1990年発売
米国は救難用シャトルを打上げ、さらにステルス爆撃機、ハッブル望遠鏡、宇宙戦闘機などを繰り出してイントレピッド号を奪回せんとするが、ソ連も衛星攻撃兵器などで対抗し一歩も譲らない。地上ではホワイトハウスとクレムリンの双方で懸命の対策が立てられていく…。宇宙での対決を縦糸に、地上での双方の策略を横糸に織りなす大スペクタクルが迎える緊迫のクライマックス。
北陸の深い森につつまれた、大矢谷の神官の娘として生れ、ミッションスクールを卒業した三緒子は、都会でのサラリーマンの夫との生活を嫌悪して、故郷に帰る-。その特異な風土の中で、回生をはかる彼女は、異母弟への禁じられた愛に懊悩し、盲目の少年にひかれてゆく…。北陸の神域に棲むという化身はうつし身の女人に、情念の炎を宿させる恋・愛・罪のロマネスク。『沈める寺』に続く北陸を舞台に揺蕩う女心を描く。
心をしばる薬指のかわりに、すべてを断ち切る真っ赤なはさみがほしい。たとえみずから傷つこうとも…。大学卒業後、アナウンサーを目指して東京へ向かうセンリ。神戸を離れられないうしお。発車のベルが鳴り、シンデレラ・エクスプレスがいま、静かに走りはじめた-。デビュー作「夢食い魚のブルー・グッドバイ」に続く待望の第二作。書下ろし「鏡の森で 月夜の晩に」を併録。
大正十年冬、宮崎県日向〈新しき村〉の武者小路実篤の許に美しい女岡田晶が現れた。白樺派文学者たちが見守るなか、実篤、妻房子と晶子、三人の不思議な愛情生活が始まる-。奇才荒俣宏が、白樺派に託して愛と結婚のかたちを問う待望の長編幻想小説。
本書は、情報化時代の花形企業テレビ局、なかでも各テレビ局の顔であるニュース番組の制作現場を取り上げた長編小説である。劈頭、航空機事故のニュースの第一報が、CBAテレビジョン・ニュース社の本部に到着するあわただしい現場の雰囲気から一気に読者はテレビ局の内部へと引きずり込まれていく。
CBAのニュース番組《ナショナル・イヴニング・ニュース》のメイン・キャスター、クローフォード・スローンの家族が何者かの手で誘拐された。犯人側からはなんの反応も要求もない。一体なんのために誰が誘拐したのか?CBAテレビはニュースを報道する義務と人命尊重という二つの立場をどう調整したらいいのか?結局、テレビ局はFBI、警察当局とは違う独自の捜査班を組織し、犯人とニュースを追いはじめる。誘拐事件を軸に展開するテレビ・ニュース界の内幕。
広大な神殿に住み、神の声を聞く童女が、ひとりの少年に光の矢を向けられた時から、不思議な変化が起る…。寓話形式の中に、著者が描き続けてきた「個」へのあらたなイメージが表出する表題作など最新作八篇。
大晦日の夜。街じゅうがパーティで浮かれ騒ぐなか、刑事と鑑識技手で混みあうそのアパートだけは、ひんやりと重苦しい雰囲気に包まれていた。廊下には胸にナイフを突き立てられたベビーシッターの娘、そして幼児用ベッドには枕を押しつけられて窒息死した赤ん坊の死体があったのだから。パーティから帰宅して死体を発見した若夫婦の話から、赤ん坊が養子だと知ったキャレラとマイヤーは、実母を探すかたわら、ベビーシッターの娘にふられた元ボーイフレンドの行方を追った。一方クリングは、大晦日の晩に命を救ったプェルト・リコ人から、大がかりな麻薬取引の情報を流すともちかけられていた…。寒風吹き荒ぶアイソラの街で二つの凶悪犯罪に取り組む87分署の刑事たち-シリーズ40作目を飾る話題の大作。
時間警察すなわち震動守護者が支配している超巨大ロボット船オールド・マンがついに発進した。目的地は太陽系帝国以外にはない。このオールド・マンの侵入をゆるせば、太陽系帝国が破滅の危機に瀕することはまちがいない。ローダンは4万隻の艦隊に総攻撃を命じた。だが、テラナーの砲撃はことごとく敵のパラトロン・フィールドによって超空間にそらされてしまう。そこでローダンは、フィールドを破壊しようとハルト船とともに「クレスト4」で奇襲をかけるが…。
人類宇宙との再接触を果たした惑星アルタの人々の前に、恐るべき敵が姿を現わしたー人類の殱滅をもくろむ異星人ライアルが、その包囲網を着々とせばめつつあったのである。圧倒的な敵軍事力の前に、人類の敗北は必至。頼みの綱は地球の強大な軍事力だが、地球への超空間通廊は、アンタレスの超新星化で崩壊している。かくなるうえは、放射線の充満する危険なアンタレス星雲を、一命を賭して横断する道しかない。かくして、形勢逆転を狙う決死の〈ヘルダイバー計画〉が発動されたが…好評宇宙冒険SF『アンタレスの夜明け』の続篇登場。
アンドルー・バーチは、アストラダイン社でも一、二を争うスゴ腕カンパニーマン。ライバル企業を出し抜くためには、盗聴、謀略、誘拐と手段を選ばない。だが、今夜の任務は単純な尾行だ。バーチは相棒ネロとともにプルトニウム駆動機を駆り、単座機に乗るターゲットを空中で追跡していく。ところが突然、ターゲットが思いがけない行動をとり、追跡は不可能になってしまった。何者かが、バーチを危地におとしいれるべく、間違いだらけの命令書を渡していたのだ…。
アストラダイン社きってのカンパニーマンのバーチは、社内抗争に巻きこまれ、だれが味方かもわからないような状況に陥った。長年組んできた相棒さえ、頼りにならない。命令系統も混乱し、社内の他部署の人間に命を狙われる始末。さしものバーチも、会社への忠誠心はどんどん失せていく…。ついにバーチが怒りを爆発させる日がやってきた。限定核戦争後、いくつもの巨大企業が社会のすべてにおいて権力を握った近未来を背景に炸裂するハードボイルド・アクション。
惑星トリプレットの古代遺跡にある不思議な〈トンネル〉-それは、科学が異常に発達したシャムシール、呪文で精霊を呼びだせるカリックスのふたつの異世界に通じている。〈二十世界〉を統治する星間政府は管理局を設立し、トリプレットへの無断立入りを禁止してきた。だが、惑星オータリスのはねっかえり女子大生ダナエは、大金持ちの父親のコネでトリプレット調査の資格を手に入れた。経験豊富な案内人ラヴァジンを雇い、勇躍、ダナエは異世界へとおもむく…。
惑星トリプレットの〈トンネル〉が通じている異世界シャムシールとカリックスは封建主義的な価値観が支配する世界。地元の慣習にうといダナエは、ラヴァジンの制止も振りきり、トラブルばかり巻き起こす。しかし、そんなダナエが、偶然目撃してしまったのは、二つの世界どころか自分の世界にまで影響するほどの恐るべき陰謀だった…。冒険SFの名手ザーンが、元気いっぱいの女子大生をヒロインに、SFとファンタジイの両方の面白さを詰めこんで描く一大冒険譚。
自業自得とはいえ、ガリオン一行に愛人を殺害されたグロリムの尼僧チャバトは復讐鬼と化した。だが、高僧アガチャクとマーゴスの王の面前で即座に私怨をはらすわけにはいかなかった。なにしろ、ガリオンたちはマロリー皇帝暗殺を企む人物を護送する任務を負っているのだ。ただひたすら機会を待つうちに、やがて事態は意外な展開を見せはじめた。なんと、暗殺者は偽ものだったのだ。となれば、もはやなんの遠慮もいらない。今までこらえていた憤怒がついに爆発し、尼僧の口から不吉な呪文がこぼれ出た。悪魔を呼び出す禁じられた呪文が。
ふとした南の国へのあこがれから、騎士の身分を捨てることになったエルガーノは、放浪の旅の道すがら、旅篭や酒場のけむりの中、人びとに歌い語る。猛だけしい戦さのさまを、海の王国の美しい女王の恋物語を…「エルガーノの歌」、雪をいただく山の上にひとりで棲んでいた神ロムセイは、数百年ぶりに訪れたふもとの村の狩人の願いに応え、花嫁として村へ下った。だが、ロムセイのあまりの美しさは狩人を破滅へ導いていく「黄金の髪のロムセイ」、十字軍兵士とエジプトの少女の霊の物語「ファラオの娘」、など珠玉のファンタジイ短篇13篇を収録。
メキシコ湾に浮かぶ巨大な石油採掘デッキ“シー・ウィッチ”。石油王ワース卿が最新の科学技術を駆使して建造したこの装置は安い石油の大量供給を可能にした。だがそれは石油市場を陰で支配する男たちには許すことのできない事態だった。石油価格の下落を防止するため、世界有数の爆破の戦門家クロンカイトにシー・ウィッチの破壊が依頼される。周到かつ巧妙な手段でワース卿を追いつめてゆくクロンカイト。シー・ウィッチ破壊のため、彼がとった驚異の作戦とは?巨大な海の魔物をめぐる息づまる攻防戦を王者マクリーンがスリリングに描く。