1989年発売
うわべは優雅な村人であった亡父の形見の六連発の拳銃。母の心臓に、雷に打たれたようにある六つの小さい深い穴。さりげない筆致と深く暖かな語りのうちに、生きていることの根に、静かな声援をおくる三浦哲郎の鮮やかな短篇連作の世界。野間文芸賞受賞。
巨大なコンクリート団地のそばにポツンと残された小山が、実は首塚であり、偶然にも滝口入道、「平家物語」へと話は進展し、作者自身の大病から首塚の主・馬加康胤と地名の由来となる痛快な物語。
恋さがし、いい男さがしの旅にもちょっぴり疲れてしまった我らが星子サン。そろそろ宙太との結婚を本気で考えはじめたその矢先、「美空宙太氏の正体をあばく旅に、あなたをご招待します」という謎の手紙とともに届いた1枚の指定席券。目的地・仙台で待つ、宙太の恐ろしい血の秘密とは?恐怖の殺人事件の中で、今ひとつひとつの謎が明らかになる。
バレンタイン直前の夜、南子の自宅に泥棒が入った。盗られたものは何もない。犯人も侵入経路もわからないまま迎えた2月14日。憧れの清水先輩にフラれ、さんざんの南子の前で毒入りチョコレート殺人事件が起こった。ああ、呪われた男女相愛の日。おなじみ探偵クラブの面々に北野+明石刑事コンビ、そして、ちょっとE男の達也クンを加えて、爆笑ドタバタ大捜査の始まり始まり!
校内スキー大会で滑降の三連覇を狙うぽぷらに、新聞部の美少女・霜山さんが密着取材。彼女、“P・N”ってイニシャルの入ったセーターまで編んでるらしい。いっぽう、わたしにも、女生徒にモテモテの三浦君が「ケーキの作り方を教えてほしい」って大接近。でも彼は今度のスキー大会で、ぽぷらのライバル。しかもこともあろうに遼とも三角関係?そんな、ねじれにねじれた関係が大会当日…。
そのひとから初めて手紙がきたのは2年前、あたしが小学5年生の夏休み。『とつぜん、すみません。…いつも、あなたのことを心にかけています…』そんな文面で、『倉島水帆様』あてさきは、たしかにあたし。だけど、差出人の住所も名前もない。それからも何通も届いたそのひとからの手紙。その、あたしに対するやさしさ、思いやりに心うたれあたしはそのひとに恋してしまったのです。
あたし、吉田日和。琢磨とカップルになれて初めての夏を迎えたの。一応受験生だけど、せっかくの夏だもの、明るく青春しなくちゃねーのはずだったのに、近頃出るのはため息ばかり。琢磨はバンドに夢中でちっともかまってくれないし、好青年・八木橋くんの優しいアプローチは少しずつ心を揺らしてくみたい。あたし、このまま琢磨とすれ違っていっちゃうの?「きらきら星をあげよう」の続編。
「お姉ちゃんは県立高校行ってくれたのに、ななほはお金がかかって…」愛する娘の晴れの入学式だというのに、母のセリフに心がしずんでしまう。希望校を落ちたから、仕方なしに私立に行くんだから、わかってよね。私の苗字は寿っていうんだけれど、クラスにもうひとり同姓のコがいる。寿ナツミ。はっきりいって、かわいい。もう完敗、大敗、惨敗。これからの学園生活が思いやられるわ。
フェリーから身投げした男、飛び降り自殺した弁護士、時計台から助教授が…。3人と関わった彼女は!『クルト・フォルケンの神話』。地球は7人の大陸指導者によって支配されている時代ー聖家族の一員である達郎にとって、大切なことは…『眠り姫の目覚める時』。お祭りの夜、金魚すくいの夜店ではじめて逢った小田くん。こぼれるような微笑みが素敵だった。あれは5年生の秋…『祭りの時』。
クラスメートとのおしゃべりや心の中でつい「あいつ」と呼んでしまうーあなたにもそんな男の子がいませんか?本当は気になるくせに、なぜか素直になれず「あいつなんて」と口にしてしまうとき、もしかしたら恋ははじまっているのかもしれません。この本で描かれるのは、8通りの恋のはじめの物語。あなたの「あいつ」にいちばん似ているのは誰でしょうか?恋の入門短編集「あいつ」パート2。
若いギター弾きの男が、年上の不可思議な女性と彼女の家でベッドをともにしたとき、そこには不可解な異様な恐怖が…(表題作)。保険金殺人をめぐる男女の駆け引きを、ユーモラスにして皮肉な結末で綴る『サバイバル・ゲーム』など、全8篇、女性を主人公に描く異色のミステリー集。
大企業「ニッポンバイク」の本社宣伝部でバリバリの企業戦士だった義明に出た突然の左遷辞令は、片田舎での一販売部員というものであった。いったい何があったのだ!でも負けはしないぞ。きっと立ち直ってみせる。翌日から展開された強引な販売作戦。著者の体験にもとづく異色のサラリーマン青春小説。
タツミには確かな目標があった訳ではない。たどり着いたのがロンドンだったのだ。ナン焼きのためにケロイドができた左手をいつもポケットに入れて歩くネパール人グルン。子守りとなって挫折してゆく日本人女子留学生ナオコ…。白人から「黄色人」と軽蔑されながらもしぶとく生きる若者達をタツミの目を通して爽やかに描いた「すばる文学賞」入選作。他に「光の休暇」「闇の喜劇」を収める。
人の病を直すことより、国家の病を直したい。保和らの薦めにより、医学を修得することになったが、政界への夢断ちがたく、板垣退助、北里柴三郎、岩倉具視らを知り、政官界への足がかりを着実につくっていった。明治・大正を通しての傑出したアイデアマン後藤新平の信念に満ち溢れた生涯を描く大長編。
人工衛星でソ連に遅れをとったアメリカの宇宙計画が、科学者、宇宙飛行士、政治家の懸命な努力で推進され、アポロ11号で人類はついに月に到達した。20世紀の夢を実現させた人びとは、この興奮のかげでさまざまなドラマに巻きこまれ…。近代科学の精華をささえた群像を、ヒューマンなタッチで描ききった感動ノンフィクション・ノヴェル。
突然狂ったように踊り出したり、デパートの婦人服売り場で女物の服を手当り次第に着たりする男がいた。しかも、彼は自分の行動を全く憶えていないという。-そのヘンな男が、ある日、死体で発見され、一人住まいの彼の部屋には、無数のこわれた人形が散乱していた…。孤独なセールスマンの死の謎を探る「踊る男」など、奇抜なアイデアとユーモアで描いたショートショート34編。