1990年3月発売
主人公は、ファッション通のカッタくんと食通のマケタくん。いやそれとも、あの不思議魅力なバアさんか?時事性に富んだ〔セックス〕あり、突飛で異様な〔ミステリー〕あり、そして、不明の〔涙〕あり。
あれから10年。だけど時は、まさに今。世界7大都市を舞台に、カッタくんとマケタくんがジャパニーズする。謎のブラックバードをめぐって、意地と名誉・不倫・駆け落ち・中年の純愛…浪花節だよ小説は。
「鬼才ガルシン」の名をあまねく世に知らしめた処女作「四日間」をはじめ、自らの狂気の体験を象徴美にまで高めた名作「赤い花」、静かなメルヘンタッチの「がま蛙とばらの花」など、文庫初収録の4篇を含む7篇を精選。〈狂疾〉という十字架を終生背負い続けた悲劇の作家が、「血の一滴一滴」によって書き綴った代表的短篇集。
みなし子の少年チーノと、りこうなろばのグリゼラは大の仲よし。あるときグリゼラが、貧しいチーノをなんとかしてお金持ちにしてやろうと思いたったことから、大変な冒険がはじまります。-勇気と友情の大切さを生涯のテーマとして描きつづけた作家デンネボルクが、ろばと少年に託して贈る、愛すべき楽しい物語。
大天文学者オマル・ハイヤームが11世紀に遺し『ルバイヤート』自筆本-暗殺者教団の都サマルカンド炎上と共に失われた筈の世界唯一冊の希覯書が6世紀後忽然と現れ、ペルシア現代史の激動の中で、大西洋の底に永遠に沈むまでの年月に見た歴史ドラマとは?
武士としての意地、近親の情、朋友への義理…その恨みある相手への感慨もさまざまではあるが、この無念さを糧として、生命を賭けて仇敵を討ち果し、報復を遂げなければ…。江戸幕藩体制下に最も多くなされたという“仇討”のなかに、人間の業の激しさを探り、人生の哀歓を描き切る傑作時代小説。
腰の紐を解かれているので、浴衣の前が割れ、剥き出しの秘所は淫らな刺激でとろっとした。亡くなった夫によく似たその男が、彼女の寝ている布団にゆっくりと入ってきて…。夫とはよく似ていても、別人であることを、ふとした動作で思い知らされる。若き未亡人の匂うような肢体が、今日も激しく疼いて官能の一夜。
後醍醐の切なるご催促に、楠木正成は重い腰をもち上げた。水分の館から一族5百人の運命を賭けてー。すでに主上は笠置落ちの御身であった。また正成も、2万の大軍が取り囲む赤坂城に孤立し、早くも前途は多難。一方、正成とはおよそ対照的なばさら大名・佐々木道誉は幽閉の後醍醐に近づき、美姫といばらの鞭で帝の御心を自由に操縦しようとする。かかる魔像こそ、本書の象徴といえよう。
元弘3年(1333年)は、また正慶2年でもあった。敵味方によって年号が違うのも異常なら、後醍醐帝が隠岐に配流という現実も、尋常の世とはいえない。眇たる小島は風涛激化、俄然、政争の焦点となった。不死鳥の如き楠木正成は、またも天嶮の千早城に拠って、5万の軍勢を金縛りに悩ましつづけている。一方、去就を注目される足利高氏は、一族四千騎を率いて、不気味な西上を開始する。
伊豆の豪族北条時政の娘に生まれ、流人源頼朝に遅い恋をした政子。やがて夫は平家への反旗をあげる。源平の合線、鎌倉幕府開設ー御台所と呼ばれるようになっても、政子は己の愛憎の深さに思い悩むひとりの女だった。歴史の激流にもまれつつ乱世を生きぬいた女の人生の哀歓を描いた、永井文学の代表的歴史長篇。