1990年8月発売
まだ地平線の果ての見えない笑街道。作者ともども、花麿、じてんしゃ、デメンチアの苦闘も続きます。「笑いは生理的には、人の心身を『緩和』『解放』『無防備』状態となさしめるものであるが、『異常』に接したとき、それと彼における『通常』との距離や落差を計り…」なんて哲学的な思索もあったりして。万人を笑わせる“究極の笑い”は見つかったか?読者諸兄姉の賢明なる洞察では?巨篇意欲作完結。
親友エブに新しい恋人ができた。〈私〉も老いへのゆとりが生まれ、そろそろ探偵稼業におさらばをきめこともうと考えていた。が、その〈私〉を襲う謎の男の出現。あろうことか、人里離れた山奥の小屋に独り拉致された!男が残していったのは、13週間分の食糧と足かせ。絶体絶命の大ピンチに〈私〉は必死の脱出を試みるが、足かせは重く、確実に〈私〉を山小屋に縛りつける。“名無しの探偵”シリーズ最大の危機到来。
シャーロック・ホームズは生みの親コナン・ドイルの手によっていかに創造されたか?それはかならずしも、ドイルの本意によって生み出された正統の嫡子ではなかった…。激動の時代ヴィクトリア朝の社会・風俗や時代背景をたんねんに描写しながら、ドイルの先祖、親兄弟、そして恋愛・結婚生活などの綿密な調査の上にたってドイルの生涯を描き、名探偵誕生の秘密に迫る伝記文学の傑作。
新婚旅行中、誘拐された妻を救出に、南アルプスの八紘嶺に向かった医師・武宮章吾は、無事妻を救出。誘拐犯は山中から変死体となって発見された。一方、川崎ではホステスが自宅ベランダから転落死していた。山中での変死体と疑惑の転落死。二つの事件の同一線上に浮かんだ一人の男とその殺意。完全なアリバイに守られた男の才略を打ち砕くため、章吾は不審死を遂げた女が残したメモを頼りに事件を洗い直すが…。
1945年7月、ドイツの戦後処理、対日戦略等を協議するためにポツダムに連合国三首脳が会した。その頃、ドイツ駐在の日本陸軍残置諜報員・河村吾郎は、戦犯狩りの追及を逃れ、戦いの時をじっと待っていた。大胆にも三巨頭の暗殺を計画したのである。史実にのっとり、抜群のアイデアと卓越した構想力でパワフルに描いた力作。
お鷹場を荒らす尾白の鷲をめぐって血みどろの葛藤(「鷲」)、名工の兜が持ち主に祟りをもたらす(「兜」)など、不思議な因縁の糸に導かれ、人知を越えた恐怖の世界を、ふと垣間見てしまった人々の運命は?(全十編)。
JFK国際空港。パリから到着したKGB工作員をマークしていたFBI捜査官スコッティは、相手が謎の男を尾行中であることを知る。車で追跡を開始するが、待ち伏せされ負傷する。-KGB工作員が尾行していた男は、アラブ過激派「聖戦」のメンバーだった。分散して米本土に潜入したテロリストたちは、持ち込んだ核爆弾を主要都市に仕掛ける。アラブ・テロリストたちの狙いは?KGBの企みは何か?
ー米大統領に宛てた一本のビデオ。「最後通告!米軍は中東から撤退せよ。イスラエル支援を停止せよ。さもなくば5個の核が…」東海岸からダラス、アリゾナへ…、テロリストを捕捉すべくFBI捜査官の必死の追跡が続く。だが、悪夢は現実に…。コロラド河の発電所で核が爆発。西部地区一帯は地獄と化す。同時に、米軍はテヘランに侵攻。第三次世界大戦突入か。-テロリストが核を手にしたら…。明日の恐怖を描く国際サスペンス。
ブルックは、研究機関WIWEの研究員。海外出張中の研究員、ミードの家の2階に住んでいる。ある夜、階下から響く奇妙な音楽で目をさました。家主のミードが、出張から戻ったようだ。ミードは民俗学の研究者で、世界各地をまわっていて、ブルックは、まだ会ったことがない。意を決してミードの部屋へ赴いたブルック。目の前に、現れたのは、ギリシャ神のようにたくましい体に、褐色の肌の魅力的な男だった。
ビリーは慣れない馬の扱いにとまどっていた。ストレスと運動不足の解消にポロスクールに入学したのだがポロゲームどころか、まだ馬に乗れないのだ。向こうではインストラクターが笑いをこらえている。きっと私のことを不器用な女だと思っているのだろう。と、見かねたひとりのインストラクターが近づいてきた。「大丈夫ですか」手を貸そうとした彼の青い瞳に見つめられた瞬間ビリーは落馬し、彼の厚い胸に抱きかかえられていた。
19世紀。イングランド南東部では「魔女伝説」が広まっていた。ある日、アルドリッジ侯爵は、エセツクス州にある城に向かった。途中、スティープル村を通りかかると、村人たちが瀕死の女を囲み、虐待を加えている。女は魔女なので水責めにするところだという。見れば、端正な顔だちの若く、美しい娘だった。侯爵は、村人たちを非難し、そのまま彼女を城に、連れていった。侯爵の手厚い看護に彼女は次第に回復していくが、アイディラという名前以外、いっさいの記憶を失っていた。焦燥感にとらわれ、沈みがちな彼女を見かねた侯爵は、アイディラの謎を解こうと乗り出すのだが…。
時の老中筆頭松平越中守定信は、世に賞罰に厳しい、“隠密老中”として名が高かった。従弟の又兵衛は故あって“田安”の名を変え、“岩佐”と名のって市井に住み、定信の密命を受けて働いていた。その岩佐又兵衛が乗り込んでゆく先は…。駿州田中、本多四万石の領地へ急ぐ岩佐又兵衛と女芸人お志奈・お梅・松江・お蘭・おちかたち美女一行、邪剣が又兵衛をねらっている。-本多藩の世継ぎを巡って錯綜する騒動に乗り込んだ岩佐又兵衛、正邪糾弾の活躍は。
秩父七ツ石山頂で、金穿師膳竜之助は、梓姫と名乗る首領に率いられる奇怪な一団と遭遇した。竜之助は老中水野越前守と目付鳥居耀蔵の密命を受け、幕府お直山の内情調査に従うお小人目付の一人であったが、叔父真鍋四郎右衛門こそ幕府を騒がす能面党の首領である、という意外な言葉を耀蔵から聞かされ、その能面党の探索を命じられた。長崎奉行所手付役人土方縫殿助と奸商大村屋十兵衛の罠に陥り、長崎屋甚兵衛は没落した。長崎屋の姉娘琴江は江戸へ出て、その名もお芳と変えた女掏摸になっていた。姉を尋ねて江戸へ向かう妹美保が、神奈川宿で般若の辰に襲われる危ういところを救ってくれた白羽二重に朱鞘の浪人こそ、“気まぐれ峻太郎”であった。-ご存じ、若殿峻太郎の活躍。
銀座の有名画廊『蒼林堂』社長宇津木義則から、妻知佳の素行調査の依頼が椿探偵事務所にあった。が、現在、所長の椿隆司は断酒道場に入っていて、アルバイトで留守を預かるのは小劇団『街頭劇場』の看板女優である姪の永瀬弥生と、これまた別の劇団で演出助手をしているという押しかけ助っ人自認の日高仁という若者の二人きりであった。さっそく二人ははりきって調査に乗り出したが、知佳は神奈川県下相模湖畔の雑木林の中から絞殺死体となって発見されたのだった。殺人事件となっては興信所の出る幕ではないが、事態はさらに意外な展開をみせて贋作事件へと…。-シアター女優が演出助手の演技指導で事件の謎を解く書下ろしソフト・ミステリー。
タバコ会社に勤める32歳のファービアンは、失業者が増加し争いごとの絶えない騒然とした世の中を憂い、悶々とした日々をおくっていた。そんな彼に突然の解雇辞令、親友の自殺、恋人の身売りと次々に不幸がおそいかかる。失意の心を抱いて故郷へ帰った彼はそこで…。詩情的なかおりとユーモア、鋭い皮肉、揶揄、エレガントな機知と絶望的なメランコリー。ケストナー独自の才能をすべて盛りこんだ、唯一の本格的な長編小説。