1991年10月1日発売
秀吉が唐入りの大号令を発した年に明国で「西遊記」の初刻本が出版された。「これは余の前世を記した書物じゃ」と秀吉から家康に渡った初刻本は、今も日光山輪王寺に秘蔵されている。東海神州の一角、尾張の吉法師(信長)に転生した三蔵法師を慕った孫悟空は、童のひよしに憑り移り、ここに「悟空太閤記」の雄渾な物語が始まった。
湾岸戦争によって世界は新しい局面を切り開かれ、ソビエト体制の崩壊は、拍車をかけた。政治、経済、軍事は次なるバランスを求めてうごめいていた。-小暮勇、52歳。倒産により失業中の彼は、念願のアメリカ一人旅に出たが、思わぬ事件に巻き込まれた。中東の武器調達、米ソの暗部…。“秘密の領域”に対し、小暮はその経験と知識を武器に死闘を開始した。
’89年F1GP。元F1ドライヴァー、ピート・ホーソンは、新規参入のヴィターレ・チームから誘いを受ける。願ってもないF1復帰。が、チームのオーナーは、19年前、ラリー出場中に謎の失踪をしたピートの父の雇い主でもあった。事件の真相に迫るピート。開幕戦のシグナルは赤から緑に。-栄光のチェッカーめざして疾走するマシン。限界に挑むドライヴァー。華やかなサーキットの陰では、もうひとつのバトルが…。シリーズ第1弾。
1975年、ワシントン。タクシーの中で発作を起こした客が残したアタッシェケース。中身は門外不出の対ソ戦略極秘文書だった。運転手が匿名でホワイトハウスに送り返したことから、政府中枢にソ連スパイが潜入していることが明らかになる。だが、その大物スパイは、この日に備えて捨て駒を用意していた…。諜報活動の本質を描いた第一級の本格スパイ小説。
イサ・マクナヴァーはロンドンで歌手として活躍していたが静養のため、二年ぶりにスコットランドへ帰郷した。ある日、幼い頃よく行った洞窟に入りこんだイサはそこで、三人組の男たちの密談を耳にする。どうやら、秘宝探しの相談らしい。さらに驚いたことに、かれらは、マクナヴァー一族の族長であるストラスナヴァー公爵の暗殺を企だてていた。
リリーは、児童劇団の資金調達係。助成金を受けるため、白雪姫の扮装でチェイス財団を訪ねる。応対に出た男の貴族を思わせる魅力的な顔立ちに惹きつけられてリリーは熱心に話をした。その時、ドアの向こうから別の男が現れた。リリーは相手を間違えていたことに気付いた…。
ペットショップに勤めるシャーリーの楽しみは、新聞の恋愛相談を読むこと。その回答者ミスター・ハートは、センス抜群で、繊細な感性の持ち主だった。ある日、ブレットという男が店にやってきてチンパンジーを預かってほしいと言う。彼のブルーの瞳に魅せられたシャーリーは、この恋の行方をミスター・ハートに相談した。
反政府ゲリラ新人民軍と軍部が対立するルソン島北部で、商社角紅が計画する海洋リゾートを視察中の日本大使と社長が誘拐された。ゲリラに加わる元赤軍兵士の伝えた要求は、計画の即刻中止と1億ドル。角紅は現地を牛耳る比陸軍のイリガン少将に、独自の捜索を依頼。一方、“テロリストとは交渉せず”の方針を打ち出した日本政府首脳は、苦悩の末、外務省領事作戦部〈F2〉所属の制圧攻撃機〈ブルドッグ〉に出動を命じた。密かに情報収集を始めた飛鳥機長は、リゾート計画の難航が、なぜか伏せられていることを掴むが…。台風吹き荒ぶ南海に待ち受ける死と謀略。最強兵器〈ブルドッグ〉と生命知らずの乗組員たちの活躍を描く、白熱の冒険アクション第2弾。
〈お・ま・え・を・こ・ろ・ちゅ〉奇妙な電話を受けた直後、悪徳不動産屋猪野直哉は、何者かに惨殺された。捜査を開始した“死神”の異名を持つ刑事冷泉は、かつて猪野が仲間3人と数多の悪業を働き、そのうち2人が相次いで変死していた事実を掴んだ。やがて残る1人、暴力団組長島田へも〈こ・ろ・ちゅ〉の予告電話が。犯行はこの4人組への復讐だと推理した冷泉は、彼らに嬲られ失踪した遺伝子学者香川を追ううち、島根の山中で、人か獣か判別不能の巨大な足跡を発見したが、直後、屈強な男たちに取り囲まれた。はたして冷泉の運命は?謎の巨足の正体とは…。空前の着想と圧倒的迫力で堂々「黒豹小説賞」を受賞した超弩級新人のサスペンス巨編ここに登場。
「奴らをこの手で撃ち殺す」-その一念で警視庁を辞した切れ者の元警部山城は、密かに裏社会の悪党20名からなる賞金稼ぎを編成した。賞金は6億。同じ目的の元女刑事荒川由里が、証券会社支店長から貢がせた金である。標的は山城の誇りをズタズタにした悪の天才狼たち。ここに総資金20億と山城の全智全能をかけた極秘追撃作戦が開始された。一方、ハリウッド・スターの名を犯罪コードネームにした狼たちは、北海道富良野で束の間の平和にひたっていた。だが暴力団旭道会が動き出し、さらに、潜伏先を察知した山城の包囲網が狭められ、狼たちに死が迫りつつあった…。迫力、面白さを満載して贈る人気シリーズ第3弾。
悪の天才狼たちは、道警と自衛隊までをも巻き込んだ山城によって、完璧な包囲網を敷かれ絶対絶命の危機を迎えていた。圧倒的人員と武器で狼たちの抹殺がいままさに開始されようとしたとき、抜け駆けを図った賞金稼ぎによって計画は水泡に帰し、熾烈な銃撃戦の幕が切って下ろされた。四面楚歌の中、狼たちは一度脱出に成功するが、修羅と化した山城はアジトを提供した夫婦を人質に取り、その生命と引き換えに無条件降伏を迫った…。万策尽きた狼たちの反撃と脱出はなるか?雄大な大雪山を舞台に繰り広げられる白熱のバイオレンス・サスペンス。異才が渾身の力を込めて放つ傑作ここに誕生。
元和元年(1615)、大坂夏の陣前夜、徳川家康暗殺を企てた男がいた。将軍家茶道師範・古田織部-大名であり,千利休亡き後,織部焼や多窓形式の茶室建築に代表される、日本人離れした独創性で一世を風靡した一流茶人が、なぜ72歳の老境に達し、そのような暴挙に出たのか?事変後、古田家のみならず織部焼までも歴史から抹殺された事実は何を意味するのか?現代の殺人に端を発し、やがて400年前の謎が解き明かされる…。広範緻密な資料を下敷きに大胆な推理で新分野に挑む、実力派の歴史推理傑作。
日本第1の要塞島対馬に、補充兵役入隊兵数百人が上陸したのは、1942年1月のこと。「すでにして世界は真剣に生きるに値しない」と思い定めているニヒリスト東堂二等兵もその中の一人である。厳寒の屯営内で過酷な新兵“教育”が始まる。と同時に稀代の記憶力を駆使した二等兵の壮大な闘いも開始される。戦後日本が生んだ桁はずれに大きい“笑い”の文学巨篇登場。