1990年1月発売
中世、異端、「ヨハネの黙示録」、暗号、アリストテレース、博物誌、記号論、ミステリ…そして何より、読書のあらゆる楽しみが、ここにはある。全世界を熱狂させた、文学史上の事件ともいうべき問題の書。伊・ストレーガ賞、仏・メディシス賞受賞。
わたしの名はウィラ。スタンフォードを卒後、ロー・スクールに通う33歳。両親健在。ただし、いまだにヒッピーだけど。まあ、落ちこめばマリファナぐらいやる身としては、文句も言っていられない。こんなわたしがエディターを務める法律評論ーその編集長が、ある日突然殺されてしまった。一体なぜ?自然体のヒロイン、ウィラ・ジャンソン登場。
第2次世界大戦中、ベルリンから姿を消したルネッサンスの巨匠ボッティチェルリの名画。戦後30年をへて、その絵が突如フランクフルトに現れた。真贋を巡る追跡調査が進むなか、東独保安警察とウィーン美術史博物館が別個に所有権を主張、破産に瀕した英国の一流画商も交えて激烈な攻防を開始する。フランクフルト、ロンドン、ウィーン、そしてニューヨーク・バーナビーズー刻々舞台を移していくこの必死の争奪戦を制するのは誰か?
物語の生成そのものがテーマである表題作や『ある短篇のための日記』、不吉な回文が作中人物の悲惨な末路を暗示する『サタルサ』、グロテスクな青春の一挿話を回顧する『夜の学校』など。傑作長篇『石蹴り遊び』の作者として知られるアルゼンチンの異才・コルタサルが遺した最後の短篇集。
春まだ浅い東京・隅田川に、製薬会社重役の死体が浮かんだ。所轄署は初動捜査の結果、被害者が新幹線「ひかり」を降りて間もなく殺害されたと断定。容疑者としてイラストレーター・野々村をマークした。野々村の恋人・中原夕子は、彼のため、叔父の新聞記者・木下の協力をあおぎ、真犯人捜しを開始、やがて、それらしき人物を追いつめる。しかしその人物には鉄壁のアリバイがあった。-本格推理の醍醐味をたっぷり味わえる、書き下ろし長編ミステリーの傑作。
世紀末も差し迫ったある年の8月、サマーキャンプを楽しむ多くの男女の命が虫けらのように奪われた。被害者となった親睦団体「TCメンバーズ」のメンバーの中で、かろうじて生き残った2人の人間が語る「魔の山」双葉山での恐怖と謎に満ちた惨劇の真相を生々しく活写する衝撃のホラーサスペンス…。
万延元年3月、桜田門外にて時の大老井伊直弼(彦根藩主)水戸浪士一味により暗殺さる。ご主君の仇を報ずるには水戸藩主のみ首級を挙げる他に道はない。「いかなる手段であろうとも水戸斉昭を討て」との密命が彦根藩首脳から元側役伊吹源太郎に下った。殿かたみの短銃を胸に、憤死した供目付の妻加代を連れ鉄壁の守りを誇る水戸に源太郎は潜入する。
パキスタンの核科学者ナジムがひそかに西側へ接触してきた。英国情報部の長官ネアンは彼を操ってパキスタンの核兵器計画を探るべく、かつて部下だった美貌の女性サラを彼に接近させる。ナジムは徐々にサラに魅了されていき、一方サラも彼に心惹かれていった。が、ゴルバチョフ放逐を図るソ連軍幹部の密謀が渦く中、やがてサラたちは死の縁に追いやられた。『第3の裏切り』の俊英が現実の国際情勢をもとに描く会心のスパイ小説。
ときには弟と妹のため、ときには愛しき女のために、古流・流球拳法が唸る!炸裂する!L・Aのリトル・トーキョーで保安主任をつとめる「おれ」に、ある日、悲しい知らせがとどいた。旅行代理店につとめている弟が、植物人間にされてしまったというのだ。いったい誰の仕業なのか?何のために?「おれ」は見えない敵を追って、徒手空拳で立ち向かう決心をした…。シアトル、バンクーバー、香港などを舞台に、気鋭の著者が乾いた文体で男の情念を描く、ハードボイルドタッチの連作推理。
あたし、33歳、社長夫人。主人、あたしを他の男に抱かせて、その反応を見てみたいというヘンな欲望をもちはじめた。今夜も会社の新入社員を連れてきたー。酔って寝込んだ社員のフトンに忍び込んだあたし、ブリーフの前を大きくしているカレを見て、もうガマンできなくなって、ジュン、と。あたし、やっぱり好色なのかしら…。
本書は、15世紀から現代まで、ポーランドの詩人や作家23人の作品を気鋭の訳者陣がジャンルにとらわれず紹介。興味つきないポーランド文学の精神的土壌を理解するうえで恰好の書。
ついにラミジも待望の戦列艦の艦長となった。戦列艦ship of lineとは、戦列を組んで敵の戦列と砲戦をかわし、艦隊決戦に参加する備砲60門以上の大型艦のことである。
赤ん坊の誕生を間近にひかえた一家のほほえましいやりとり(「小さな弟」)。木箱で作った車で遠出をして帰りが遅くなり、両親にこっぴどく叱られる子供たちの話(「箱車」)。フランスの田舎町を舞台に、素朴な人情のふれあいと人生の深い味わいを流麗な文章で紡ぎ出した、郷愁を誘う32の掌篇。
どうぞ雨をふらせてくださいと、美しい雨姫さまのもとへ雨ごいに向かう少年と少女を抒情的に描いた「雨姫」、けちんぼの老人と猫とをめぐる怪奇な物語「ブーレマンの家」等、19世紀ドイツを代表する作家シュトルムが描いた珠玉の短編童話4編。
1986年夏のイギリスは、いたるところカットばやりだった。ランダム・ハウス英和辞典で50項目にものぼる複雑多岐な用法をもつ〈CUT〉という言葉を曲芸的に駆使し、しがない純文学作家がテレビの業界人たちに骨までしゃぶりつくされるさまを通して80年代のイギリス社会を諷刺した、超辛口のドタバタ喜劇。