1990年5月発売
核廃棄物の処理に革命を起こす新物質シンロックーR。その安全性を調査するため、国際原子力機関の視察団が南アフリカの砂漠を訪れていた。もし視察団が安全と認めれば、自国内に廃棄物貯蔵所を計画中の中国は莫大な損害をこうむる。窮地に立った同国は、新物質の発明者ケプラー博士を買収すべく画策する一方、国際的テロリスト、ルドゥーらに爆弾テロを指令する。だが、視察団に随行中のフランス保安要員が陰諜の存在を察知。荒涼たる砂漠は一転、熱烈な暗闘の場と化してゆく!核廃棄物という今日的な問題を絡めて描く力作冒険サスペンス。
シラは生きていた。秘密機関〈ディヴィジョン〉の腕利きの工作員の彼は、ナチの残党によって殺されたかに見えた。が、奇跡的に一命を取りとめ、顔も声も変えた別人として甦った。第一線に再び立つため、孤島で訓練を積んでいたシラは、ある日上司に呼び出される。そして、二人の科学者を抹殺する任務を与えられるが…。彼の前にやがて現われる怖るべき陰謀とは?大学の準教授となった弟のリーヴィ、その美しい妻メリッサ、シラと対決する強力な敵たちー多彩な人物を絡め、洒落たタッチで描くサスペンス小説の傑作『マラソン・マン』の続篇。
1940年夏、英国占領を目論むドイツと英国空軍は激しい航空戦を展開していた。その〈英国の戦い〉のさなか、ハリケーン戦闘機を駆る一パイロットの目から空中戦の様相を刻明に描く「アダージオ」をはじめ、ヴェトナムで道に迷った二人のアメリカ兵が辿る奇妙な運命「コーラの飲める基地」、冷徹な撃墜王の姿を通して第一次大戦の空中戦の苛酷な現実を描く「ヴィンターの朝」、戦後再会した大佐と伍長がそれぞれ回想する一台のシャーマン戦車をめぐるエピソード「べつの二人だったに違いない」など、巨匠が13の短篇に戦争の真実を映しだす傑作集。
絶世の美女ミッシェルが黒こげの全裸死体となって発見された。両手足を針金で縛られ、焼死させられたのだった。その前日彼女は、全身アザだらけの姿でホープの事務所を訪れていた。自分に暴力をふるう夫ジョージを告訴したいというのだが、彼は家を飛び出し行方不明になっていた…。やがて逮捕されたジョージは野獣のごとき大男の黒人だった。醜悪ながら真撃な表情で、涙ながらに無実を訴えるその姿に、ホープは彼の弁護を引き受ける決心をするが…。古典的寓話を大胆な設定で現代に甦らせ、男女のゆがんだ愛情を鋭く描き出すシリーズ第3弾。
マフィアの幹部トニー・パリージは、ラス・ヴェガスを裏から牛耳り、甘い汁を吸っていた。その手口は恐喝で、脅しに応じなかった者がすでに何人も殺されている。見るに見かねたFBI捜査官のノヴァクはトニーを有罪にする切り札として密告屋に法廷で証言させようともくろんだが、その大事な証人も爆殺されてしまった。一方、この恐喝にかけては名人芸の持ち主、元警官のサンズが刑務所から出てきた。しぶといマフィア、凄腕の捜査官、そして恐喝に明け暮れる悪徳警官。-頭と度胸の駆け引きと三つどもえの闘いをスリリングな筆致で描く傑作。
闇に葬られたイタリア政府要人案殺から十年ーテロ組織〈赤い旅団〉メンバーの逮捕を糸口に、辣腕検事補バルディは灰色の事件の解明に乗り出した。が、捜査に対する圧力は思わぬところから…。全世界の政界を震撼させたイタリア元首相アルド・モロ暗殺事件に材をとり、気鋭の英国女流作家とイタリアのジャーナリストが手を組んで描く戦慄の政治スリラー。
70年代のミーイズム・80年代のメディアイズムの涯てに漂う孤独な男と女。L.A.在住の気鋭の新人作家加藤祐二が、限りなく透明な文章で綴る90年代のラヴ・ストーリー。90年代の生と性。
『長いお別れ』で出会った大富豪の娘リンダ・ローリングと結婚した、私立探偵フィリップ・マーロウは、高級リゾート・タウン、プードル・スプリングスの豪華な新居に落ち着くことになった。だが探偵稼業をやめたわけではない。新妻の財力に頼らず、町のはずれに新しい事務所をひらくと、噂をききつけたのか、早速、怪しげな依頼人がやってきた。賭けの借金を払わずに姿を消した男を探してほしい、とカジノ経営者のリピイという客は頼み込んだ。看板を掲げている以上、どんな依頼も引き受けざるをえない。そして仕事をはじめると、事は意外な様相をみせるのだった…。レイモンド・チャンドラーの未完の遺作を、当代随一の人気ハードボイルド作家ロバート・B・パーカーが師のあとを継いで30年ぶりに完成させた超話題作。
ボストンの北方、美しい海辺の町。天文学者の父親、カメラマンの母親、子供2人で暮すファレル家を、ある日突然悪夢が襲った。5年前の輸血で原因で、娘のアマンダがエイズを発症したのだ。驚き、怒り、悲しむ家族。感染を恐れる隣人たち。パニックに陥る学校。その中で、アマンダは女子体操の選手として全力をつくそうとする。ジョーゼフ・ヘラー、カート・ヴォネガットらがその才能の感嘆した作家が清冽な美しい文体で描きあげる、感動の長篇。
おれの名は松平利春。不自然な死に方をしたホトケさんを解剖し、検死する監察医だ。口の悪い奴は、松平死後守なんぞと呼びやがる。だが、まぁ、こうもおれの出かけた先で事件が起きりゃ、それもいたしかたないか…。今回の事件は、いままで経験したなかでも1、2を争う凄惨なものだ。とにかく次々と人が死ぬ。まず伊豆スカイラインで、一服盛られた運転手のバスが衝突事故を起こして20人以上が死んだ。さらに老女が首を紋められ、若い娘は転落死…。さすがのおれも悲鳴をあげたくなるような、とんでもない展開になってきた。
その日、成田空港に到着した1人のアメリカ人を待ち受けていたのは、私服警官と各国の諜報関係者たちであった。男の名はジョン・カミングス-元グリーンベレーの殺しのプロである。大使館の車で東京に向った彼は、後を退けてくる覆面パトカーにM26手榴弾を放った。12名の警官が負傷。5台のパトカーが炎上した。日米経済戦争は、陰の闘いへと突入していた。日本経済を支える社会の根幹を崩壊させるため、CIAから送りこまれた3人のプロに抗すべく選ばれた犬神拳の継承者・秋山隆幸の闘いは始まった。
応仁の乱が巻きおこした暴風雨は、京の都ばかりでなく、東国の地にも鋭い破壊の爪痕を残していた。もののふの故郷・鎌倉は無政府化し、博奕や麻薬や売春を取りしきる“バサラ者”が跋扈している。鎌倉入りした堀辺牙王丸は、バサラ者たちに凌辱されている娘たちを助けた腕を、堀越公方に買われ「坏仁崋」の探索を頼まれた。「坏仁崋」は、源頼朝の権力奪取と深い秘密の関係があったらしい。それは一体、何であるのか?牙王丸と闇の組織との血みどろの闘いが始まる…。新鋭のスーパー時代伝奇アクション&エロス。
一乗達彦、二十八歳。グルービー・トイズ商会営業部長と肩書きは厳めしいが、実は大人のオモチャのセールスマン。社員三人、経営は苦しく、ヒット商品開発と女体の研究に、日夜粉骨砕身の努力を怠らない。ある日、新幹線で出会った謎の美女・竜子に濃厚なサービスを受け感激、やがて竜子の斡旋で有閑夫人たちの南紀ツアー、金髪美人とのデスマッチも実現し、営業成績も驚異的に伸びたが…。長篇エロチカ。
上州は国定村の忠治、きっぷの良さとクソ度胸で売り出し中だ。その魅力に引き寄せられるように、日光の円蔵、血桜のお竜、無明流の剣客大久保一角といった連中が集まってきた。板割の浅太郎、イカリコミの臼だの、礼儀作法なんぞはわきまえないが、男の意地と死ぬことなら、よーくご存知の、禿鷹のような荒くれ男たちが、忠治を赤城一円の大親分にしようと、まず目をつけたのが島村の伊三郎の賭場だった…。
島村の伊三郎をたたっ切って、関八州出役と目明しに追われ、天下に身の置き所がなくなった忠治一家だが、男どもの威勢は天をつかんばかり。折から世の中は饑饉、やせ細る民百姓の身代りとなって、そのウップンをぶちまけてやる。という忠治の啖呵に奮し起った子分たち。分限者の米倉だろうとお上の米だろうと、片っ端から奪い取って民百姓に分け与えるが、忠治一家に捕り手が迫る…。仁侠時代小説完結篇。
おれ、ニック・スレードがファーガスンに頼まれた仕事は、二次大戦の英雄リー・タン・ウエイ将軍を故国パンゴクに送り届けることだった。パンゴク共産政権打倒がその目的なのだ。しかし、将軍の娘パトリシア・リーの妨害、ファーガスンの不審な行動などから、何かおかしな陰謀に巻きこまれかけているのをおれは感じはじめた…。策謀渦巻く南国の島で、精霊に守られると伝えられる秘宝をめぐっての冒険大活劇。