1990年5月発売
1973年度西海北高校3年6組。野呂光。あの夏、ぼくは江川卓との甲子園対決を真剣に夢みる、17歳の野球少年だった。だが、突然の父の死によって、他の仲間よりちょっと早い“人生の決断”を迫られたのだ。つまりぼくは大学進学を締め居酒屋の二代目を継ぐことになったのだ。グラウンドの汗と涙、クラスメイトとのあつき友情、脳ときめかせた淡い恋…。13年前の幸せな日々を描く青春長編小説。
銀座ホステスの理沙は歌手の修と同棲している。ところが修は理沙と別れたがっている。修がやっと売れ始めてきたからだ。理沙が五年も面倒をみてきたというのに。それに修は所属プロの女社長と関係があるらしい。理沙は修と心中することで清算を図るが…(表題作)。ほかにセックスに好奇心をもちながらも、なかなかその領域に踏みこめない若い女性の心理のヒダを描く『トロピカルブルーの伝説』など全八篇を収録。
恋の風が吹はきじめ愛の声が聴こえると人はとても優しくなれる。ロマンのそよ風ただよう街中に躍り出た男女。きまぐれな天使がくれた素敵なプレゼント。バリエーション豊かな“すがすがしい虚構”のなかに現実世界への光を投げかける新しい挑戦。
この物語は、短い夏休みと、その後に起きた事件についてのものである。一週間ばかり夏の休暇をとった私は、アメリカの田舎町に渡り、学生時代の知人エリックと、彼の若き叔母であり、マリリン・モンローのそっくりさん女優でもあるジェーン・ハインと過ごした。それは予想外の出来事の連続で、刺激的なものだった。そして、くつろいだ休日だった。気鋭のスリリングな野心作。
調香師の有川が強姦財で告訴された。彼には、犯行に及んではいない絶対的な理由があるのだが、男としては、どうしてもそれを喋べることでできない。ある手術を受けて性の快楽を得た代償に、鼻の感覚を失ってしまったフランスの天才調香師ビサナの末後が、彼の脳裏にやきついていたのだ…。表題作ほか、今陽子主演で映画化された「蕾の眺め」など、性に翻弄される人々を描いた5編。
血のつながりはない養父・裕平との愛に翻弄される誓子は、不治の病に冒された母・やよいの過去の秘密を知って立ち竦む。そして、やよいの死を契機にあらたに解きあかされていく、あまりにも意外な真実…。家族という強い絆に結ばれているがゆえに、重く錯綜する三人それぞれの愛のかたち。男と女、生者と死者、過去と現在、そして、意識と記憶がしずかに交錯する異色の長編小説。
非業の最期をとげた若き枢機卿チェーザレにとって生きる意味は何だったのか。1492年、彼の父は法王に即位し、ボルジア家の人々は、若く美しく、情熱的であり、その無邪気な残虐行為と途方もない野心は、体内を流れる熱い血への服従であった。ボルジア一族の愛欲と野望と権謀術数を背景に、イタリア王たる夢を抱く野心家チェーザレと彼の妹ルクレツィアとの背徳の「愛と死」を描く。
ソ連の対潜ヘリ空母ハリコフに新兵器ウルトラ・ソナーが装備された。その性能を探るため、英国の最新鋭原子力潜水艦サターンはバレンツ海のソ連海軍演習海域へ潜入する。だがその行動はすでに察知され、ソ連はハリコフの他原潜四隻をも配置し、サターンを捕獲すべく待ち構えていた。サターン艦長が離脱を決意したとき、ソ連の対潜ロケットの衝撃がサターンの艦体を揺るがす…。
薩摩の密貿易で幕府の財政が揺らぐ。幕府の独占すべき北国の上質海産物を、薩摩を経て中国へ流しているものは誰か-密命を帯びた幕府隠密の捜査は、長崎から北陸、松前へと伸びる。幕末の日本海を舞台に、壮大な規模で展開する、時代冒険小説。
九州は大分、大友宗麟の足元に、南蛮医アルメイダの建てた聖母の病院。キリシタンに改宗してしまった師と同僚を連れ戻しに来た、若き漢方医・東野左中が見たものは-。驚異の南蛮医術、バテレンと仏門派の宗教争い、そして恋。若き医師の苦闘と成長の物語。
漂着した南の島での生活。自然の試練にさらされ、自然と一体化する至福の感情。それは、まるで地上を離れて高い空の上の成層圏で暮らすようなものだった。暑い、さわやかな成層圏。やがて、夢のむこうへの新しい出発が訪れるー青年の脱文明、孤絶の生活への無意識の願望を美しい小説に描き上げた長篇デビュー作。
小道具部屋は惨憺たる有様だった。棚が落ち、そこらじゅうに小道具が散らばっているのだ。と、その時、妙なものが目に飛びこんできた。急いでがらくたをどけてみると、下からは新進女優シッピーの死体が…。ずっこけ警官役のパリスが死体を発見するまえから、名探偵ブレイドを主人公とするテレビ・ドラマの撮影は暗礁にのりあげていた。いちばんの原因は、名探偵の娘役のシッピーだった。主役のテレビ・スターは、こんな大根女優が相手では嫌だとへそを曲げるし、原作者の老女流作家とその妹は、シッピーが原作のイメージとちがうと文句をいうしで、彼女の死は番組にとっては天の恵みのようなものだった。だが、誰にとってもこんなに都合のいい事故などありうるだろうか?撮影が順調に進みだしたのを尻目に、パリスはグラス片手に犯人探しにのりだすが…!テレビ界の内幕を才気溢れる筆致で描くユーモア本格。
パーリアンに対してゲリラ活動を続けているグラドたちはパニックに陥った。その本拠惑星ボウルタト上を移動しながらハイパー・シグナルを発する謎の送信源が、パーリアンを呼び寄せようとしているのだ。捕虜にされているテラナーたちは、スパイの嫌疑をかけられて死刑を宣告されてしまった。かれらを救い、グラドと同盟を結ぶためには、送信機を操る敵を発見し、撃滅しなければならない。ローダンたちは、場所を変えつづける送信源を見つけようと行動を開始するが。
森がどんどん消滅していくー植民惑星ニュー・タヒチでは、地球に木材を輸出するため、大規模な伐採作業が進められていた。利益優先の乱開発で、惑星の生態系は崩壊寸前。森を追われた原住種族アスシー人は、ついに地球人に牙をむいた!だが、圧倒的な軍事力を誇る地球人に、アスシー人の大集団も歯がたたない…二つの知的種族とその文明の衝突が生む悲劇を、神話的なモチーフをたくみに用いて描きあげるヒューゴー賞受賞の表題作ほか、辺境の植民惑星に生まれた一人の多感な少女の成長を静謐なタッチで綴る佳品「アオサギの眼」を併録。
天文学者が驚くべき観測を報告したー。それは巨大な流星体群が地球に接近しているというものだった。軌道計算によれば、衝突は避けようがない。インド神話の破壊神からシヴァと名づけられたこの天体には、さらに厄介な性質が発見された。流星群の核をなす巨大隕石は多量の鉄を含んだ硬質の球だったのだ。科学者たちはミサイル攻撃によるシヴァの破壊を検討したが、不可能と判明。ならば、せめて核爆弾で軌道を変えることはできないか?高度な技術を要する作戦遂行のため、選りすぐりの宇宙飛行士によるプロジェクト・チームが編成された…。