1989年発売
鬼才が描く4編の異常な愛の裏事情。-相続問題が引き金となって、嫁と舅の間に生まれた愛を描いた、「愛の帆掛舟」。癌に罹ったオールドミスの衝撃的な告白を綴った「愛の真珠具」。金持の息子とゲイボーイの愛の結末を描いた「愛の百万弗」。手堅い銀行員の夫に意外な愛人がー。夫婦の愛の行方を追求した「愛のハンカチーフ」。『愛の矢車草』の待望の続編、文庫書下ろし・各編挿画入り。
人間ってのは、みんな未完成な模造品だね、誰もが誰かを演じてるー。出来合いの「青春」を舞台にのせてドラマチックに演じきることを夢み、ついには、演技する自分を茶化すことにすら情熱を傾けてしまう永遠の青二才・亜久間一人。捉えどころのない「現代」をたくましく生き抜く自意識過剰な夢想的偽悪少年の、明るくねじれた自我の目覚めと初々しい愛と性の大冒険。新時代の青春文学。
フロイトの招きでウィーンに移住したペリー一家は、第二次ホテル・ニューハンプシャーを開業、ホテル住まいの売春婦や過激派たちとともに新生活をはじめる。熊のスージーの登場、リリーの小説、過激派のオペラ座爆破計画…さまざまな事件を折りこみながら、物語はつづく。現実というおとぎ話の中で、傷つき血を流し死んでゆくすべての人々に贈る、美しくも悲しい愛のおとぎ話。
キンギ牧師暗殺は、じつは本人の意志であり、その実行には、牧師の後継者で副大統領候補のバーネットが加担していた、という驚くべき情報がM16にもたらされる。休職中だった中年アナリスト、レイシーは、その真偽を確かめるべくスペインに飛ぶ。だが、情報提供者は殺され、レイシーは国際的な大陰謀に巻き込まれてゆく。老練な謎の暗殺者と中年スパイの死闘を描く長編サスペンス。
英国政府が矯正不能な男達を集めて大西洋の孤島に作った流刑地サート。そこではファーザーと呼ばれる男が指揮する規律ある集団ヴィレッジとアウトサイダー達が抗争を繰り広げていた。その陰で密かに進む脱出計画。そこに送られたラウトリッジを待つ運命は…。無実の罪に陥れられ、絶望のどん底に突き落とされながら、過酷な流刑地で人間として成長していく男の姿を描いた冒険小説。
野性よ、疲弊した文明を撃て。大雪山の闇を歩く。木が勾い、ヒグマが鳴いた。夜が明けると、そこは原初の村-自然とともに生きる人々の集落にまぎれこんだコンピュータ販売人が見たものは?迫力に充ちた長編小説。
20歳の娘アリスンはニューヨークに住んで演劇学校に通っている。芝居は彼女が夢中になれる唯一のもの。ボーイフレンドたちのいいかげんさにうんざりしていたとき、ディーンと出会った。彼は今までの男の子たちと全然違っている。優しくて知的だ。でも囲りの人間たちは二人の純愛を温かく見守ったりなんか決してしてくれない。強引に誘われたパーティー、それは二人にとって、ちょっと残酷なものだった…。80年代のサリンジャー、マキナニーの最もサリンジャー的作品。愛に向かって手を差しのべる、ポスト・モダンガール、アリスンの物語。
常識を遥かに超える擬似体験ゲーム機「クラインの壷」が開発された。スクリーンに映すべき映像を網膜に直接映し、聴覚嗅覚触覚、全てが現実そのままに感受される-だがそのテストモニターが消え、謎の組織が動き始めたとき…。緊迫の展開、驚異の結末、新たなミステリー世界が誕生した。
エリート商社員と夫と有名私立小に通う息子とくらす奈々子。息子のいじめと無関心な夫、隣人とのやりきせない人間関係の中で幸せなはずの家庭に忍び寄る官能の嵐、そして崩壊。繁栄の時代の影を浮き彫りにする異色の長篇。
黎明期の向島花街に生きたひとりの女の愛と哀しみ。明治20年、新橋の売れっ子芸妓お良は政商村岡にひかされて向島に移る。隅田川に秋風が渡るある夜庭先に現われた目許の涼しい若い男に別れられない想いを抱いたお良だが、村岡が何者かに暗殺され…。向島花街に生きたひとりの女の物語。
英文学教授ポーラ・グレニングは、庭の石段ど足を滑らせ怪我をした友人の代理講師として、急遽、金持ちの未亡人レディ・ヒンドンの屋敷で毎週ひらかれる創作講座にでることになった。だが友人の怪我はたんなる事故ではなかった。何者かが石段に細工していたのである。それだけではない。“家庭内の殺人”をテーマに生徒たちが書いた短篇には、事故との類似性を感じさせるものがあったのだ。生徒の誰かがストーリーをなぞって罠を仕掛けたなどということがあるだろうか?あれは、生徒の中に実際に“家庭内の殺人”を犯した者がいると暗示していたのか?しかし真意を確かめる間もなく、事態は思わぬ方向へと展開した。英国女流の新鋭が放つクラシックな本格サスペンス。
私立探偵ジェイコブ・ロマックスのもとにデンバーの石油業者フィリップ・タウンゼンドの弁護士が電話をかけてきたのは、タウンゼンドが車ごとロッキーの岩場に転落して死亡してから6週間後のことだった。事故死の判定にどうしても納得しない未亡人を満足させるために、再調査をしてほしいという依頼だった。確かにロマックスが調べてみると、ひっかかる点がいくつかあった。タウンゼンドの私生活を洗いはじめたロマックスは、一本のビデオ・テープを発見した。そしてそこには、まだあどけなさの残る少女を犯すタウンゼンドの姿が写っていた。誠実な夫、優しい父親、真面目なビジネスマンの下にロマックスが見たもうひとつの顔とは?ロッキーの大自然に囲まれた町デンバーに知性派探偵ジェイコブ・ロマックス初登場。PWA新人賞受賞作。
グリーンに輝く巨大なクリスタルの破壊を命じられた戦艦《オマゾ》が消息を絶った14時間がすぎた。自由意志を奪って人間を思いのままに操るヒュブノ・クリスタルに《オマゾ》は乗って取られてしまったにちがいない。その報告を受けたアトランと自由商人ロワ・ダントンは、ダントンの宇宙船《フランシス・ドレーク》で《オマゾ》捜査に乗りだした…。ようやく所在をつきとめたかれらは、《オマゾ》艦内に潜入して、乗員たちを救出しようと奇策をめぐらすのだが…!
明るい陽光、バームツリーと白い砂浜。隠退老人たちのリゾート天国、フロリダで余生を送る元天才ロボット学者のコッブは、自分とそっくりの男の訪問を受けた。月に行ってくれれば、代償に新たな肉体を提供するというのだ。月では、かつてコップに自意識を与えられ、人間に対して叛乱を起こしたロボットたちが、独自の都市を築いている。いぶかしく深いながらも招待に応じたコップは、いつしかロボット同士の大抗争にまきこまれてしまった!マッドSFの鬼才ラッカーが、奇想天外な大騒動をポップなタッチで描いたディック記念賞受賞。
ゴールデンゲート・パークでアヒルに餌をやっていた少女ミシェルは目を見はった。池の対岸が見えなくなるほどの濃霧が、あっというまに一面に立ちこめてしまったのだ。しかも異変は、そこだけにとどまらなかった。サンフランシスコを中心とする一帯がこの異常な霧に包まれ、航空機や船舶の事故が相つぐ。霧に影響されないはずの超音速地下列車すら不通になるありさま。外部との通信もいっさい途絶し、サンフランシスコ市民は不安と混乱の一夜をむかえた。翌日、霧の晴れたサンフランシスコ上空に異星人の奇妙な宇宙船が姿を現わした。