4つ。資本家に「選択の自由」を要求させ、銀行を「活性化」し、財テクをはやらせ、経済面を「面白く」し…。
好漢が手を結べば天地をゆるがすー。茫々たる大湖に立つ、難攻不落の寨、梁山泊は、いまや一国の軍勢に比敵した。義のため、威風堂々、八千余の軍勢は、寨を降り、湖を渡った。迎えるは精鋭1万2000の官軍。幡なびき軍鼓鳴る!猛獣躍り、風呼び雨おこす妖術とびかう!阿修羅のごとく激闘続く、全4巻完結篇。
花は揺れていた。咲いた花が雨に打たれる。雨よ、いつまで降り続くのか。矢沢の耳には、昔の恋人で反戦歌手だったドー・チー・ナウの悲哀に満ちた歌声が今も響く。ナウの悲惨な死には隠された大きな謎があった。ベトナムに潜入し、叶を探すうちに矢沢はナウの死の謎をも図らずも解くことになったのだった。
秀頼の誕生は新たな権力争いの種となり、関白秀次の自刃とその妻妾三十余人の斬殺という悲劇を招いた。一方、伏見大地震の混乱の中で迎えた明の講和使節が、実は無礼きわまる冊封使だとわかると、秀吉は烈火のごとく怒り朝鮮再征の令を下す。そして、再征の結着もみないまま一代の太陽児は波乱の生涯を閉じる。
太閤秀吉の死後には難題が山積していた。朝鮮からの撤兵用船舶の不足、日ましにつのる武断派武将と文治派吏将の対立、そして秀頼の母公淀君の頑迷と我執…。秀吉に後事を托された家康の使命は重い。と、そこに降ってわく“家康に異心あり!”の噂。はたして噂を流す石田三成の敵意はなにゆえか?
石田三成の家康に対する敵意はますますつのった。だが皮肉にも彼は、秀吉子飼いの七将の襲撃を避けるため家康の庇護を受ける羽目に。いったん三成を近江へ帰した家康は、上杉討伐を名目に出兵を決行。と、その留守を狙って三成挙兵、家康はただちに軍を西へ返す。関ケ原前夜、虚々実々の駆け引きが続く!
慶長5年9月15日、運命の関ケ原で戦いの火ぶたは切られた。東軍7万5千対西軍10万8千。世にいう天下分け目の合戦である。しかし、歴史のめざす方向は、すでにその前から定まっていたのかもしれない。戦は東軍のあっけない大勝利に終り、三成は京の六条河原の露と消えた。新時代の幕明けである…。
美しい秘書との結婚を夢みる商事会社社長は、逆上した妻を誤って殺してしまった。友人の商業美術家と自分の妹との結婚に反対する売れない絵かきは、泥酔している。その夜、神宮外苑の十字路で二つの運命が交錯した!売れない絵かきと瓜ふたつの私立探偵・南が、運命の糸をあやつり始める!
太平洋戦争前夜、日米開戦回避の特命を帯びて来栖三郎はワシントンに飛んだ。だが、ルーズヴエルト大統領、ハル国務長官を相手に交渉は難航、だましうちのように、真珠湾奇襲攻撃が敢行される。三郎の努力と願いもむなしく、若者たちが殺し合わねばならない戦争へと時代は突入していく。ドキュメンタリー・タッチで描く現代史の悲劇、全3巻。
父三郎と母アリス。そして子供たち、安奈、良、恵理。日米戦争は、幸福な家族に過酷な運命と選択を課した。明朗闊達、スポーツマンでダンス名人の良。誰よりも強く平和を願った三郎の息子良が陸軍の戦闘機乗りになって、母の故国の飛行機を操縦する若者たちと闘われなければならない!大きな戦争が、男も女も、人も国も、激流に巻き込んで突き進む。
母の故国アメリカの爆撃機B29を体当りで落し、自らは落下傘で生還しながら、その相貌ゆえに敵国人と間違われ竹槍で殺された良。平和はかえってきた。だが、愛も、恋も、命までも、奪われたものは戻ってこない。巨大な力が個人の意志を押し流し翻弄した暗い戦争の時代、ひたむきに生きた男たち女たちの非劇を描く。感動の歴史長編小説、全3巻。
美しい港町、アカシヤ香る大連。そこに生れ育った彼は敗戦とともに故郷を喪失した。心に巣喰う癒し難い欠落感、平穏な日々の只中で埋めることのできない空洞。青春、憂鬱、愛、死。果てない郷愁を篭めて、青春の大連を清冽に描く芥川賞受賞の表題作及び、6編を収録。
そこは悪夢の島か、はたまたユートピアか。スミヤキ党員Qが工作のために潜り込んだ孤島の感化院の実態は、じつに常軌を逸したものだった。グロテスクな院長やドクトルに抗して、Qのドン・キホーテ的奮闘が始まる。乾いた風刺と奔放な比喩を駆使して、非日常の世界から日常の非条理を照射する。怖ろしくも愉しい長編小説。
妻の情事をきっかけに、家庭の崩壊は始まった。たて直しを計る健気な夫は、なす術もなく悲喜劇を繰り返し次第に自己を喪失する。無気味に音もなく解けて行く家庭の絆。現実に潜む危うさの暗示。時代を超え現代に迫る問題作、「抱擁家族」とは何か。第1回谷崎賞受賞。
雪の日にひとりのこどもを殺した!…少女時代の悪夢が、姉妹に遠い影を投げかける。血の絆に惹かれるように、妹の夫と関係を結ぶ姉牧。抜き差しならない深みに入り込んでいく二人に、気づこうとしない妹百合。性の地獄にさらわれながら、ついに女たちは生の明るみへと突き抜けていく。長編700枚。