1989年発売
10年ぶりに烏裂野の別荘を訪れた拓也は、円城寺実也、麻堵の兄弟と知り合うが、彼らの家庭教師遥佳から奇妙な依頼を受けた。“黒髪を切られていた前任者の事故死の真相究明を手伝ってほしい”というのである。異常なほど厳格な躾を実践し、秘密めく円城寺家。二人が父親に知られることを極度に恐れる「あっちゃん」という名の子どもの存在。やがて少年たちの従兄克之が行方不明となり、その母が墜落死を遂げた…。死者の黒髪はなぜ切られていたのか?あっちゃんとは何者なのか?次々と起こる不可解な事件の真相とは?推理文壇注目の俊英が『緋色の囁き』に続き、自信を持って贈る書下ろし傑作。
美しくて、危うくて、透明な少年。人をひきつける妖精、フェアリーボーイ。まさ子は少年が好き、でも少年はまさ子の弟…。妖精のような少年に恋をした多感な少女のナイーブな心の成長物語。
ひっそりと気づかぬうちに“ブルー”はあなたのそばにいる。凍ったゼリーのような、透きとおっていいにおいのする体をぴったりと寄せて。でも、きらいにならないで。“ブルー”こそが、どんな時もあなたのそばで、あなただけを愛し、本当のあなたを見つめて、けっして裏切ることのない永遠の友達だから。
シーボルトの弟子として当代一の蘭学者と謳われた高野長英は、幕府の鎖国政策を批判して終身禁固の身となる。小伝馬町の牢屋に囚われて5年、前途に希望を見いだせない長英は、牢屋主の立場を利用し、牢外の下男を使って獄舎に放火させ脱獄をはかる。江戸市中に潜伏した長英は、弟子の許などを転々として脱出の機会をうかがうが、幕府は威信をかけた凄絶な追跡をはじめる。
放火・脱獄という前代未聞の大罪を犯した高野長英に、幕府は全国に人相書と手配書をくまなく送り大捜査網をしく。その中を門人や牢内で面倒をみた侠客らに助けられ、長英は陸奥水沢に住む母との再会を果たす。その後、念願であった兵書の翻訳をしながら、米沢・伊予字和島・広島・名古屋と転々とし、硝石精で顔を焼いて江戸に潜伏中を逮捕されるまで、6年4か月を緊迫の筆に描く大作。
宮本武蔵に育てられた青年剣士・松永誠一郎は、師の遺言に従い江戸・吉原に赴く。だが、その地に着くや否や、八方からの夥しい殺気が彼を取り囲んだ。吉原には裏柳生の忍びの群れが跳梁していたのだ。彼らの狙う「神君御免状」とは何か。武蔵はなぜ彼を、この色里へ送ったのか。-吉原成立の秘話、徳川家康武者説をも織り込んで縦横無尽に展開する、大型剣豪作家初の長編小説。
学生バンド『三角関数』が出演した学園祭の舞台で、信じ難し惨劇が発生!演奏中に行なわれた“寸劇”の最中、突然首吊り用の鎖が切れ、西条が死亡。さらにその直後、小佐井も毒殺されてしまった。しかも、切断した鎖の輪が忽然と消失、小佐井には服毒した形跡がみられない。音楽部部長の霧村助教授は、残りのバンドメンバー丹治亮一、黒田ユリらと真相を追及。はたして二人を殺害したのは、同一犯人なのか、それとも?巧妙に仕掛けられた犯行に霧村の推理は?息を呑むドンデン返しと、最先端の医療科学を駆使した強烈なトリツク!著者会心の本格推理堂々の登場。
〈異来邪〉を名のる人物から届いた死の予告状どおり、地上80メートルの密室から消失した甲斐辰朗。4時間後、マンションの1室で発見された首なし死体は二重生活を営んでいた辰朗のものなのか。なぜ犯人は首を持ち去ったのか。息つぐ暇もなく繰りひろげられる推理戦の果てに、閃光のごとく顕れる度胆をぬく真実。
21時00分東京発ひかり323号。この最終ひかり号新大阪行グリーン個室に、毎夜乗り込む若い女がいた。そしてある夜、最終ひかり号個室で会社社長が刺殺される。現場には香水のかおりが漂っていた!その夜限りで姿を消した謎の美女を追う十津川警部の秘策とは…。新鋭車両を舞台にした最新傑作ミステリー集。
窓際の中年社員が楽しむ唯一の趣味はプロはだしのハーモニカ演奏。ブルース・ハーモニカの魅力にとりつかれた男はコンテスト会場で妙齢の婦人と知り会い、ラブロマンスに発展した。50万円のハーモニカを買うため、男は社長と業者の罠に落ちたかに思えたが…。中年社員のほろ苦い抵抗劇(表題作)。おしゃれで懐しい味の7つの恋物語。
北海道大雪山麓。苛烈な自然と貧因に怯えつつ暮らす両親と6人の子供。生活の辛さ、女教師への憧れ、淡い性の日覚め、そして何より自然と人情の美しさの中で、少年は成長していく。その目は、重い真実と胸底の暗い澱みを見据えながら、爽やかな明るさを失なわない。まさに、著者が“ぼくの原風景”と呼ぶにふさわしい感動的な長編小説である。
人生の機微、男と女の心理の綾を、心憎いばかりのみごとな筆致で浮き彫りにするショー。訳すのは、私小説の世界に新しい地平をひらいた直木賞作家。この日米の短編小説の名手がコンビで贈る“人生模様”。「心変わり」「かなしみの家」「不道徳な話」「ニューヨークの喧騒」など、珠玉の13編を収録。
読者はパスティーシュという言葉を知っているか?これはフランス語で模倣作品という意味である。じつは作者清水義範はこの言葉を知らなかった。知らずにパスティーシュしてしまったのだ。鬼才野坂昭如をして「とんでもない小説」と言わしめた、とんでもないパスティーシュの作品の数々、じっくりとお楽しみを。(講談社文庫) 読者はパスティーシュという言葉を知っているか?これはフランス語で模倣作品という意味である。じつは作者清水義範はこの言葉を知らなかった。知らずにパスティーシュしてしまったのだ。鬼才野坂昭如をして「とんでもない小説」と言わしめた、とんでもないパスティーシュの作品の数々、じっくりとお楽しみを。
悲惨な爆発は信じられない人為的ミスで惹き起こされた。だが、その事故がさらに恐ろしいものになることを防ぐために、幾百人もの人間が命を捧げた。献身と勇気、人間愛が、官僚性と無気力にいかに立ち向かい、打ち勝ったか、米国著名SF作家が刻明な取材と極秘に入手した資料をもとに描いた傑作長編小説。
三題噺とは客席からの出題に即席で演じる窮極の話芸。すこぶるつきの美女からお題を頂戴、文学界の真打連中が高座ならぬショートショートで腕をふるいます。吉行淳之介から村上春樹、高橋源一郎ら若手まで20人が、起承転結の妙、かくし味をピリッときかせて、読みごたえ十分。さて勝負はいかが?