1990年発売
あくまで私小説に徹し、自己の真実を徹底して表現し、事実の奥底にある非現実の世界にまで探索を深め、人間の内面・外界の全域を含み込む、新境地を拓いた、“私”の求道者・藤枝静男の「私小説」を超えた独自世界。芸術選奨『空気頭』、谷崎賞『田紳有楽』両受賞作を収録。 ●田紳有楽 ●空気頭
琵琶湖のほとりに嫁いで2年、家の重みと夫の背信から、子を連れ東京四谷へ帰る。心に残る“湖の美”の再現を夢み、新しい愛につつまれながら、染織の世界に生きる。精魂をこめて格調高く織りあげた傑作長篇。
キャッ!大学の学食で、エリカは手にした盆を思わずとり落した。一瞬、憎しみがこめられた強烈な「力」を感じたからだ。そして、プレイボーイと評判の折田という学生が「胸が…苦しい」といって息絶えた。殺したいほど憎い、と思った人間を念力で殺す力を持って生まれてしまった少女の運命をエリカとクロロックは救おうとするが…。
そもそもの、事件の起こりは薫の手紙。ワインレッドの封筒には、恐ろしく不愛想な招待状が入っていた。さっそく薫の家を訪ねてみるとーカーク、美女丸、シャルル、そしてなんと和矢までーみんなが笑顔でむかえてくれたのよ。うっ、感激。でも、突然、シャンデリアの明かりが消えたと思ったら…。90年夏公開予定の、アニメ映画のために書かれたマリナ・スペシャル版、ついに登場っ!
大松学園、別名〈体罰学園〉。すぐ竹刀を振りまわしたがる体育教師〈毛ガニ〉や、見るからに冷酷そうな数学の〈ヘビ・メタ〉なんかがニラミをきかせてる。事情あって転校してきた風美だけど、やっぱ学校の陰険なやり方には負けたくない。いろいろ抵抗ってもみるんだけど、他の生徒は冷たく見るだけなんだ。でも元マル族の頭で今はサッカーに熱中している哲也と同級生の恵子が味方になってくれて…。
亜夢は高校2年だが、1人でアパート暮らしをしている。その目的は、夢子さんを深し出すため。夢子さんとは死んだと聞かされいる母、でも亜夢にはどうしても、生きているように思える。親友の理津子は得意の占いで協力してくれてる。そんなある日、ケンカを目撃、亜夢は特技のカラテで思いもかけぬ助だちをし、俊介と知り合うことになった。ところが彼は、野本組の3代目だった。
「宮内に関わるな、死ぬ」-深夜にあたし(仙子)の家にかかってきた不気味な電話。宮内って何者?誰かがお兄ちゃんを狙っているの?透仙お兄ちゃん、青葉、恋人の温海さんと、捜査に乗りだしたあたしだけど、宮内家って何やらいわくありげな総合病院の経営者。お兄ちゃんはそこで家庭教師のアルバイトをすることになった。そして薔子さんという、運命の恋人と出会ったの…。
写真部の高橋ゆかりは、たえずファインダーを覗き続ける女の子、それも馬術部の伊東弘士の姿だけを追って…。すでにプリントだけで1500枚はある。父がプロ・カメラマンなので、写真部の中では特異な存在だ。弘士の妹・花菜子とは幼なじみで一番の友人であり、母どうしも仲がいい。しかし、ゆかりが馬術部に自由に出入りするようになっても、弘士とふたりでデートすることがなかった。
聖中バスケ部のゴールデンコンビ、小さな拓実先輩とデカイ体の土橋クンは、全国大会をめざして猛練習中。純情ボーイの恋と青春物語。ノベル大賞受賞作家の文庫デビュー。
“夫殺し”の起訴事実を、すべて認めた被告弓丘奈緒子。執拗に無実を主張する原島保弁護士。犯行に使われたと思われる柳刃包丁を買ったのは奈緒子だ、と認める証人。殺された夫には愛人がいた。離婚話もあって…状況は被告不利に傾むいてゆく。だが、裁判の進行につれて明らかになる秘められた意外な真実とは。人間の心の気高さを謳いあげる感動の長編法廷ミステリー。第41回推理作家協会新人賞受賞作。
和服の似合う、旅館“花野屋”の若女将高城志帆《25歳》。名門日本自動車の名スタンド・オフ川越冬樹《29歳》。さまざまな障害のなか、ひたむきに生きる女とスポーツにすべてを燃焼させる男との織りなす愛の行方は?名古屋と伊豆奥湯河原を舞台に、流麗な筆致で描く書き下し感動ロマン長編。
剣道場を経営し、政治結社・土佐草志塾を開いていた鈍川竜平が、出征から高知市へ帰還したとき、家も妻も塾生も白館貴思雄に奪われていた。そして、長男の真逸郎は行方不明…。やがて、父と子は再会するが、竜平は失意のうちに白館の手下に殺される。真逸郎は父の無念を晴らすべく、白館に復讐を誓うが…。高らかに男のロマンを謳う書き下ろし意欲作。
西暦2050年。母なる星・太陽から人類への〈警告〉が下された。太陽が突然膨張を始め、その荒れ狂う熱と磁気と放射線の牙は、容赦なくわれわれが住む地球に襲いかかり大地を焦がす。地球蒸発の危機がきたのか。人類は最期のミッションを敢行しなければならない。病める太陽の患部に反物質爆弾を撃ち込むのだ。巨大爆弾を積んで宇宙船ヘリオスが太陽に向かう…。
都会を捨てた一家が静かな高原で営むペンション〈モーツァルト荘〉。ラジカセのロックで踊り狂い、奇妙な忘れものを残していく若夫婦、駆け落ちカップルを囲む不思議な晩餐会、月夜に前庭で舞う裸婦、そしてクリスマス・イブに化けて出るのは狐?四季折々、訪れる老若男女が起こしていく事件ともいえない波紋の数々-。彼らが奏でる人生の協奏曲を円熟の筆で伝える連作小説集。