1991年10月1日発売
〈無為〉を唱えつつも一揆に走る〈真弱教団〉、あえて自滅の道を選ぶその分派〈破瓜集団〉、人民支配に苦悶する老いた皇帝乾隆、等を史実を下敷に重層的に描く壮大なドラマ。「ベルリン・アレクサンダー広場」の著者が列子に捧げた中国小説の傑作。フォンターネ賞受賞。
豊田秀吉の朝鮮出兵によって村上景親に捕われ、日本に連行された地方豪族の妻風蓮と女中伽〓(かや)が、はるか望郷の念を抱きつつ、一方は2度の自殺未遂の上で景親の側室となり、他方は周倒に脱出の機会をうかがいながら、それぞれが悲しい侵略の宿命を生きる姿を描いた、朝鮮半島から見る「女の一生」。
三信建設設計課一級建築士・田中浩一は、ある夜、中学・高校が同窓で、今は東南大学法医学教室の古谷一郎の訪問を受けた。「緊急に信用できる人に会いたいのだ」といって古谷は、緑色の百円ライターを取り出して机の上に置いた。そして田中が、煙草を吸うためにそのライターに触れようとすると「それに触っちゃいけない」と声を荒らげ「僕はあるグループに追われている。ある研究の成果が素晴らしく軍事目的に使用できる」と付け足した。法医学者の夢を満たすどころか、原爆・水爆よりも恐しい科学兵器なのだ、という。最後に古谷は「目の前の、そのライターだよ」といって口をつぐんだ。人類が初めて出会った、その兵器とは。
あの懐しい坊や哲、ドサ健が帰って来た、しかもより多彩でより猛烈なキャラクターのメンメンを引き連れてー。天才的なカンであらゆる博打に勝ち続ける街の女。絶対放銃しないが故に緊張に耐えきれずクスリに溺れる芸妓。苛烈な勝負の連続を通して人生の闘いを鮮やかに描きあげた阿佐田哲也会心の珠玉短篇集。他に色川武大「ひとり博打」を併録。
太古の昔に封印された、伝説の魔王ガルバランが復活した。世紀の冒険家アドル・クリスティンは、旅の仲間ドギと共に事件の鍵を握る街・レドモントへと向かう…。急げ、勇者よ、悪夢を封じ込められるのはキミしかいないのだ。
私立探偵カーヴァーは親友の警部補デソトの依頼で、サンヘヴン老人ホームへ赴く。そこに入居中のこの世を去ったデソトの叔父が、サンヘヴンには不審な点があると生前洩らしていたからだ。初め半信半疑だったカーヴァーだが、なぜか彼の調査は凶悪な犯罪者の妨害を受ける。果たしてサンヘヴンに潜む秘密とは?アメリカ私立探偵作家クラブ最優秀長篇賞に輝く入魂のハードボイルド。
オレ、真崎燿司。昼はシャイな高校生をやっているが放課後はメイクで美少年モデルに大変身。この二重生活が結構しんどいんだ。ホモのカメラマンに迫られるわ、美少女モデルには×××。どいてくれ!オレ、午前0時には家に帰らなきゃならないんだ。でないと…。ちょっと危うい新感覚コミカルストーリー。
不朽の名作『源氏物語』が生まれた動機・背景、舞台を再現。宣孝との不本意な結婚そして死別、義理の息子隆光との道ならぬ恋、時の権力者道長との不倫など、女文学者紫式部の知られざる人間模様を浮き彫り。書き下ろし歴史長編ロマン。
早坂宗吉は、独身サラリーマン。社長に愛人の子を認知してほしいと頼まれた。報酬は莫大な認知料と重役昇進。いやいやながらひき受けた早坂だったが、世の男性が同じ悩みをかかえている事に目をつけ、商売にできないかと考えた。働かずして収入を得る新手のビジネス・認知業は大当り。だが…。表題作をはじめとする異色官能サスペンス集。
バイロン抹殺のため“デウス”の敢行した軌道上からのレーザー攻撃は、瞬時にロスヴィオスの街を壊滅させた。間一髪シャトルで脱出したバイロン達だが、彼らを乗せた船は、船内で対立するブレイン、ラングトン、ファレルの思いをよそに、何者かに操られ軌道上に浮かぶ“デウス”の本拠地ディープ・ムーンへと加速しつつあった。時を同じくしてディープ・ムーンの中枢ともいうべき集中管理システム「ミダス」が暴走をはじめ、コロニー各所の端末ディスプレイには、「BYRON」の5文字が狂ったように明滅していた-。巨大なコロニーを舞台に自らの過去と対峙するバイロンの凄絶なバトル、待望のシリーズ完結編。