1990年10月発売
失ったものは、たくさんある。たとえば気に入ってたサンダル。子供の時のクマのぬいぐるみ。そして、たくさんの言葉。うっとりする気分と、ときめきの混じった恋人の視線。2:02。それを見つけに、私は目覚める。
ゴールデン・スクロール名誉賞1982年、ロサンジェルスサターン賞1984年、ロサンジェルスグーテンベルグ特別賞1986年、パリテトラドラマ・ド・オロ賞1987年、ミラノ受賞。
忠臣蔵の「昭和定本」をいろどる人間模様の数々-。血をみてはならぬ殿中で、浅野内匠頭が吉良上野介めがけて腰の小刀を一閃したとき、赤穂藩五万三千石は音もなく崩れた。太守は即日切腹、城は明け渡し。三百の藩士とその家族の驚愕と困惑。それは突如として襲う直下型の激震にも似ていたが、強烈な余震はまた世人を驚倒させずにはおかなかった。四十七士の吉良邸討入りである。
刃傷事件から討入りまで、忠臣蔵はどこをとっても胸をうつドラマである。今でも我々の心を動かすのは、人生の縮図を形をかえて観るからだろう。振幅の激しかった大石内蔵助。また大石と共に立ち上がりつつも、消えてゆく同志。偽りの恋に情熱のすべてをかける女心の哀れさ。ラストシーンを飾る琴の爪の話ー。
「何が何でも慶喜の首を取る!」徹底討幕に燃える西郷隆盛をいかに説得するかが、敗色濃い幕府の命運を任された勝海舟の悩みであった。そんな折、海舟は、罷免された元勘定奉行小栗忠順が立てた幕府必勝の戦略書を入手した。これで西郷を牽制できる。海舟はほくそ笑んだ。一方、小栗とともに上州へ落ちた風戸俊索は、薩長軍迫る長岡、新潟そして会津へと転戦したが…。血塗られた激動の幕末を、爽やかに駆け抜けた青年剣士俊策の生きざまを描く『新幕末風雲録』完結編!
大手スーパー“関東ストアー”の本部統括室次長の三条景彦は、自らの若さと“男”を武器に、甘美で危険な賭けに出た。美人広報課長、社長令嬢、そして社長夫人…彼女らを性の虜とし、社長の椅子を狙うためであった…。大胆不敵な男を通してサラリーマンの飽くなき野望を描く傑作官能小説!
国際麻薬組織が市民多数を人質にし、政府が押収した六十億円のコカイン返還を要求してきた。返答期限は40時間後。窮地に陥った首相は極秘混成チーム外務省領事作戦部〈F2〉の出動を決断した。F2最大の武器は、ロッキードAC-130輸送機を制圧攻撃機に改造した通称《ブルドッグ》である。飛鳥亮機長ら曲者揃いの乗組員とF2の紅一点、大蔵省審理官歩巳麗子は、八丈島西方に浮かぶ敵の要塞島=緑魔島へ向けて飛び立つが、作戦はなぜか敵に察知されていた。果たして人質救出作戦は成攻するのか?待ち受ける傭兵集団の反撃は?軍事サスペンスの俊英が新境地を切り拓く白熱の冒険アクション!
「日本の名川探訪」で北上川を訪れた旅行作家茶屋次郎は、花巻温泉に宿を取ったが、翌朝目覚めて仰天した。彼の布団の中に血まみれの若い女性の刺殺死体があったのだ。当然、警察からは疑われ、茶屋は潔白を証明するべく独自で事件解明に乗り出したが、その直後、平泉に近い北上川から乳房を抉られた美女の溺死体が上がった。やがて二人の被害後は知己であったことが判明、さらに彼女らと愛人関係にあった中年男性が浮上したが、彼は一年前に何者かに殺されていた…。はたして真犯人は?茶屋は、なぜ事件に巻き込まれたのか?山岳ミステリーの旗手が、二重三重の謎を旅情豊かに描く書下ろし本格推理“川シリーズ”第二弾。
地下採石場跡の巨大な洞窟に、核シェルターの設備を造り上げた元カメラマン「モグラ」。“生きのびるための切符”を手に入れた三人の男女とモグラとの奇妙な共同生活が始まった。だが、洞窟に侵入者が現れた時、モグラの計画は崩れ始める。その上、便器に片足を吸い込まれ、身動きがとれなくなってしまったモグラはー。核時代の方舟に乗ることができる者は、誰なのか。現代文学の金字塔。