1990年10月発売
警視庁の敏腕刑事・水上夏樹は、一流企業会長の御曹子にしてカクテル作りが趣味という独身貴族。馬主となって、休暇のあいだ競馬に熱中していた彼のもとへ、同僚である川辺刑事の溺死の報が入った。拳銃密輸組織を内偵中だった川辺刑事の死に不審を抱いた水上は単身、事故現場の神戸へ飛ぶ。そこで彼は馬主仲間で、憧れの芦屋夫人に再会、恋に溺れそうになるのだった。だが、捜査をすすめるうちに、その美女と川辺との意外なつながりが浮かんで…。大好評カクテル刑事シリーズ第3弾、ロマンチックミステリー。
西暦2001年。中ソ間で勃発した悪夢のような熱核戦争は、地球上に存在した全ての国家機構を壊滅させた。次代の支配者として人々の上に君臨したのは、荒廃した地表から軌道上へ脱出した、複数の財閥を中心とする超国家企業“デウス”だった。彼らは地上から乏しい資源を吸い上げ、人工のパラダイスの中で享楽に耽っていた。残された人々は、頭上に羨望と憎しみのこもった視線を投げつつも、必死に生きていた。しかし、その〈神に見捨てられた地〉地球の上を、何ものにも束縛されず風のようにさすらう一人の男がいた-。近未来を舞台に一人の謎の男と軌道上の超国家企業の死闘を描く、SFハイパーアクションロマン。
妖艶な色香が薫る人妻教師、その全身から迸るメスの匂いは男たちの理性を失わせる媚薬にも似て。若々しい教え子の青い性に悶え、羊の皮を被った野獣の老練なテクニックに酔う。乾いた心と裏腹に、花陰は剛直を求めて甘い蜜を垂れ流す。その蜜の匂いにまた男たちが集い、猛々しい男根に貫かれた秘唇はわななく。
ベレッタM92F、信じられるのはお前だけ…。ヤクザの抗争から弁護士の両親を殺され、F-1のステアリングを拳銃に持ち代えて闇の世界に身を投じた沢村。7年後、一流のヒットマンとなっていた彼のもとに舞い込んだ新しい仕事は、なんと広域暴力団青竜会の大幹部を抹殺することであった。だが、依頼を果した沢村の命を何者かが狙う。次々と失われていく大切な思い出。死者たちの声に応え、いま男は復讐に立ち上がる。東映Vシネマシリーズ、好評のノベライゼーション第2弾。
南部藩の村井一族を破滅させ尾去沢銅山を奪い取った大蔵大臣。貧しい密猟者を屯田兵に射殺させて楽しんだ北海道長官。朝鮮女帝閔姫を斬殺した日本壮士団の黒幕。待合政治のパイオニヤ、横浜富貴楼の勤王芸者。批判する者は地獄の北海道監獄にたたき込み、大商人と結んだ高官たちの夜ごとの酒池肉林。昨日までの志士たちのこのあさましき転落の背景は?。乱舞する怪盗悪女。神出鬼没の鹿鳴館小僧。民権の志士の北海道監獄、死の脱走。明治維新とは、一体なんだったのか?。現代日本の病根の源流に肉迫-。
水不足で悩む太行山の村を舞台に、中国の農村共同体千年の歴史と、80年代に生じた大変動を時にリアリスティックに時に幻想的に描き、農村、ひいては中国自体の存在の意味と可能性を問う話題作の待望の完訳。
舞台は古代ローマの小さな学校。「カイウスはばがだ」と書字板に書かれた落書きが、思いもよらぬ事件を巻きおこし、生徒たちは探偵団をつくって、これに挑みます。-いつの時代も変わらない子どもたちの姿を楽しく、愉快に描いたドイツ児童文学の名作。
昭和初期の時代のうねりなかで、知的幻想趣味徹底した快楽主義的生活との交錯によって、特自のボヘミヤニズムを生みだし、夭折した作家牧野信一。その真骨頂をなす「吊篭と月光と」「ゼーロン」「バラルダ物語」など傑作短篇小説9篇を収録。
建築技師になる夢をかなえるため、ただひとりのおばをたずねてナポリに向かうみなし子の少年ジーノ。ところが、そのナポリにおばの姿はなく、ジーノは大都会をひとりきりでさまようことに…。苦しい環境や困難を乗りこえ、自分の道を開いてゆく少年を感動的に描いたオーストリアの児童文学。
東洋文化を研究している〈私〉のもとに、ある日一人の使いがやってくる。ヨーガの秘法に習熟したホーニヒベルガー博士の伝記を執筆中に亡くなった夫の代わりに、その仕事を完成してほしいというゼルレンディ夫人の申し出に興味をもった〈私〉は、遺された日記から驚くべき事実を発見する。「セランポーレの夜」併録。
『黒い時計の旅』は、フィリップ・K・ディックの『高い城の男』と並び称される“パラレル・ワールド”テーマの傑作である。1938年のウィーンのある夜、20世紀は一人の怪人物の手によってまっぷたつに引き裂かれる。歴史を切り裂いた怪物の名前は、バニング・ジェーンライト。アドルフ・ヒトラーのためにポルノグラフィーを書く男。そして、2つの世界を旅する男。彼の口から果てしない迷路のような物語が語られる。それは呪われた愛をめぐる“もうひとつの20世紀”の物語であった。平行してロシア系亡命者デーニア親子と謎めいた〈20世紀の見取図〉の物語、デーニアの息子マークの遍歴の物語が織り混ぜて物語られ、2つに切り裂かれた世界はふたたび重ね合わさって行く…。トマス・ピンチョン、ウィリアム・ギブスン等の作家たちから激賞されている現代アメリカ文学の新星、スティーヴ・エリクソンの代表作。
夢の世界に繰り返し現われる女性との奇妙な交流を描いた表題作「青い犬の目」、死に対する恐怖のイメージに満ちた、カフカ的悪夢の世界「三度目の諦め」、自らの美貌に苦しめられる女性の悲しい変身譚「エハは猫の中に」、レストランのカウンターで店主と娼婦の対話から成る、ヘミングウェイを思わせる小品「六時の女」、死者の側から眺めた日常の光景「誰かが薔薇を荒す」、『百年の孤独』の世界へと通じるマコンド物の1篇「マコンドに降る雨を見たイサベルの独白」他、全11篇を収録。
『くもの巣の小道』は『木のぼり男爵』、『マルコ・ポーロの見えない都市』等の奇想天外な現代小説の作者として知られる、イタロ・カルヴィーノの長篇代表作である。物語の舞台となるのは、第二次大戦中のドイツ占領下のイタリアの片田舎。娼婦の姉を持つ少年ピンは、姉の許に通うドイツ兵からピストルを盗み出したのがきっかけで、パルチザン部隊の一員となる。だが彼が加わったパルチザン部隊は、他の部隊からはみ出した奇妙な、愛すべき“落ちこぼれ”たちのふきだまりであった。自分が「病気だ」と主張してはばからないニヒリストの隊長ドリット、元船コックで“過激派”の食糧係マンチー、ガンマニアで元黒シャツ隊員のペッレ等々いずれ劣らぬクセ者たちとピンは“森の生活”を共にする。そして少年ピンの目の前で裏切り、待ち伏せ、報復、戦闘とパルチザンの“日常的光景”が次々と繰り広げられて行く…。本書はカルヴィーノの文学的原点であり、著者自身のレジスタンス体験から生みだされた、リリシズムに満たちネオ・レアリズム小説の傑作である。
関々原の役も家康方が勝利し、慶長8年ともなると、江戸市街は飛躍的な発展を逐げ変貌しようとしていたが、一方、大名家取潰しによる浪人が巷にあふれ、徳川幕府転覆を窺う不穏の動きを煽って…。家康の命を狙う魔性の女に翻弄される男たちの運命は…。波瀾の時代大長編。