1990年1月発売
「この封筒を預かったんだけど…」講師斡旋会社の副社長サブリーナは、ほっとして男に手を差し出した。よかった!間違えた封筒を取り返せて。それにしても、何と魅力的な男だろう。引き込まれそうな瞳に、官能的な唇。そう、大物ビジネスコンサルタントで大ベストセラーを出した全米一有名な男、ドルー・ダールトンだ!呆然とするサブリーナをドルーは夕食に誘ったが…。
ロンドンからニューヨークに向かう船の中で、ジェイムズはシャンパンを片手にひとときの孤独を満喫していた。ふと気がつくと、確かに閉めてあった窓があいているではないか。かすかな足音が聞こえてくる。もしかしたら、乗船以来さわぎになっている宝石どろぼうかもしれない。恐怖に凍りついてしまった頭を持ち上げると、そこには、みごとな金髪の妖精が立っていた。
「おまえを第五代ゴールストン公爵に嫁がせる!」父の話はオレサにとって青天のへきれきだった。莫大な財産を相読するはずのアシャースト家のひとり娘だからといっても結婚する相手は自分で決めたい-。そこで、父の決めた相手がどんな男性か自分の目で確かめることにしたオレサは、図書室の目録作りを依頼された司書の娘になりすまして公爵の屋敷にのりこんだが…。
スイスの名門女学校に通うコーデリアは、卒業を目前にしたある日、学友たちと森へ出かけた。メイドから不思議な伝説を聞かされたからだ。「狩猟月のころ、“ピルチャーの峰”に行くと、未来の夫に逢える」という-。はたして、ひとりの青年があらわれた。この人が、わたしの夫となる人なのだろうか…。やがて卒業した彼女は、イギリスへ帰る船上で、再びその青年と出逢う。胸をときめかせるコーデリアに、エドワードと名乗り再会を約したにもかかわらず、かれは2度と彼女の前に姿をあらわすことはなかった。かれは、20年も前にすでに死んだ男だったのだ。
イギリスの名門女学校の教師になったコーデリアは、その土地の領主ジェイソンに愛され、プロポーズを受けた。しかし、かれは数々のいまわしいスキャンダルにつつまれている男だ。心を惹かれながらも、コーデリアは、かれに近づくまいと決意するのだった。そんなおり、女学校では奇妙な事件があいついだ。生徒の突然の失跡、その妹の原因不明の病気…、真相をつきとめようとするコーデリアは、ついに驚くべき事実につき当たる。すべては、コーデリアが、かつて“狩猟月”のころ、森の中で出逢った不思議な出来事に端を発しているのだった。
中世、異端、「ヨハネの黙示録」、暗号、アリストテレース、博物誌、記号論、ミステリ…そして何より、読書のあらゆる楽しみが、ここにはある。全世界を熱狂させた、文学史上の事件ともいうべき問題の書。伊・ストレーガ賞、仏・メディシス賞受賞。
わたしの名はウィラ。スタンフォードを卒後、ロー・スクールに通う33歳。両親健在。ただし、いまだにヒッピーだけど。まあ、落ちこめばマリファナぐらいやる身としては、文句も言っていられない。こんなわたしがエディターを務める法律評論ーその編集長が、ある日突然殺されてしまった。一体なぜ?自然体のヒロイン、ウィラ・ジャンソン登場。
第2次世界大戦中、ベルリンから姿を消したルネッサンスの巨匠ボッティチェルリの名画。戦後30年をへて、その絵が突如フランクフルトに現れた。真贋を巡る追跡調査が進むなか、東独保安警察とウィーン美術史博物館が別個に所有権を主張、破産に瀕した英国の一流画商も交えて激烈な攻防を開始する。フランクフルト、ロンドン、ウィーン、そしてニューヨーク・バーナビーズー刻々舞台を移していくこの必死の争奪戦を制するのは誰か?
物語の生成そのものがテーマである表題作や『ある短篇のための日記』、不吉な回文が作中人物の悲惨な末路を暗示する『サタルサ』、グロテスクな青春の一挿話を回顧する『夜の学校』など。傑作長篇『石蹴り遊び』の作者として知られるアルゼンチンの異才・コルタサルが遺した最後の短篇集。
春まだ浅い東京・隅田川に、製薬会社重役の死体が浮かんだ。所轄署は初動捜査の結果、被害者が新幹線「ひかり」を降りて間もなく殺害されたと断定。容疑者としてイラストレーター・野々村をマークした。野々村の恋人・中原夕子は、彼のため、叔父の新聞記者・木下の協力をあおぎ、真犯人捜しを開始、やがて、それらしき人物を追いつめる。しかしその人物には鉄壁のアリバイがあった。-本格推理の醍醐味をたっぷり味わえる、書き下ろし長編ミステリーの傑作。
世紀末も差し迫ったある年の8月、サマーキャンプを楽しむ多くの男女の命が虫けらのように奪われた。被害者となった親睦団体「TCメンバーズ」のメンバーの中で、かろうじて生き残った2人の人間が語る「魔の山」双葉山での恐怖と謎に満ちた惨劇の真相を生々しく活写する衝撃のホラーサスペンス…。
万延元年3月、桜田門外にて時の大老井伊直弼(彦根藩主)水戸浪士一味により暗殺さる。ご主君の仇を報ずるには水戸藩主のみ首級を挙げる他に道はない。「いかなる手段であろうとも水戸斉昭を討て」との密命が彦根藩首脳から元側役伊吹源太郎に下った。殿かたみの短銃を胸に、憤死した供目付の妻加代を連れ鉄壁の守りを誇る水戸に源太郎は潜入する。
パキスタンの核科学者ナジムがひそかに西側へ接触してきた。英国情報部の長官ネアンは彼を操ってパキスタンの核兵器計画を探るべく、かつて部下だった美貌の女性サラを彼に接近させる。ナジムは徐々にサラに魅了されていき、一方サラも彼に心惹かれていった。が、ゴルバチョフ放逐を図るソ連軍幹部の密謀が渦く中、やがてサラたちは死の縁に追いやられた。『第3の裏切り』の俊英が現実の国際情勢をもとに描く会心のスパイ小説。
ときには弟と妹のため、ときには愛しき女のために、古流・流球拳法が唸る!炸裂する!L・Aのリトル・トーキョーで保安主任をつとめる「おれ」に、ある日、悲しい知らせがとどいた。旅行代理店につとめている弟が、植物人間にされてしまったというのだ。いったい誰の仕業なのか?何のために?「おれ」は見えない敵を追って、徒手空拳で立ち向かう決心をした…。シアトル、バンクーバー、香港などを舞台に、気鋭の著者が乾いた文体で男の情念を描く、ハードボイルドタッチの連作推理。