1989年11月発売
母親のあえぎ声を聞きながら育った亜由子は、高校2年の17歳。そろそろ処女と決別する時期だが、ボーイフレンドも童貞で、あと一歩進むことができない。そんな時、別れていた実の父と同居することになり、次第に彼女は父に魅かれていく。そして、遂に父の腕に抱かれた時、彼女は歓びの声を-。
白昼の新宿東口スタジオ・アルタで、美少女アイドル伊藤久美子が多くのファンの頭上でバラバラになった。しかし、目撃者はいても、死体の一部すら発見できない。多くの目撃者たちは夢を見ていたのか!?だが、美少女たちは衆人環視の中で次々に惨殺され、姿を消していった。一体、美少女たちはどこへ?時を置かずに渋谷に出現した《玄夢教団》のドーム。そのドームでのみ見ることができるという、夢サーカス。姿を消したはずの美少女たちが舞う、世にも不思議な、華麗で哀しいサーカスの秘密とは?
三年まえ友人平岡への義侠心から自らの想いをたち切った代助は、いま愛するひと三千代をわが胸にとりもどそうと決意する。だが、「自然」にはかなっても人の掟にそむくこの愛に生きることは、二人が社会から追い放たれることを意味した。
アンナは兄オブロンスキイの浮気の跡始末に、ペテルブルグからモスクワへと旅立った。そして駅頭でのウロンスキイとの運命的な出会い。彼はアンナの美しさに魅かれ、これまでの放埓で散漫だった力が、ある幸福な目的の一点に向けられるのを感じる。
激しい恋のとりことなったアンナは、夫や子どもを捨て、ウロンスキイとともに外国へと旅だった。帰国後、社交界の花形だったアンナに対する周囲の眼は冷たい。一目愛児に会いたいという願いも退けられ、ひそかに抱くひとときがアンナに与えられるのみだった。
アンナは正式な離婚を望む。が夫は拒否。ウロンスキイはアンナを愛したが、社交界で孤立してゆく彼女に次第に幻滅を感じる。絶望したアンナはついにホームから身を投げる、「これで誰からも、自分自身からものがれられるのだ」とつぶやきつつ。
サンフランシスコのとある病院で、キルシーは今まさにパイを投げつけようとしていた。といっても、これは笑い療法という治療法のひとつで、コメディアンのキルシーは患者を笑わせるのが仕事なのだ。と、相棒に命中するはずのパイが、突然ドアを開けて入ってきた男の顔面に…。慌てて謝るキルシーと、クリームをぬぐう男の目が合った。天才物理学者とキュートなコメディ・ガール、2人の胸の鼓動は高鳴り出した。
差出人不明の手紙に呼び出され、好奇心からハイドパークへ出向いたヘルストン伯爵。そこへ、1頭の馬が猛スピートで駆けてきたかと思うと、目の前で、緑色の乗馬服の女が馬から落ちた。驚いて駆け寄る伯爵に、女はレディ・チェビントンの娘カリスタだと名乗り、チェビントン館からの招待を断ってくれと思いもかけない言葉を口にする。「うちにいらしたら、無理やりわたしと結婚させられてしまうからよ」。
美大を卒業したばかりの葉子は、憧れの葛山デザイン研究所に入所する。尊敬する鬼才、葛山の下で精一杯、勉強したかったからだ。が、不可解な葛山の言動から、彼の作品のオリジナリティに疑惑をもつ。真実を知りたいという熱い思いにかられ、葛山の周辺を次々に追及する葉子の前にあらわれた意外な真相とはー。常に斬新でなければならない一流デザイナーの苦悩を、華やかな業界を背景に描いた傑作サスペンスロマン。
女子大生亜由美の親友久恵が結婚を目前にして自殺した。亜由美と最後に会った時、相手が離婚することが前提なのだ、と漏らしていた久恵。もう少し詳しく訊いておけば、相手が判ったかもしれない。亜由美は自分のドジさ加減にあきれ、ヤケ酒を飲んで大暴れ、そして留置場行き…。留置場帰りの亜由美は殿永刑事とバッタリ会い、久恵とある殺人事件との関係を聞かされる。さっそく事件解明に乗り出す亜由美と愛犬ドン・ファン!迷コンビが大活躍。人気“花嫁”シリーズ第3弾登場。
博之は北から来る何かによって殺される……恐山のイタコである祖母サキの予言通り、東京のマンションで変死体で発見された。真相究明の依頼を受けた浅見光彦は呼び寄せられるように北への旅に出る。
生れる仔馬が牡馬でありますように。風の申し子のように速く、嵐みたいに烈しく、名馬の天命をたずさえて生れますように…。若者の祈りに応えて、北海道の小さな牧場に、1頭のサラブレッドが誕生した。オラシオン(祈り)と名づけられた仔馬は、緑と光の原野のなかで育ち、順調に競走馬への道を歩みはじめるが、それと共に、登場人物ひとりひとりの宿命的な劇が、幕を開けたー。吉川英治文学賞受賞。