1990年発売
1937(昭和12)年、公刊した岩波初版本の戦後初めての復刻。〓東・私娼街の女性との交情とその別れを描いた詩味豊かな名作。荘八の挿画はその情況を活写。五号総ルビ、別丁挿画34丁を収めた著者自装の美本。
起死回生の新作で存在を世に問うべく、秩父の山荘にこもった老作家のもとに美貌の女性が訪れる。書き上げたばかりのミステリーの原稿を持って…。すべての謎はここからはじまった。殺人、惨劇、犯人はおろか、見えかけた真相まで罠にしてしまう、驚倒の多重トリック。注目の新鋭、傑作長編ミステリー。
愛する息子ニッキーが自殺した。それも何の前兆もなく。私がジョギングから上機嫌で帰宅したとき、夫のベンがうつろな顔で私に悲報を告げたのだ。ニックの命を奪ったのは、クロムウエル大学の古色蒼然とした権威の陰に蠢く、何か恐ろしい秘密ではないかー。母として女性検事として、私は単身大学に乗り込んだのだった。そこで見たものは。
死をたじろがずに見つめ、みずからの宿命をいさぎよく受け容れる。冷徹な眼で築き上げられた吉村昭の短編小説の魅力。軍用機を爆破して元脱走兵を取材する「私」と、家族にも過去を語らず、苦悩の歳月を生きてきた男との魂の交流を、一夜のうちに咲き散る月下美人の花に託して描く表題作など、8編を収録。
クラスでふたりは際立った。英語をきれいに発音できる少女と、訳出が上手な少女。ふりたの奇妙な友情は、大人になり、互いの社会的条件がちがってきても、表向き続いていたが…。洗練されたセンスと鋭い感性に裏うちされ、優美と毒とを巧みに織りまぜる秀作12編。惜しまれつつ急逝した著者の“忘れがたみ”というべき作品集である。
或る日突然変貌し、異常なまでに猛烈に働き出す男(「聖産業週間」)。会社を欠勤し自宅の庭の地中深く穴を掘り始める男(「穴と空」)。企業の枠を越え、生甲斐を見出そうとする男(「時間」)。高度成長時代に抗して、労働とは何かを問い失われてゆく〈生〉の手応を切実に希求する第一創作集。著者の校訂を経て「花を我等に」「赤い樹木」を加えた新版・六篇。芸術選奨新人賞受賞。
父と、黒川先生とが、あの日道後の茶店で行き会った、酒飲みの乞食坊主は、山頭火だったのではなかろうか。横しぐれ、たった一つのその言葉に感嘆して、不意に雨中に出て行ったその男を追跡しているうちに、父の、家族の、「わたし」の、思いがけない過去の姿が立ち現れてくる。小説的趣向に存分にこらした名篇「横しぐれ」ほか、丸谷才一独特の世界を展開した短篇三作を収録。
ご存知『塀の中の…』シリーズで活躍したおなじみの面々がカムバック。恥ずかしながら著者までが作品中に乱入し、ワルの逆手を取って強きをくじく大活劇!痛快悪漢長篇小説。
三井物産の大企業論理と闘った情報産業の旗手。高度情報化社会の到来を予見しカリスマ的社内起業家といわれた男が、なぜ決起したのか。企業がハイテクに対応しようとする時に必ずや発生する社内的摩擦と衝突を事実に基づいて描いた大型経済小説。
殺戮と権謀に明け暮れた戦国時代に生まれながら、美と才をもって男の論理に抗した女性-細川ガラシャ。神への愛に自らをゆだねた清烈なその生涯を祈りとともに描いた著者初の歴史小説。
「貴女がスターになれるチャンスをプレゼントします」という手紙とともに送られてきたのは新幹線の切符と映画『新撰組』の台本。沖田総司役はあこがれのスター・小野寺涼。この機会を見逃す星子チャンじゃありません。キャッホーとばかりに、いざ京都!!しかしそこには凶悪犯罪が待っていて…。オールスターキャストに久々登場のゲンジロウ、新キャラを加えて、全山浦ファンに贈る超新作。
「久我さん、あたしを卒業プロムに誘って」と胸キュンしてる花梨。必死決死で大告白をしたものの、答えはノー!かわりに湘高サッカー部のマネージャーに誘われて、あたしは一躍、ハードで熱い少年たちのマスコットガールに。彼らがめざすのはブロック大会。でも、新設サッカー部なので、人数不足はどうしても否めず…。そこに現れたのがブルーブラックの髪が印象的な武蔵クンだった。
「待子ちゃん、模試を受けに行ってるっていうのに…」突然、ママが怖い顔をして怒鳴った。お手伝いのマキちゃんの本を借りて読んでいたんだ。ベッドシーンのまんがだったんだけどね。こんなこともあって、従姉の待子ちゃんがつくった歌が、あたし(結実)のものとして評価されて以来、あたしの心は平静ではいられなくなってしまった。
バンドに夢中でちっとも振り向いてくれない「あいつ」。大勢のサッカー部員の中でひときわプレイが目につく「あいつ」。失恋が決定した浜田省吾のコンサートで偶然に出会った「あいつ」…。この本に収められているのは、自分の世界でイキイキと活躍する男のコと、それを見つめる女のコの、可愛く切ない7通りの恋のお話。すべての女のコに捧げる恋の入門短篇集。