1990年11月発売
銃も棍棒もなしで、丸腰のまま保安官補をつとめる、一見物静かな男ルー・フォード。ウェスト・テキサスの小さな田舎町を牛耳る建設業者コンウェイを義兄の仇とねらう彼は、売春婦を利用し復讐をとげるが、そのために殺人をくり返すこととなり、心に巣食った病的な暴力癖をあらわにしていく…。たしかな人間観察眼によって描かれる「現実味のある異常者」の物語。“安物雑貨店のドストエフスキー”と称され、再評価の声の高いジム・トンプスンの幻の代表作、ついに登場!
CIA最高機密のオメガ・ファイルが漏洩し、持ち出し容疑者を追う精鋭が未知の部隊に撃破された。標的の捕捉依頼を受けた鬼道組はブリュッセルで謎の組織「ダブル・クロス」と対峙する。激闘のさなかNo.3の鏑木が姿を消し、野獣たちは史上最強の敵を前にかつてない苦境に追い込まれる。
どんなにカードが揃っていても、エースは1枚しか存在しない。その“頂点”を目指して、因縁の二人と目されるライバルたちのパワフルでスリリングな戦いのドラマが展開される。心優しき男たちの生きざまと、幾多の名勝負、名場面を熱くさめた観察眼によって浮き彫りにする。-本書に収められたヒューマンな作品群には外からは窺い知れない“裸の選手”たちが息づいている。-プロ野球ノンフィクション・ノベル。
便利屋・芳賀連太郎が帰って来た。刑事を辞めて便利屋稼業を始めた俺だったが、ろくな仕事の依頼がない。今回も懲りない俺は、美女の甘い罠にまんまと引っ掛かって、殺人の片棒まで担がされてしまった。セクシーな悪女が勢揃いする、大好評“便利屋シリーズ”第2弾。
漂泊の俳人山頭火を研究していた老作家が殺された。しかも、厳重に保管された遺稿の文字が消されて…。さらに、ただ一人遺稿の内容を知る女性編集者が失踪。遺稿に秘められた山頭火の謎とは何か?事件に疑問を持った女性編集者の同僚は、山頭火の足跡を追って、中国路へ向かう。文学史の謎と推理を融合した傑作。
女がさらわれた、助け出してくれ。かつて命を救われた戦友の頼みとあれば、コランタンには断われない。たとえ、女衒まがいのダチでも、しかも休暇中、管轄外の捜査活動でも。犯人は陸軍を追放された老将校、狂信的な愛国主義者、そして恐しい秘密を持った男。その秘密のために、キャバレー・ホステス、エピファラニーは誘拐され、地獄の責め苦にあえいでいた、人里はなれた第一次大戦当時の地下壕跡に閉じ込められて。いい仲になったとんでる人妻の情報からついに隠れ処をつきとめ、救出作戦開始。しかし、あわれ人質はダイナマイトをぐるぐる巻きにされた人間爆弾に。どうするコランタン。
吹雪のボストン。イメージ・コンサルタントのジルは、ようやくタクシーに乗れ、ほっとしていた。だが、渋滞の中、ジルと運転手のルークは、何げない言葉のやりとりから、険悪になっていた。やっと目的地に着き、代金を払おうとすると財布がない。困るジルにルークは、同窓会に出席する僕のためにイメージチェンジをしてくれないかと、提案した。もしだめなら、無銭乗車で警察に突き出すという。どうしよう…。ジルは仕方なく提案に従い、再会を約束するのだった。
2年前に夫を亡くしたソフィーは、幼い双子を抱え、ここモンタナで暮していた。ようやく双子が寝てくれた…。ほっとして外を見ると、見慣れぬ車が隣の屋敷に止まり、男が降り立った。あの家は、この前女主人が亡くなったところだ。見慣れない男が、いったい何の用なのだろう。男は、はじめて訪れる家に勝手がわからず助けを求めるように、こちらに近づいてくる。今、ベルを鳴らさないで!赤ちゃんが起きてしまうわ。ソフィーはあわててドアを開けた。と、そこに立っていたのは、グリーンの瞳に、肩までの長髪、引き締まった体の持ち主だった。
トリナの母レディー・シェリントンは、ジロンヌ伯爵と恋に落ち、結婚するという。ある日、トリナは、プロヴァンスにある伯爵の城に招待された。トリナは、その城の立派さに驚きながらも、実は、その維持のために莫大な費用がかかり金持ちの未亡人に貸すまでになっていることを知った。その未亡人は、伝説の「若返りの妙薬」が手に入るならば大金を積んでもかまわないと言っている。トリナは、自分で薬を研究し、彼女からお金を得ようと策略した。名案を思いつき、計画に着手したトリナだったが…。
時は1838年、インディアンのセミノール族は土地を追われようとしていた。部族の窮地を救いに来た金髪の男スローンは、その中に美しい白人の娘を見つけ、驚いた。〈ワイルド・ハニー〉と呼ばれるその娘は、白い肌を持ちながらセミノール・インディアンとしてフロリダの自然の中で暮らすチャラ。美しさの中にも、インディアンとしての気高さを秘めたチャラに強く惹かれていくスローン。だが、チャラは誰かに似ている-スローンがその答えを見い出したときから、チャラの運命は、思いもかけない方向へと導かれていった。
激動の幕末、京の都を震憾させた“誠”の組織を、風雲児藤堂平助を中心に据えて描く。元治元年(1864)秋中旬、下谷御徒町にある伊勢津藩32万4千石は藤堂家の江戸家老立花監物の屋敷を、家紋の「蔦」の紋付きの黒羽2重を着た若待が訪ねてきた。若待は、その名を藤堂平助といい、藤堂和泉守高猷が、側妄綾瀬に産ませた子であった。新選組の猛者平助は、隊内では“ご落胤”の渾名で通っていた素姓の正しい待であった。近藤勇に従って東帰していた平助は、「文武館」道場主の伊東甲子太郎や、その門下で円明二刀流の達人服部武雄らと会うことができた。やがて新選組に加入してきた伊東一派は?-京の隊内では、副長山南敬助と土方歳三との対立が、ことごとに表面化していった。
幻想は変幻自在。メイ・ウエスト、マリア・カラス、ハーポ・マルクスなどとベジャール自身の分身である「私」は、イメージの迷宮で交歓する。そしてベジャール作品の詩的展開が「夢の快楽」をもたらす…。ベジャールの自伝的幻想小説。
ホテトル、ポーカーゲーム、ノミ屋、韓国クラブ、そしてビル乗っ取り-。新宿の街の奥には、欲望にかかわるものは、何でもある。その只中を、才覚と腕力を武器にして「事業」のためにすさまじい闘いをつづける「在日」の若者2人。いったいどうしてこんな世界に入ったものか。そんな思いも優しい心もひとまず措いて、今夜も渡る夜の河。
イギリス情報部を退職したホランドは、目下、クラシック音楽のエージェントとして活躍している。ある日、何者かが彼を毒殺しようと図った。その後、彼は行く先々で命を狙われる。誰が?いったい何の目的で?謎を解く鍵は、六年前、任務を帯びて赴いたプラスにあるらしい。絢爛たる歌劇場やコンサート・ホールを背景に、凄愴なエスピオナージュを描く傑作シリーズ第二弾。
ロサンゼルス空港のギフトショップに勤める普通の女の子と、何の因果か石油王の三男坊として生まれてしまった不運な青年。あまりにかけ離れた世界に住むこの二人が、ある日空港で発覚した殺人未遂事件をきっかけに、悪党どもと壮絶な争奪戦を演じる羽目になる。めざすブツはただひとつー豚の貯金箱。女流サスペンスの名手がユーモアたっぷりに描く、とっておきの冒険物語。