1988年発売
海水浴客でごった返す南仏の避暑地カシス。ヌーディスト村やカジノで賑うこの小さな街で、3件の連続殺人事件が発生した。照りつける太陽の下、捜査の指揮をとるのは28歳の女性警視ミュリエル。彼女に思いをよせる医学生ピエール、被害者の共通の愛人だったソランジュらの協力で、事件は解決するかと思われたが…太陽と海の香りに満ちた本格ミステリー。フランス推理小説大賞受賞作。
都心のビル屋上から発見された男の他殺死体。その日偶然聞いた奇妙な電話、誘いに乗って出かけたラブ・ホテルには女の絞殺死体…。大手建設会社専務味岡に仕掛けた罠の奥で北叟笑む人は誰れ?土木建設業界の談合、フィクサー政界との癒着。
弁護士のサイモンは、友人の家で催されたパーティーの帰り、1人の女性ロウズを送らなければならなくなる。その道々、ロウズは自分の現状をサイモンに訴え、助言を求める。ロウズは離婚して3人の子供とつましく暮していたが、最近、前夫からロウズが子供の養育に不向きだという理由で、子供を自分の手元で育てる訴えが裁判所に提出されていた。お嬢さん育ちのロウズは、前夫の真意がつかめず、途方にくれていた。やがてサイモンとロウズの間に連帯感に似たほのかな愛が芽生えるが…。古風ともみえる伝統的な手法で描く女の人生。
酒場での乱闘、夫婦喧嘩の挙句の発砲騒ぎ、窈盗…、テキサス州ブラックリン郡の治安をあずかるダン・ローズ保安官がふだん扱う事件といえば、この程度のものだ。だが、今度の事件はいささか様子が違っていた。美しい若妻が、夜勤の夫の不在中に何者かに殴り殺されたのだ。小さい町のこと、ローズは知恵遅れの男が被害者の血を衣服に付けてうろついているのをすぐに発見し、容疑者として拘留した。ところが、事件は思わぬ展開を見せた。保安官選挙を控え、部下と娘の恋の成行を案じながら、彼は田舎町を揺がす事件の解明に奔走する。が、その先に哀しい終幕が待っていようとは、彼には知る由もなかった。テキサスの大地が生んだ人情家の新ヒーロー、ダン・ローズ登場。アンソニー賞新人賞受賞作。
カルタゴの人身御供の儀式、クレオパトラの鼻、キリストの処刑、ニュートンのリンゴ…。紀元前3000年までの過去のいかなる時代も場所も、クロノスコープを使えば思いのままに見ることができる。その使用許可がもらえなかった歴史学者は、危険な賭に挑んだが!あらゆる学問が政府の統制下におかれた未来を描く代表作「死せる過去」、脳に刺激を与えて夢を見させ、視聴覚もちろん、味覚や触覚までも疑似体験させられる録夢装置をめぐる大騒動「夢を売ります」など、過去、現在、未来のさまざまな地球を舞台に、斬新なアイディアと巧みな語り口で読者を魅了する17篇を収録。
『インテグラル・ツリー』の冒険から14年の歳月が流れた。大戦乱を生きのびたクィン一族は、スモーク・リングの自由落下状態の大気中を浮遊する“市民の樹”で平和な生活を送っている。その彼らのもとに、意外な訪問者が現われた。-無人と思われていたラグランジュ・ポイントの〈クランプ〉の住民が、遭難して助けを求めてきたのだ。それを契機に“市民の樹”の代表が進んだ技術を吸収すべく〈クランプ〉への遠征を企てるが、その前途にはあまたの自然の脅威と恐るべき敵が立ちはだかっていた。現代ハードSFの巨匠が壮大な舞台設定でスリリングに描くファン待望の続篇。
そもそものきっかけは、ソニアがグライムズへのおみやげとして買ってきたパイプだった。地球のベイカー・ストリートの骨董屋で見つけた、シャーロック・ホームズが使っていた正真正銘のパイプだというのである。グライムズはもちろん一笑に付した。だが、クラヴィンスキー提督から〈キルソルヴィングの惑星〉の再調査を命じられたグライムズが、お気にいりの〈ファラウェイ・クエスト〉を駆ってキルソルヴィングに着陸したとき、そこで待ち受けていたのは…?辺境星区に多発する異常現象の解明のため東奔西走するグライムズ准将の活躍を描くシリーズ最新刊。
渓流釣りを楽しんでいる私の前を、若い女の射殺死体が流れていった。それを引き上げようとして溺れかけ、私は死体にまたがり、やっとの思いで激流を下りきった。こうして命を助けてもらったからには、恩返しをしなければならない。私は、彼女を殺した犯人を捜しだす決心をした。やがて、彼女は高名なシェイクスピア学者の娘と判明した。どうやら裏には、最近発見されたシェイクスピアの未発表戯曲がからんでいるらしい…現代のサム・スペードをめざす心優しき探偵ジョン・デンスンがアウトドアに展開する華麗なアクション!シリーズ第二弾。
勤め先をくびになったテロリズム専門家ブース・ストーリングズのもとに、まるで待っていたかのように大仕事がとびこんできた。フィリピンの新人民軍(NPA)の指導者アレハンドロ・エスピリトを500万ドルで買収して香港へ亡命させろというのだ。依頼者はフィリピンに投資している謎の資本家グループ。エスピリトさえいなくなればNPAは骨抜きになり、アキノ政権は安定して、自分たちの利益も上がるというわけだった。何やら裏のありそうな仕事を手伝うために、海千山千のプロフェッショナルたちが極東に集結してきた。500万ドルの取引きをめぐって、虚々実々のゲームが開始された。スピーディでしたたかで、粋、ロス・トーマスの『女刑事の死』に続く待望の新作。
ローラが初めて声を聞くその男は言った。「ぼくは癌でもうじき死ぬんだけど、あなたが毎朝ほほ笑みかけてくれるのを見てとても楽しかった」娘を保育園に送っていく途中、いつも近所のアパート・ビルの日よけの下に坐っている男、デーヴィッドの突然の言葉。みちたりた結婚生活を送り、女性誌の投稿原稿のリーディングの仕事をしているローラの平穏な日常は、この日を境に大きく変わった。結婚問題カウンセラーをしているデーヴィッドにも妻と息子がいたが、死を目前にして、彼は毎朝会う生気にみちたローラに深い恋心を抱いていた。同情に始まったローラの気持ちも、やがてどうしようもなく愛へと傾いていく。そしてその結びつきは、それぞれの家族との間にさまざまな波紋を呼ぶ-。ニューヨークの秋から夏までを舞台に、生と死のはざまを漂う愛の行方を描く、哀しく、温かく、エレガントな長篇。
800万の夢と哀しみ、愛と憎悪、そしてささやかな希望のミックス・カクテル。Sex&Drug&Violenceが交錯し、あらゆるものが揃う街、ニューヨーク。殺意がスウィングし、野望と絶望がブルースを奏でる。チンピラや娼婦、殺し屋、男娼、ポン引きたち-。大いなる夢とせつない優しさ…心にしみる9つの人生。