1990年3月発売
繊細で心やさしい童話作家の私。この純粋無垢で純情な私が、結婚した娘に送金するために、悪寒と戦慄、恐怖と吐気に七転八倒しながら、バイオレンス小説を書きはじめた。家族のために死ぬ思いで苦労している私を、優しく美しく、知性もある女房が殺そうとしている。次々と襲う危険な罠、恐怖体験。私の妄想か、錯覚か?-ちっとも怖くない大恐怖ユーモア小説。
航空機がテロの標的としてあまりに危険になったため、米政府は地下にトンネルを巡らし弾丸列車を通す計画を立てた。最大の難所、ミシガン湖底の工事が、もう完成間近だった。しかしコンピューターの予測する地層が、実際と全く違う。無理な工期の短縮もあって、現場は大混乱だった。案の定、爆発事故が続き、奇蹟的に生き残った人々は、深さ400フィートの湖底に閉じ込められた…。
学術論文をまとめるため渡英したドロレス・デュアラーは、ある日、やはり単身でロンドンに赴任していた商社副社長ヴィクター・モリセイと出会い、一夜をともにする。徹底的な女権拡張論者、自然保護論者であるドロレス、男性主導社会の論理に固執し、常に勝者であることを目指すヴィクターーまったく相容れぬはずの男と女が、運命の糸に引きずられるように恋に陥ちた。
ドロレスは男性の支配する社会、生産性のみが重視される社会への憤りを訴え、ヴィクターはそれを認めたうえで彼女の潔癖さ、偏狭さを指摘した。ふたりは互いにおのれの信念を譲らず、会うたびに反発し、だが同時に強く引かれあう。-他人を傷つけながら生きていかざるをえない男と、他人の心の傷みに涙を流す女。理性と感性がぎりぎりまでせめぎあう愛の極限を精緻に描く長編。
「ハハ シンゾウホッサ」の電報で急遽帰国した息子のわたしを待っていたのは、呆然としている父親だった。父は身の回りのことすべてを母に頼って暮してきた。車の運転も、着替えも、電話さえ一人で掛けたことがない。わたしは父を自立させる計画を立てたが老い、死の恐怖、世代断絶への焦燥など、誰も避けて通れない重い主題と真正面から取り組む。
父は簡単な料理を作れるまでになった。退院した母を看ながらの毎日も、順調のように思われた。しかし、身体の不調を訴えて検査入院した父が、病気への恐怖から、突然痴呆症になる。病院の処置に憤ったわたしは強引に父を帰宅させるが、病人との生活は想像以上に厳しかった。-現代社会が克服しなければならない大きな問題を捉え、家族の姿と生きることの意味を問う、愛と感動のドラマ。
もし、モリエールやモーツアルトがぼくのなかにいるとしたら、学校に殺されてしまう!16歳のある日、ぼくは寄宿舎を脱走、首尾よく戻ったパリで恋に落ちる。彼女は夫のいる女性。初めてのメイク・ラブ、彼女の腕の中で眠る日々。でももちろん彼女の夫も、パパも黙っているわけはない…。ヌーヴォー・ヌーヴォー・ロマンの少年の物語。
儀式の夜、侍女は仰向けにされて司令官を待った。その精液を受け、妊娠を待った。ただそれだけのために、男に仕えるために。そして、なにもかもが女性たちから奪われた。自由、それはいったい、どんな味がしたのだろう-。恋愛も読書も、仕事や家族やお喋りも、自由の思い出は、すべて夜の眠りの中にしまいこまれた。だが、ヒロインに、小さな希望、壁に囲まれた町から脱出する微かな兆しが…。数々の文学賞に輝いた、衝撃の全米ベストセラー待望の完全翻訳版。
細胞手術という世界初の手法で執刀された肝臓移植手術の経過報告に、永田町は耳をそばだてていた。肝機能障害を噂される首相の緊急入院。全閣僚の寿命を1ケ月単位で予測したヒポテーブルなる怪文書。先端医学情報が国政を揺さぶった6ケ月を描く、驚異の医学サスペンス
個であることを求める人々にとって〈家族〉とは…。古びた洋館榠〓荘。そこにはたっぷりの解放感と、互いに侵し合わない〈個独〉の時間がある。血の繋がりのない住人がゆるやかに結ばれる〈共感家族〉。ねばならないの枠の外側に生きる飛べない鳥たちの愛の物語。
雨の日の月曜日。それだけでいいかげん気が滅入ってくるというのに、ずぶぬれになって帰宅してみれば、暖炉の前には同僚のライザが死体になってころがってるなんて!英語教師のアマンダには、自分にこんなことが起きるとは信じられなかった。それに、捜査にあたることになった若手刑事のマッケンジーは、どうやらアマンダを容疑者ナンバーワンとみているらしい。このちょっぴり生意気な刑事の鼻を明かしてやろうと、アマンダはライザの身辺調査を開始した。女優としても活躍し、ちかく地元フィラデルフィアの名士と結婚することになっていたライザ。でも、殺された日の朝に会ったライザは、なにか悩みごとがあるみたいだった。だが、それを探りだす前に、アマンダは第二の死体を発見するはめに…。事件にまきこまれた美人教師が始めたちょっと危険な探偵ごっこ-恋と推理のロマンティック・サスペンス。アンソニー賞新人賞受賞。
ソニイはけちな小悪党で、麻薬売買でぱくられ、弁護を依頼してきた男だった。だから、そのソニイが殺されたと聞いても、どうせくだらないもめごとが原因だろうと、弁護士のビーノはさほど驚かなかった。ただ一つだけ気になることがあった。ソニイの死体を発見したのがFBIだったのである。ビーノは事件の背景を調べ始めた。そのころ、ソニイを殺した二人組の男は、ビーノの生命を狙ってダラスの街を俳徊していた。知らぬまに死の標的とされていたビーノがあばきだした、一見単純な麻薬密売人殺害事件の裏に隠されていた真相とは?ダラス政界の巨悪にひとり立ち向かう弁護士の姿を、裏の世界から生々しい筆致で描くクライム・ノヴェル。
射手座区にある恒星ルクバトの第3惑星パーンー緑ゆたかなこの星に、いま、地球から三隻の植民船が飛来した。FSP(生命既存惑星連邦)の法にのっとりこの地に理想の植民地を建設するのが目的だ。ヨコハマ号の船長ポール・ベンデンの指揮の下、処女地パーンにふさわしい、科学技術にたよらない共同社会を築くための政策がつぎつぎと実行にうつされた。地球から冷凍輸送してきた植物や家畜もパーンの自然環境に適応し、人びとは広大な土地を自由に開拓していく。植民地として、パーンにはなにひとつ欠点がないように思われたのだが…。
スペースホームの考古学者ホワイトディンプルと、土星研究ステーション出身の天才少年バディルの活躍なよって発見された異星人の遺物。そこに書かれたメッセージの解読結果は、驚嘆すべきものだった。人類へのプレゼントとして、太陽から850億キロの距離に恒星船が置かれているというのだ。その船をつかえば、謎に包まれた異星人〈ヘキシーズ〉の母星に到達し、進歩したテクノロジーを人類のものにすることも夢ではなくなる。かくして本格的な調査が開始されたが?より壮大なスケールで気鋭が放つファン待望の『サターン・デッドヒート』続篇。
発見された〈ヘキシーズ〉の宇宙船は、全長860メートルにもおよぶ巨大なものだった。同時に見つかった大量のデータから、この船で彼らの母星に行けることが裏打ちされた。ただちに太陽系精鋭の科学者たちからなる遠征隊が組織され、人類史上かつてない旅が開始された。船長ホワイトディンプルの指揮のもと、幾多の危機を切り抜けて、ようやくヘキシー星にたどりついた地球人一行を待っていたのは、奇妙きわまる異星人たちとあらゆる想像を絶した不可解な文明の姿だった…。新星キャリンが、雄渾の筆致で描きあげた話題のハードSF巨篇登場。