1990年8月発売
超新星と化したアンタレスの影響で、人類宇宙から完全に孤立したヴァレリア星系に、船籍不明の超弩級戦艦が侵入してきた。ただちに調査におもむいた惑星アルタの宇宙海軍は、そこで意外な事実を発見するーこの戦艦は地球軍に所属するものであり、圧倒的な戦闘能力をもちながら、なにものかに完膚なきまでに破壊されていたのだ。この見えざる強大な敵の正体をいち早くつきとめ、地球との交流を復活させるべく、遠征部隊はアンタレスが不気味な輝きを投げかける星の海へと出発したのだが…。壮大なスケールで展開される宇宙冒険SFの傑作。
女子大生ジルは夜ごと悪夢にうなされていた。暗黒の生き物に追われて逃げまどう人々。この見知らぬ都市に繰り広げられる惨事こそ、まさに阿鼻地獄そのものだった。一抹の不安を覚えながらも、夢は夢とたかをくくっていたジルに、ある晩意外なことが起きた。ふと目覚めると夢の中の魔法使いが目の前にいるではないか。しかも、ジルにダーレ家の王子をかくまってほしいというのだ。事情がわからぬまま隠れ家を提供したジル、そしてそこにふとしたことで立ち寄った不良青年ルーディは、いつしか異世界の恐るべき死闘に巻きこまれていった…。
幸運勘定管理コンピュータによる幸運再分配システムが人々の幸運を支配している社会。すべての人々のラッキー・カウントは、それぞれのラッキー・カードに表示されている。-先週まで、おれの幸運勘定は人並みだった。だが、思わぬ会社の倒産、そして、恋人との別離、新しい恋人とのカジノでのギャンブルと運命は急転回し、ラッキー・カードはまさしく運命を支配するカードとなった…。ラッキー・カードに運命を翻弄される男の悲劇を描く表題作ほか、甲冑を身にまとった異星種族の定めを描くデビュー作「割れた甲冑」等、多彩な短篇を収録。
わが子タリオン2世を擁するラドゥ王国軍の危地を救うべく大陸の東側へとやってきたタリオン。だがタリオン2世の生母ローゾは王国軍の裏切り者グルジャによって拉致されたあとだった。タリオンはラドゥ王国軍とともにローゾの捜索を開始する。やがて一行はデモイン帝国の王女ジニーの滞在している町にローゾが囚われているのを発見した。タリオンは単身その町に乗りこみ、剣の腕前と美貌をもって王女の親衛隊にうまくもぐりこむ。だがローゾ救出はあと少しのところで失敗。逆に王女を捕えたタリオンは、ローゾと交換しようとするのだが…。
14歳になったアルプスの少女ハイジは大好きなおじいさんと別れて、イタリアの寄宿学校へ行くことになった。だが、雄大な自然にはぐくまれて、のびのびと育ったハイジにとって、はじめての学園生活はとまどうことばかり。やさしいヒラリー先生にはげまされて、ようやくなれてきたら、こんどは戦争のために学校が軍隊に接収されてしまい、ハイジと三人の少女が孤児院に送りこまれる。そこでは、鬼のように恐い院長が石鹸工場で孤児たちを働かせていた。つらい仕事に耐えきれなくなったハイジたちは、力をあわせて孤児院からの脱出をはかるが。
ネオンと強烈なリズムが闇を引き裂く街ウェッジ。この街で離婚したグラフィックデザイナーのターナーはマイクルを知った。逞しい筋肉、肉食獣のような身ごなし。彼の獲物は危険な歓びを求める女たちだ。マイクルは女たちの望みをかなえてやるー彼なりのやり方で。いつしかターナーも彼と血の快楽を分けあうようになっていた。だがマイクルが本当に求める女はただ一人、彼と真に歓びを分かちあえる女。その運命の女がついに現われたとき、ターナーとマイクルは死を弄ぶ危険なゲームに巻きこまれてゆく。鬼才が放つ新感覚のサイコ・サスペンス。
暗黒街とのスキャンダルにも屈せず、舞台女優として一作ごとに大きく羽ばたきながら、ジャフィはエージェントの弁護士マットに惹かれ続けていた。妻のあるマットを諦めて結婚した興行プロデューサーのポールは、資金繰りに犯罪組織の手を借りて、過去を断ち切ろうとするジャフィを幾度となく苦しめる。やがて、マットと真実の愛を確かめあったジャフィに運命の転機が訪れる…。芸能史を飾った多くの人々を実名で登場させ、ブロードウェイ・ヒストリーを辿りながら美貌の女優の光と影で彩られた人生を雄大なスケールで描く、愛と野望のロマン。
サンテミリオン、マコン…私は一本一本、慎重に香りを嗅ぎ、味見をしては吐き出した。どれも同じワインだー酒屋を営むビーチは、あるレストランで偽ラベルで売られている酒を発見した。しかも、それは氷山の一角で、偽酒は大量にでまわっていたのだ。さらに件のレストランのウェイターが惨殺されるに及び、事件は複雑な様相をみせはじめた…。利き酒の能力と知識を買われ、警察の捜査に協力するうち、ビーチは巨大な陰謀の渦に巻き込まれていく。酒の世界を舞台に、謙虚な勇気と該博な知識を武器に闘う男の孤独な姿を描く傑作サスペンス。
6百万ドルの生命保険に入った映画スター、トニー・マキューのボディーガードをしてきてほしい、というのが、グルーチョの新しい依頼だった。場所はニューヨーク北部の撮影現場、撮影期間は二カ月で、その間は何があってもスターに死んでもらっちゃこまるのだー。ニューヨークでの探偵稼業もままならないトレースは、渡りに船とこの話に飛びついた。しかし、スターはすでに何者かに命を狙われており、現地の映画関係者を訪ねると、彼に恨みを抱く者がぞろぞろと…。マシンガン・ジョーク満載の人気シリーズもこれをもっていよいよ涙の最終回。
ロンドンの裏通りで起きた殺人事件は背後に異常な動機をうかがわせた。最初の一撃で意識を失い瀕死の男に、金づちでとどめの一撃を加えるという残忍な手口だったのだ。捜査にあたるマクリーシュ警部は、被害者が勤めていた繊維会社が倒産寸前であることを知る。一方、資金援助を検討していた貿易産業省は、女性事務官フランチェスカを派遣し経営状態の調査にあたらせていた。協力して調査を進める二人の前で意外な犯人が明らかになる。無骨な警部とキャリアウーマンの活躍をスタイリッシュに描く新シリーズ。英国推理作家協会賞新人賞受賞作。
熱波が襲うサンフランシスコの空地で、一人の娘が殺された。美しい顔を歪ませた死体は背中で両の親指を縛られ、近くの地面には牛の絵が刻まれていた。これは中米ゲリラの復讐の印か?捜査を始めた刑事クルスは、事件に絡む密入国組織の存在を知るが…。戦火の中米から密入国したゲリラが潜む都会のジャングルを舞台に、中年刑事の心死の捜査を描く力作。
アメリカの軍人と家族を乗せた旅客機がアラブ・ゲリラにハイジャックされた。旅客機はリビアの航空基地に着陸、人質となった乗員と乗客は管制ビルの中に閉じ込められた。やがてゲリラたちは、イタリアとクウェートで拘留されているリーダーと仲間の釈放を要求。だが、イタリアは応じたものの、クウェートは釈放を拒否、ゲリラたちは乗客の処刑を開始した。この事態にアメリカ政府は急遽強硬策を採り、人質を救出するため、ついにファイア・アロー作戦を発動する。かくて、海軍特殊部隊SEALが人質の確保に赴き、つづいて基地を防衛するリビア軍を抑えるため、陸海空軍と海兵隊の部隊が出動した。だが、その時、背後でソ連が不隠な動きを見せていた…。
八橋進介は司法研修所を出たての新米弁護士。正義感に燃える進介は検事一家に育ちながら、検事正である父の反対をおしきり、人権派の代表的存在、舟本守道弁護士事務所に居候することになった。学生時代の憧れの先輩で守道の娘・美波子と、彼女のライバル・晶という二人の美人弁護士に囲まれて、毎日が緊張の連続。そんな彼が初めて担当したのが殺人事件の弁護だった。被告は中学校の女教師。教え子の父親との不倫がバレて、口論のすえ夫を殺害したとされている。公判初日。誰もが情状酌量のセンで争うものと思っていたが、進介は突如「被告人は無実ッ!」と主張する。騒然とする廷内。果たして進介に勝算はあるのか。TBS金曜ドラマの小説化。
考古学者の曽根辞郎が多摩古墳群の一角で、頭を割られ、無残な死を遂げた。高等学校の同級生で「少年タイムス」の編集長・津田は曽根直筆の告発状ともとれる謎の詩文を受け取った。同期の東京地検検事・原と共に現場に急行した津田は曽根の寄宿する酒匂家の異様な建物と、そこに住む生活者たちに疑いの目を向ける。エジプトの詩文を模した曽根の詩は誰を告発しているのか?長篇本格推理の名作。
極寒の地シベリアを肥沃な穀倉地帯にする。-これは建国以来のソビエトの夢だ。その実現のためにソ連は「気候改造」を計画している、との情報をキャッチしたCIAは、日本の内閣情報調査室に共同作戦を提案してきた。内調室長稲月修造とCIAのバリンジャーの作戦は、来日中のソ連国家計画委員会議長ミハイルを誘拐して訊問しようというものだ。そして、その場所に選ばれたのが、京都の桂離宮だったが…。
まだ地平線の果ての見えない笑街道。作者ともども、花麿、じてんしゃ、デメンチアの苦闘も続きます。「笑いは生理的には、人の心身を『緩和』『解放』『無防備』状態となさしめるものであるが、『異常』に接したとき、それと彼における『通常』との距離や落差を計り…」なんて哲学的な思索もあったりして。万人を笑わせる“究極の笑い”は見つかったか?読者諸兄姉の賢明なる洞察では?巨篇意欲作完結。