1988年発売
取り立てて才能があるとは思えない一人の青年の思いつきで始まったペーパー商法-悪の企画は当りに当った。マル秘特訓を受けたセールスマンは、野獣のごとく日本列島を暴走し、老人や主婦に襲いかかった。年商1千2百億円-。一流上場企業も顔負けの恐るべき集金力は、果して31歳の青年虚業家の辣腕によるものか、偶然か-。出生すら謎に包まれている青年の背後に漂よう無気味な影は何か?老女の心をもて弄ぶセールスマン、愛欲に狂うセールスウーマン-巨大詐欺ビジネスの迷路に響く殺意の狂詩曲…。
首席家老・桑山又左衛門の許に、ある日、果し状が届く。恥知る気あらば決闘に応じよ、と。相手は野瀬市之丞。かつては同じ部屋住み・軽輩の子、同門・片貝道場の友であるが、市之丞は今なお娶らず禄喰まぬ“厄介叔父”と呼ばれる五十男。…歳月とは何か、運とは非運とは?運命の非情な饗宴を隅なく描く、武家小説の傑作!
かつての軽輩の子は、家老職を占めるに至る。栄耀きわめたとはいえ、執政とは孤独な泥の道である。策謀と収賄。権力に近づいて腐り果てるのがおぬしののぞみか、市之丞は面罵する。又左衛門の心は溟い、執政などになるから友と斬り合わねばならぬのだ。逼迫財政打開として荒地開墾の鍬はなお北へのびている。
痩せてゆく。食べても食べても痩せてゆく。老婆を轢き殺した男とその裁判の担当判事と警察署長の3人に、ジプシーの呪いがつきまとう。痩せるばかりではない、鱗、吹出物、膿…じわじわと人体を襲い蝕む想像を絶した恐怖を、モダン・ホラーの第一人者スティーヴン・キングが別名義のもとに、驚嘆すべき筆力で描きつくした傑作。
アブー・ヌワースは8世紀から9世紀にかけてアッバス朝イスラム帝国の最盛期に活躍し、酒の詩人として知られる。現世の最高の快楽としてこよなく酒を愛した詩人は酒のすべてを詩によみこんだ。その詩は平明で機知と諧謔に富み今もアラブ世界で広く愛誦されている。残された1000余の詩篇から飲酒詩を中心に62篇を選訳。
伊東卓也は19歳。大学受験に二度失敗してガソリンスタンドで働いている。ある日、祖父の平輔から海外旅行に出かけるので、運転手として同行するように言われる。平輔は、50年も会っていない弟の錬兵をチリのサンチャゴに訪ね、そのあと卓也の両親のいるアトランタをめざそうというのだ。明治生まれの祖父と19歳の孫の旅が始まる。出会いと惜別、老境と夢。人と人との触れ合いを通して、人生のすばらしさを語る長編小説。
ロサンジェルス近郊の小都市ハンティントン・ビーチで酒屋が襲撃され、警官は犯人を射殺した。しかし襲撃犯は銃を持っておらず、警察は窮地に立たされた。だがこれはある巨大な陰謀の発端にすぎなかった。その陰謀の名は〈ベイルファイア〉。たった1人のテロリストが全市の機能を麻痺させ、壊滅させようというのだ。そして、警官が次々と惨殺される。その狙いは?謀略小説と警察小説をみごとに融合した新鋭の第1級ベストセラー・サスペンス!
ニューヨークで開かれている米ソ軍縮会談の席から、ソ連の科学者ラビノビッチが亡命を図った。「軍縮会談をふっとばす重大な情報がある」ラビノビッチはこう言ったが、その中身を明かす前に、KGSに彼の身柄を奪還された。重大な情報とは何か?米国の影の巨大情報機関DIAのロスとライルは、ことの真相を探るべく調査に乗りだした。だが、KGBは彼らの動きをしつように妨害。ついには2人の生命を狙うべく、殺し屋をさしむけたのだった…。
米国の巨大情報機関DISのエージェント、ロスとライルはKGBに復讐を誓った。謎を解く鍵はアフガニスタンにある。そこで行われる〈SCIMITAR〉プロジェクトがポイントだーそう確信したロスとライルは、アフガニスタンへ潜入。ソ連の謀略の証拠を掴むべく、決死の探査行が始まった。だが、ここにもKGBの手はのびていて、危機が次々と二人に襲いかかった…。米ソ軍縮会談の驚くべき裏面を雄大なスケールで活写する、本格軍事情報小説!
ロンドン近郊ヴァーカスター市の大聖堂から16世紀の誤植聖書「ラティマー・マーシー」が盗まれた。折しも、当地で催されるアート・フェスティヴァルのためにやって来た劇作家マルトラヴァースは自分の推理力を試す絶好の機会とみて調査に乗り出した。ところがその矢先、彼の演劇仲間で当地を訪れていた女優ダイアナ・ポーターが姿を消したのだ。しばらく後、彼女の手首とおぼしきものが発見された…。1986年度CWA最優秀新人賞受賞作品!
北アルプス・西穂高の雪渓で警官の筒井が転落死した。その前1月にも、筒井の先輩で、警視庁きっての山男・大須賀が西穂稜線で転落死していた。警視庁捜査一課刑事の白鳥完市は、一連の二人の死が単なる事故死ではないと直感し、遭難現場の西穂高へ急行した。そこで、白鳥は、死んだ二人の元同僚で白バイ隊の月村修に会う。彼を強引に捜査に加えた。ケンカをしながら、必死で捜査する白鳥らの前に、ぼんやりと一人の男が浮かんできた。本星だ!だが、その男には、鉄壁のアリバイがあった!異色警官コンビの苦闘がはじまる…。冬山完全犯罪トリックの妙!山の魅力を満喫させる手練の筆緻!山岳推理の旗手が書き下ろした会心作!
東山道、江戸、棚倉、二本松…。戊辰戦争転戦のさきざきから家郷へ宛てた安岡覚之助の夥しい書簡を軸に流離の物語は展開する。幕末維新の動乱の時代と、ただならぬ運命を生きた人々の相貌を鮮かに映し出し、歴史とは何かを鋭く問う傑作長編。
露伴の文名を一挙に高めた「風流仏」。そこに定着された入神の技芸讃仰の高い浪漫性は、「一口剣」をへて屈指の代表作「五重塔」に結実し、また変幻自在の小説手法は、山中仙境での妖艶な美女との出会いをめぐる怪異譚「対髑髏」へと展開する。
事件はすべて寝台特急「さくら」で発生した。まずダイイングメッセージを残して男が怪死。ついで変事を通報した女が射殺された車内から消失。そして第3の殺人。なぜ「さくら」なのか?犯人は3度とも目撃された美貌の女性なのか!?鉄壁のアリバイが崩れたとき、殺人特急は過去に向って逆走しはじめる!
殺人事件発生!現場はこともあろうに、県警記者クラブの中。被害者は、大がかりな県庁汚職事件を追っていた敏腕記者“ゴロちゃん”こと根来だった。彼のコーヒーに青酸カリを入れることができたのは誰か。汚職事件との関連は?東朝新聞・三四郎記者のゆくてにやがて第2の殺人が発生、事件は謎を深める。