1989年発売
寒冷や酷暑、真空、低重力、容赦なくふりそそぐ宇宙線…。苛酷きわまりない大宇宙に生きるため、人類はおのれの肉体そのものを改造しはじめた。ある者は遺伝子工学を駆使して肉体そのものを改変し、ある者は肉体とハイテクの融合に未来を見出した。やがてそれが〈工作者〉〈機械主義者〉という二大勢力となり、他の党派をもまきこむ抗争をくりひろげるが、遥かに進歩した異星人〈投資者〉も、太陽系への進出を画策していた…。サイバーパンク派の旗手の未来史SFを日本で独自に結集した、ファン待望の傑作短篇集登場。
「ロボットは人を傷つけてはならないし不作為によって、人を傷つける結果を招来してはならない」-この傷害禁止条項のため、人を傷つけてしまう可能性の高い営業用ロボットの実用化は成功しなかった。営業行為には、得あれば損あり笑う者もいれば泣く者もいる。つまり、人を傷つけてしまうことが多々あるというわけだ。ところが、実現するはずのない営業用ロボットを、ライバル会社が売り出すという。おまけにお得意先で遭遇したそのロボットは、なかなか手強い営業能力を発揮した…アシモフのロボット三原則に挑む問題作を含む傑作短篇集。
ある日、突如、世界中の空で展開され始めた壮大なドラマ。天地創造に始まり、生物の誕生、そして人類の登場とその歴史が走馬灯のようにくりひろげられていったが…栗本薫「走馬灯」、宇宙の巨悪と闘う前代未聞の怪ヒーロー・ミイラ男の大活躍、梶尾真治の「ヤミナベ・ポリスのミイラ男」、流刑惑星で闘うことを義務づけられた囚人たちの中へ取材に入ったレポーターを待ち受けていた過酷な運命を描く神林長平「射性」、喪われた星の文明の謎を解く新鋭の力作中篇、飛浩隆の「象られた力」、他に鏡明、草上仁、東野司、中井紀夫、柾悟郎の作品を収める。
イギリスの地方新聞に勤めるフェンは、ある晩、少女が教会の墓地に入って行くのを目撃する。不審に思ったが彼が後を追っうと、少女は大きな樫の木の下へ行き、一言つぶやいて意識を失った。だが、その少女アリスは実は聾唖者だったのだ。翌日の新聞で報じられたこの事件は大きな反響を呼び、奇跡を見ようと人々が押し寄せた。彼らの目の前でアリスは不治の病人を癒し、自分は聖母マリアの幻影を見たと告げる。果たして聖母が彼女の体に降臨し、この奇跡を起こしたのか?
少女アリスの噂を聞きつけて、不治の病に脳む人々が続々と詰めかけた。宗教界も、この地を聖地とすべく動きだし、平和な教会は、一転混乱の渦中に。その騒ぎの中、アリスの周囲の人間が次々と怪死をとげ、アリスの身にも奇怪な出来事が起き始める。彼女の体に宿ったのは、聖母の霊なのか?それとも…。事件を追うフェンは、やがて怖るべき事実を知る!ベストセラー作家が、可憐な少女の身に起きた奇跡を軸に、そこに群がる人間たちの欲と野望を描くホラー大作。
別れた妻の突然の訪問に、ソールター警部は困惑した。2カ月前に知り合いの女性が殺された事件の捜査の進捗状況が知りたいというのだ。殺されたのはナンシー・コーウェル。レイプされた可能性もあるらしい。半年前から夫と別居し、交際欄に広告を出したり、シングルズ・バーへ行ったりしていた。では、彼女のそうしたライフ・スタイルが今度の事件を招いたのか。上司からも再捜査を命じられたソールターは、そこに的をしぼってみたが…。都会に暮らす寂しい女の死の真相を、クリスマスを迎えるトロントを舞台にしっとりと描くシリーズ第4作。
話さずにいられないのよ、だれかにー母を亡くして以来、地方検事補ドニーズにとってマデリンは母親のような存在だった。その彼女の切実な声になぜ耳を傾けてあげなかったのか。子供のできなかったマデリン。事業に行きづまり、妻の財産にまで手を付けようとする夫。夫婦の絆が切れようとしているのか…自宅の寝室で、マデリンが胸を撃たれて殺されているのが見つかったのは、そんなときだった。そして、愛人のいる夫が容疑者として浮かんできたのだ…古いものと新しいものとが混在する街で起った悲劇を情感豊かに描く、3部作完結篇!
無惨に顔を潰された身許不明の少女の死体が発見され、不安と疑惑の渦巻く田舎町に謎の男が現われた。バイクで風を受けてなびくセクシーな黒髪、冷たい緑の瞳ー偶然男と知り合った少女殺害事件担当官の恋人エリザベスは、その危険な魅力にひかれていくが…戦慄と官能とが交錯する、アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀新人賞受賞の傑作サイコ・サスペンス。
人類の入植時代から7百年。火星の苛酷な環境のなかで人類は機械と共生関係を結ぶことで生きてきた。しかし、いまや人類と機械との幸福な関係は崩れつつあり、火星は混沌と荒廃から破滅に瀕していた。その火星を救うためには伝説の機械神となったローテ・ブリッツの覚醒が必要なのだが…!?前作『火星甲殻団』の時代から5百年後の火星を舞台に、新たな世界創造の物語を描く最新刊。
現代アメリカ作家たちが語る現在進行形の愛。都会にひそむ不安定な愛、リリシズム漂う初恋…レイモンド・カーヴァー、ボビー・アン・メイソンなど、現代の愛のゆくえを映す傑作短篇集。
「世の中には、わざわざ飢えた魔の顎の中へ首を突っ込みたがる輩が、本当にいるのでございますよ。我が殿アーモンさまも、そのおひとりでございましてな。かような所業をなさろうというのも、全ては退屈から始まったこと。人語を解する狼の話にいたく興味をもたれ、シヴァ神が舞い降りるという聖なるムリカンダ山へ出掛けたのでございます。旅に出る度、恐ろしいことばかり。そのうえ、この山には月の種族が棲むと、皆が怯えるのでございます…」古代インドを舞台に、鬼才が紡ぎだす、美しくも怪奇な物語の数々。
諏訪駅で転勤する同僚を見送っていた、長野県警の道原伝吉のもとに衝撃的な知らせが届いた。八ヶ岳で写真を撮っていた登山者が、「岩場から人が投げ込まれるのを目撃した」といって、小屋へ駆け込んできたというのだ。投げ込まれたのは、西岡方沙子という若い女性の絞殺死体。捜査を開始した道原が探していた万沙子の親友はなんと万沙子と同時期に木曽で殺されていたのだ。「だれが、なぜ」2つの事件に関連性を見つけた道原が探しあてた男は鉄壁のアリバイを持っていた。道原伝吉の名推理はこの事件をどう解決するか。
大阪・御堂筋から赤坂の一等地に進出をはたした、我がごきぶり商事。元・西成署の刑事、毛ダニこと池谷老人をひきいれて、場外馬券売場で外れ馬券を拾い、1日百万円を目標とするのが、目下の仕事だ。ぼくとの間に一児をもうけた登志子はんが発見した磁気鉄粉応用の、馬券ナンバー改造法で当り馬券に直して現金化するのだ。仕事は順調だがある日、ぼくの浮気心に対する登志子はんの監視の目を盗んで、新幹線で知り合った女優の真下洋子と密会。ごきぶり商事の東京進出の話を映画化したいと申し込まれたのだ。
二派の武力抗争が続く南米の貧しい小国。老大統領を補佐するロドリゲス少佐は、国庫の外貨を奪い、大量の武器密輸入で一挙に反対派を壊滅するべく、大博打に出た。忠実につき従う混血のジョン。二人の武器密輸の道案内に立つ乞食の少女カルメン。三人はともに日系移民の末裔であり、日本に見棄てられた民衆でもあった。彼らが忠誠を誓い手に入れようとする“祖国”とは?移民史を問う衝撃の長篇作。
頃は天保。甲府に入った男たちがいる。戸田流宗家の老武者・藤木道満。武者修業中の島田虎之助。白面の貴公子・本多左近。なぜか道満は仙台黄門と呼ばれ、助さん、格さんという2人の壮漢を従えている。黄門一行が絹商人和泉屋に逗留中、当の和泉屋が斬り殺された。城下には白覆面の剣士の仕業という噂が流れ、道満一行の姿が消えた。この騒乱に島田虎之助も巻き込まれて…。長篇剣豪小説。