1989年発売
おれの特殊な能力を見込んだ友人の依頼をうけ、おれはある天文台へ向かった。そこで出会った天文台の関係者らしい美貌の女性の話によれば、最近、世界有数の天体物理学者がこの天文台から姿を消したらしい。しかも、どうやら宇宙科学者の失踪事件はこれにとどまらず、ソ連でも発生している。CIA、KGBなども必死にその足どりを追っているらしいのだ。この世界的な集団失踪事件の背後にはどんな秘密が隠されているのか…。広大な宇宙に源を発するコズミックな異常現象とその謎の解明に挑戦する超能力探偵アシュトン・フォードの新たな活躍。
夕方のセミナーで私を笑いものにしたのは、美しい女子大生だった。私は中年の大学教授で、片頬に醜悪な傷があった。その傷を女子学生の目の前につきつけると、笑い声はやんだが、私の頬は思いきりたたかれた。この時から、彼女への異常なまでの愛情が湧き起こったのだ。期待の英国女流新人が放つ各書評子絶賛の“美女と野獣”の物語。
高校生のカップルと若妻が連続して惨殺され、平和な田舎町は震撼した。しかし被害者同士には何のつながりもない。妻と教え子を殺されたうえ、警察から殺人容疑までかけられた高校教師ブレットは、一見無関係な事件の謎を追うが…。戦慄の連続殺人と無実の男の必死の追跡行を巧みなプロットで描く、期待の新進女流のサスペンス大作。
ベートーヴェンの交響曲〈エロイカ〉の形式にのっとって、英雄ナポレオン・ボナパルトの波瀾万丈の生涯を描き上げる-音楽と文学を合体させた壮大な実験場が、この本である。1796年の第1次イタリア遠征、ジョゼフィーヌとの結婚を幕開けに、コミカルな独裁者、凡人の悩みをかかえた皇帝ナポレオンの姿を、エジプト遠征、ロシア遠征、エルバ島およびセント・ヘレナ島配流などを通じて“文学の交響楽”の中に浮彫りにする。英文学界にそびえる巨人バージェスの、文学性豊かな笑いと諷刺にあふれた、大胆不敵な長篇。
ラボー・カルベキアンは、亡き妻の大邸宅で孤独に暮らす老人。トルコ帝国による虐殺を逃れてアメリカに移民してきたアルメニア人を両親に生まれ、画才を生かして抽象表現派の画家となった。一時はポロックらとともに活躍もしたが、才能のなさを思い知って今は抽象画のコレクターに甘んじている。そのラボーが、開かずの納屋に大切にしまいこんでいるものとは一体何なのか?『ガラパゴスの箱舟』に続いてヴォネガットが贈る、人類に奇跡を願う長篇。
浅見光彦は母親の雪江のお伴で兵庫県の城崎温泉を訪れた。彼には但馬に残る土蜘蛛伝説の取材もあり、郷土史家の安里家を訪ねたが孫の利昌が応対に出て、何の成果も得られない。翌日光彦は、レンタカーで母親と出石へ行く途中、かつて金の先物取引の詐欺事件で有名な保全投資協会の幽霊ビルで、3人目の死者が出た事件に遭遇する。警察では3人共自殺としたが、彼の勘では他殺である。そこで第1の死者、水野を調べ始めた光彦は、出石焼の作陶家の娘、矢沢まゆ子と再会-思いがけず但島伝説と殺人事件を繋ぐ接点に…。
公安調査官・加下千里が、羽田空港入管ゲートで知りあった中国服の美女に誘われて入った中華料理店に、すでにこと切れた男が転がっていた。加下を嘲笑うかのように、口紅で書かれた「李大福死刑」の五文字が、男の胸で躍っていた。香港・東京を結ぶ麻薬密輸ルートを求め組織に潜りこんだ加下の前で、次々と消される男たち…非情の世界を軽快なタッチで描く好評シリーズ。長篇推理。
不審な浪人が出入りする空屋敷を襲った鞍馬天狗は、だが、床下に仕掛けられた爆薬からからくも逃れ、相次ぐ浪人殺害の下手人を追った。一方、弟・差竹主水正殺害犯人を追う春日井右京までが狙撃され、父と伯父の仇を追う佐竹恵之助。一味の姿を求めて踏みこんだ信州路だが、そこにはすでに鞍馬天狗の姿があった…。浪士殺害の黒幕の正体は?その狙いは?傑作時代長篇完結篇。
グレート・ウェスタン保険会社の支払調査部長から、〈私〉に、焼死事件の調査依頼が舞いこんだ。かつてはゴールド・ラッシュに沸き、今やゴースト・タウンと化した町マスケット・クリークを観光地にしようと目論む〈ノーザン開発〉の社長宅の火事で、当の社長が焼死したのだ。失火か、それとも放火か。ところが調査開始早々、第二の事件発生で、事は厄介な方向に…。“名無しの探偵(ネイムレス・オプ)”シリーズ最新作。
雨の降りつづく四月の夜。ポートランドのちっぽけなバー〈ミル〉。その薄汚れた店で悪夢のような事件が起こった。若い娘サラが酔客たちの生けにえになったのだ。さっそく、この事件は警察に通報され、美貌で野心満々のキャサリンが担当検事補に任ぜられた。迫真の法廷シーン、執拗なキャサリンの捜査、揺れ動くサラの心ー人気女優ジョディ・フォスターとケリー・マクギリスが火花を散らす大作の小説化。
国際サスペンス小説の一級品!レニングラードからヘルシンキへ向かっていた国際列車グリーン・トレインは、国境付近で突然停止を命じられた…運命のいたずらで国際紛争の渦中に放りこまれた人間の行動と心理を巧みに描いて絶賛を博した、国際サスペンス小説の傑作。待望の邦訳。
不安と恐怖、息づまるサスペンス!スペインの貴族、マンハッタンのビジネスマン、イタリアの恋人たち、日本人の過激派青年、イギリス人ジャーナリスト…読者はこれらの乗客とともに旅をし、共感し、戸惑い、不安になり、恐怖する…。東西間の対立をリアルに描いた国際政治スリラー。
偶然、通りかかった事故現場で、テレビ・プロデューサーの鷹取吾郎は、青年が残したダイイングメッセージ『金ぴかの猫…』を聞いた。彼は、男の死因に不審を抱き調査を開始するが、事件の背後にヤクザ抗争があり、その裏で暗躍する巨大組織が絡んでいた。次々と鷹取を襲う魔の手。彼に勝算はあるのか!?そして「金ぴかの猫」が意味する謎とは!?やがて、秩父山中に隠された組織の恐るべき実体を掴んだ鷹取だったが…。
「おれと一緒にいると、あんたもあぶないぜ」「仕方ないわ」-惚れてしまったんだから。…ゆき江のうちにはげしい気持ちがおこっていた。どっちへいくか、今きめよう。そういうおもいで五郎吉を安蒲団の上へ誘い入れたー「残菊燃ゆ」より。ほかに「情炎黄八丈」「妾小路の惨劇」「廓姉妹」など、大江戸八百八町を舞台に、八人の女の妖艶にしてしたたかな恋のかたちを鮮やかに描く、洒落た味わいの時代物傑作集。
深夜、家路を急ぐ男が自分の影に襲われた!黒い甲虫のような物に姿を変えた影は、蠢きながら男の口から体内に侵入、男の身体は裂けて吹き飛んだ。頻発する深夜の失踪事件!カメラマン助手の宇和野守人も帰宅途中、正体不明の黒い生き物の群れに襲われた…。鋭い爪を持つその生き物は、身動きできない守人の身体に爪を深く突き刺した。死を目前にした守人だったが、突然、黒い群れは姿を消し、そこには妖しい魅力を放つ美女・ラナが立っていた。ラナの美しい肉体に溺れる守人…、ラナとは一体何者なのか?そして黒い生き物たちは。ホラー小説の若き旗手が戦慄の恐怖と清新なエロスとを見事に描いた、書下ろし長編ホラー小説の秀作。
一糸まとわぬ豊満な肉体が、シーツに血染めのメッセージをのこして絞殺されていた。「紅葉は三浦の太夫」井原西鶴の言葉が、江戸と現代をむすびつけ、連続殺人を呼び起こす!警視庁の軟派刑事東郷猛と、短大助教授橋場久美子のコンビが事件を追ううち、つきとめたのは…。その底には西鶴の怨念が?