1989年11月発売
剣と魔法の共存する不思議な世界は、天空からの使者、フィンラジールとバブモーダによって守られていた。しかし、この美しく平和に満ち溢れた世界を我がものにしようとしたバブモータは、強大な魔力によって世界征服を始めたのである。事の重大さを知ったネルウィン村の魔法使いハイアルドウィンは、村の修業者を呼び、戦士を選んで討伐に向かわせることにした。そして、勇者に選ばれたのが“ウィロー”だ。剣、魔法ともに未熟ではあるが、正義と家族を愛する心は誰にも負けないウィロー。バブモータを倒すため、果てしない冒険と修業の旅に、今、ウィローは出発する…。
あたし、野須麗香。特技、おまじない。あたしのおまじないは、特別なの。なんたって、あたしのママは、占い界の第一人者、あのノストラ・レディなんですもの。成功率はほぼ100パーセント!ところが、とんでもないコが転校して来たの。阿久野真理子、通称マリィ。あたし以上の占い能力を持っていて、その上、超美人。しかも、その子、どういうワケか、あたしにライバル意識ギンギン!なんと、あたしの片想いの彼、飛鳥クンをかけての占い勝負を申しこんできたの!いったい、どうなってんの。
有能な警官だつたカーヴァーは、強盗に膝を撃たれて杖に頼る身となり、私立探偵に転身した。その彼のもとをエドウィナという美貌の女が訪れた。失踪した恋人ウィリスを探してほしいという。状況証拠はウイリスが海に身投げしたことを示唆していたが、エドウィナは信じない。後女に心惹かれたカーヴァーは捜査に着手したー行手に根深い謎と殺意が渦巻いているとも知らず。フロリダを舞台に感傷的な筆致で描く傑作ハードボイルド。
英国の王女ふたりを誘拐せよーナチスのスパイ、アイルダースは密命を帯びてロンドンに潜入した。英国の戦意を喪失させるべく立案された作戦だった。が、やがて状況の急変により、作戦中止の決定が下る。アイルダースはしかし服従しなかった。その胸中には新たな恐るべき計画が芽生えていた…。一方、彼の暴走を危惧したドイツは敢えて敵国イギリスに協力、両国共同の追跡網がひそかに張りめぐらされた!迫真の戦争サスペンス。
スーザンは見知らぬ病院のベッドで目覚めた。医者が言うには、彼女は休暇中に交通事故に遇い、このオレゴン州の田舎の病院に運びこまれ、三週間も意識を失っていたのだというー。しかし、彼女にはそんな記憶はなかった。と同時にこれまで自分がたずさわっていた仕事の内容、同僚の名前が思い出せない。なぜか彼女には、そこだけ記憶がないのだ。そして、彼女は病院の中で信じられないものを見た。大学時代にボーイフレンドを殺した男たちが、当時の若い姿のまま患者として入院しているのだ。その上死んだはずの男たちまでがスーザンの目の前に現れた。これは狂気か?幻覚か?その後もぞくぞくと怪異現象は起こる。そしてスーザンが最後に発見したのは信じられないような事実だった。人気沸騰の鬼才クーンツが放つ、異色の大型ロマンス&サスペンス・ホラー。
モンゴル映画「マンドハイ」の原作。15世紀モンゴルの伝説的な女性を題材にした歴史小説。元朝崩壊後、権力争いに明け暮れていた草原に平和をもたらしたのは一人の女性だった。チンギス・ハーンと並んで語り継がれるマンドハイ妃の愛と哀しみを描く。
初めての結婚記念日。夫からの電話を待つ奥村蓉子に、伊豆・石廊崎で夫の変死の知らせが入った。自筆の遺書から、同僚女性殺害を苦に、覚悟の自殺と断定された。夫の本当の死因を知ろうと決意した蓉子は、伊豆-阿蘇-函館と真相追求の旅を続けるが、その行く手で起きる第二、第三の殺人事件-。蓉子はこの旅で、協力を申し出た、紀行作家子安と夫の上司光岡に対し、次第に容疑が深まっていくのを感じていたが…。一方、当初から自殺説を疑う伊夫伎警部は、11分の壁に守られた犯人に敢然と対決、周到なトリックに挑む。エイコー・ノベルズ初登場、池田雄一書下ろし会心作。
私立探偵・萩原の同業者・相川が殺られた。三日前、浮気調査というくそったれな依頼を回してやった矢先のことだった。相川のヤサの荒されようは明らかにプロの仕事。何故だ?女を別の男に奪われて泣つきいてきたチンピラの依頼に、何故プロが絡むんだ!唯一残されたメモとフィルムから、事件の背後に“組織”の匂いを嗅ぎつけた萩原は、見えざる敵を追いはじめた。だが萩原を待ち受けていたのは…。再び始まる地獄の戦闘への予感に奮い立つ、ベトナム帰りの私立探偵・萩原大吾の活躍を描くシリーズ第二弾。
パリ、ルーブル美術館で白昼、日本人高級コールガールが殺害された。凶器は東側諜報機関が暗殺に用いる猛毒リシンを仕込んだ毒矢銃だった。被害者の国籍と凶器の性質上、パリ警視庁はICPOの葉山警部に捜査協力を要請した。舞台はパリからウィーン、ベオグラードへ。やがて葉山の手であぶり出されてくる東側諸国と日本マスコミ界要人との陰謀…。気鋭が活写する長篇国際謀略小説。
実の父親を求めて春をひさぐ少女。家族を探すために密入国した中国人。アル中の元プロレスラー。薬に溺れた自暴自棄の少年。横浜でシップチャンドラー(外国船に食料、雑貨を納入しマージンを取る)を営む久須見のもとに、なぜかトラブルと心の傷を背負いこんだ人間が集り、そのたびに久須見は事件に巻き込まれていく…。港街を舞台に、傷つきながら生きていく人間たちを描いた連作ハードボイルド。
性交の余韻にまどろむ女、その女を突如襲う緊縛の縄。ほんのお遊びのつもりでボーイフレンドを交換し一夜のアバンチュールを愉しむはずだったのに…。豹変した男は、逆エビに縛られてむきだしになった女の秘裂から溢れ出る蜜液を獣のようにピチャピチャと執拗に舐めつづける…。
物語はある一族の一枚の写真から始まる。中央には、ドーン家の頂点をなす女ソフカ。そして彼女をとりまく4人の息子と娘たち。放蕩を尽くした夫はすでに亡い。ソフカは、このブルジョワ家庭を律する厳しい意志の女として生きてきた。だが、そのからだの奥底には、もう一人の別の女がひそんでいる-。倦怠。反目。情熱。孤独。…ドーン一族の男と女が、それぞれにたどる人生。4枚の結婚式の写真が、抗いがたい血の宿命を絵解きしていく。
いま、注目を集めるビルマ。その厳しい社会状況の中で、たくましく“現実”を描出する女性作家たち-。ビルマ最高の文学賞《国民文学賞》を四度受賞のモゥモゥ(インヤー)始めマ・サンダーなどベテラン作家から新進まで12人が、庶民の多彩な夢と人生を活写して“知られざる国”ビルマを浮き彫りにする1974年〜85年の12作品。明日への希望をこめて綴ったビルマ《ミャンマー》の熱きアンソロジー。
死と非愛の彼岸であるシュイサイドの夢の部屋ごもりから、漱石へ、南島へ、鮎川信夫へと震える触手を生の此岸へ架け渡す。時代の鬱屈した結節点を大正期や幕末に生きた群像へ照らして、再生の姿を変奏した短篇小説集。
虚言癖のある男の妻に恋した主人公の千々に乱れる心の動きを克明に追った表題作「嘘つき」ほか、「五十男の日記」「モード・イーヴリン」の中篇3作を収録。登場人物の内面に〈視点〉を置くという画期的な手法で20世紀文学の扉を開いた、ヘンリー・ジェイムズの傑作心理小説。