1989年発売
流れ落ちる滝のような一条の白い線と、梅の花びらを思わせる美しい紋様ー。見る者の心に戦慄さえ呼びおこす名石“深山の梅”に憑かれた二人の武士の友情と、決して消すことのできない親友の妻への慕情を描く表題作ほか、娼妓として売られた女の初々しい心持ちを伝える「朝の雀」、桜の精に心奪われた男がやがて身近な女の献身に気づく「花かげの女」など、哀歓を奏でる時代小説8編。
私設情報機関〈SSC〉社長スタンホープには息子が3人いた。長男が殉職し、次男ピーターはその悲しみと父への不信から家を出た。ところが死んだはずの兄から、結婚するので式に出てほしいと電話がかかった。5年ぶりに帰国した彼を迎えたのは、花婿姿の弟と、そして命を狙う銃口だったー放浪するイラン国王の動きを背景に、凄絶や復讐戦を繰り広げる男たちの死闘を描くサスペンス。
ネコと同居し、ヨガと中国拳法を操る、タフでクールなヴェトナム帰りの私立探偵エルヴィス・コールとマッチョな相棒ジョー・パイク。「軽い仕事」のはずだった失踪父子の捜索は映画界につきもののコカインがらみでシンジケートとの対決へ…スプリングスティーンのしゃがれ声が似合う冬のロサンジェルスを舞台に粋な探偵の生き様を描く、エルヴィス・コールシリーズ第1弾。
生まれたばかりの赤ん坊を抱えた若夫婦が、ナニー(住込みのベビーシッター)を雇った。有能なナニーは、赤ん坊を巧みにあやし、家事を片づけ、若夫婦の世話まで焼いた。しかし、ナニーの行動にはどこか不気味さが漂った。そこで夫は、謎に包まれたナニーの過去を密かに探ってみるのだが…。“純粋で完壁な愛”を求めてさまよう魂が若夫婦を追い詰めていく、長編サスペンス・スリラー。
大正は14年、〈彼〉は大阪に生まれた…。貧しい下駄職人の三男坊・平吉は、一家心中が失敗してサーカスに入団。そこで師と仰ぐ丈吉が突然姿を消してしばらく後、謎の怪盗が巷を騒がせ始めた…どこか懐かしい昭和初期の風景の中で展開される数々の事件。その真相が二十面相側から語られる、ユニークな長編小説。
死体のパーツが新たな犠牲者の体内に-酸鼻をきわめるリレー式連続殺人事件。午前4時の家々に病院に、殺人機械は音もなく侵入する。狂気の匂うナイフは、いかなる怨恨を切り取ってゆくのか…。一分の隙もなく構成された迫力満点のホラー・サスペンス。
迷宮入り寸前の殺人事件がきっかけだった。とるに足らぬダイイングメッセージが「絶対にバレない詐欺」解明の唯一の糸口だった。被害届もないまま、組織の綻び目を手繰ってゆく2人の刑事。犯人を絞り、詐欺の全容も明らかにした矢先-。現代社会に潜行する悪のトレンドを逸早く掬いあげる、著者ならではの同時代ミステリー。
死に場所を求め、樹海を彷徨う御岳雄一郎。足をすべらせ意識を失った彼は不思議な夢を見る。愛する女との関係を断ち、“使命”を負えば、望んでいた将来が実現するというのだ。九年後、成功を手にした御岳を強烈なイメージが襲う。“使命”だ-。見えざる意志に導かれ、彼の54年型セルセデス300SLは闇を切り裂く。自らの存在の証しを求めて。ハードボイルド・ホラー。
政争と陰謀の渦中から栄華をきわめた平家一門。やがて東国に興った平氏打倒の嵐に翻弄され、西海の藻屑と消え去るその足跡を、頭領の妻を軸に綴る。公家・乳母制度の側面から捉え直す新平家物語。
8年前に捨てた妻子に会いたい-気鋭の画家ゲリーの頼みで、私立探偵アッシュは2人の行方探しを始めた。だが、依頼人の妻レイニーは再婚、息子ブライアンは、悲惨なことに、母の運転する車に乗って事故に遇い、幼い命を散らしていた。報告を聞いて激昂するゲリーに、アッシュは一抹の不安を覚えたが…。過去を秘めた謎の魅力とハードボイルドの詩情を堪能させる著者会心の作!
探索の旅は終わった。世界を支配できる力を秘めた〈アルダーの珠〉を奮取し、ガリオンはリヴァ王となってセ・ネドラ王女と結ばれた。すべてこれらのことは時の始まりより定められていたこと。そして今、〈予言〉が語るように、ガリオンは邪神トラクとの最後の対決の途上にあった。だが、彼は暗澹たる思いに閉ざれるばかり。自分の意志とは無関係に王にされ、あげくのはてにトラクを倒せという。だがしかし、果して死すべき人間に神を打ち負かすことなどできるのだろうか…。全米でベストセラーを記録したエピック・ファンタジイ、堂々完結。
宇宙飛行時における最大の問題はートイレ。特に長期飛行の場合は大問題だ。しかし、わが森田衛生設備株式会社が誇る最新式無重力トイレがあれば、そんな悩みは解消。無重力でも快適な生活が送れるはず、なのだが…。このわが社自慢の製品にクレームをつけてきた客がいる。どうやらセンサーの調整ミスみたいなのだが、大変なことになっているらしい。ヴィデオフォンの向こう側にいる不定期貨物船オーナーの罵詈雑言がその程度を示していた…無重力トイレをめぐる大騒動を描く「無重力でも快適」他、5篇を収めるSF短篇集。
第二次世界大戦中、フランスで対ナチ情報網に従事、目覚ましい功績をあげたチャンピオン。アラブと密接な関係を持つ彼を、いま西ドイツが武器密輸容疑で追いはじめた。かつて情報網の一員だったわたしは、英国情報機関の指令を受け、彼の身許調査を開始する。だが、チャンピオンの身辺に送り込まれた女情報部員は失踪、わたしは情報網ゆかりの地ニースへ飛ぶ。そこで見いだしたものは、戦争の英雄たちの30年後の姿と、巧妙に張りめぐらされたチャンピオンの計画だった!巨匠が古き時代のスパイたちの姿を通して、非情な現代情報戦を描く力作。
忍び寄るピューマ、襲いかかるワシ、そして疾走する馬ー内気な高校生ダンが唯一心を開く相手は、部屋に飾ったポスターや剥製の動物たちだった。無理解な父親から獣医になる夢を禁じられ、学校では校長の息子として特別な目で見られる。そんな彼の鬱屈した心を動物たちは慰めてくれた。だが、町に連続殺人鬼が現われ、その魔手がダンに伸びたとき、突然闇の中から不思議な影が!正統派ホラーの流れをくむ著者が、思春期の少年の幻想が悪夢の世界を鮮烈に描く。
イギリスが開発した戦闘攻撃機ブラックホークがテスト飛行中に墜落し、パイロットの空軍少佐が死亡した。三重のフェイルセーフ・システムを備えた最新鋭機がなぜ?墜落の原因をめぐって謎が深まる中、ブラックホークの配備をめざす政府側と、イギリス版SDI“スペース・ストライク計画”の推進派との対立が激化し始めた。そんな折り、死亡した少佐の恋人でイギリス空軍の女性パイロットのエリカは、通信社の記者である少佐の兄と墜落事件の調査に乗り出す。だが、やがて彼らにも不気味な死の影が!緊迫した筆致で描き出す航空サスペンス。
交通事故で四肢が麻痺したアランを心底理解して世話をするのは看護婦エラだけだった。といっても彼女は人間ではない。研究中の新薬で知能が向上した猿だった。人間と猿との心暖まる交流。が、しだいにその関係は悪夢を生み出していった…。〈ゾンビ〉三部作で著名なジョージ・A・ロメロ監督が贈るホラー映画原作。