1991年12月発売
19歳の冴子の運命は、上京直後、親切な男に声をかけられたことから大きく変わった。性のテクニックを仕込まれる奇妙な同棲生活。やがて、男に言われるまま美容整形を受け、見違えるほどの美女に変身した冴子は、銀座の一流クラブへ送り込まれた…。意外な殺人事件に発展する「腐爛死体の場合は」をはじめ、事件の裏に蠢く男と女の愛欲を抉る傑作推理。
日本の最南端、琉球諸島の小島に美しい女子大生が訪れた直後ー。波涛悠は、釣りに出掛けた父とリゾート開発業者が、巨大な鮫に食われる悲劇を目撃し、愕然とした。なぜ2人が海中に引きずり込まれ、鮫の餌食になったのか?一滴の血の臭いでもない限り、鮫はけっして人を襲わない。やがて悠の心に一つの疑惑が芽生えた…。長編冒険小説。
ニューヨークの空港に着いた47歳の福岡竜男は、入国審査官を前に青ざめていた。カタコトの英語しか話せない彼にとって、海外赴任は拷問以外の何ものでもなかった。が、社の命令である。最低3年間は頑張ろう…。これが悲劇の始まりだった。はたして英語ノイローゼに陥り、半年で帰国した彼を待っていたのは、アメリカ人が絡んだ前代未聞の連続殺人だった…。長編本格推理小説。
都立高校2年、惣菜天ぷら屋の息子、北村章。野球部投手ではあるが、年上の証券会社OLを愛人に持ち、汗と涙の球児像とはほど遠い毎日。「青春とはセックスだ」と叫ぶノイローゼ教師、不倫の恋に懊悩する女教師など、彼を取り巻くあまりにも人間的過ぎる男、女。愛人の妊娠告白、彼を慕う女子下級生の自殺未遂、蒸発した父との再会。そして男対男の対決…。激しく流れる時の果てに彼が見たものは…。誰にでもあった、けっして美しくはなかった青春の日々を描く著者会心の一作。
東堂太郎の回想する女性との濃密な交情、日常的に交わされる珍妙な「金玉問答」や「普通名刺論議」…。内務班の奇怪な生活の時は流れる。そして、しのび寄る忌わしい“事件”の予兆。「私は“あるかすかな予感のような物”を見極めるためにも戦争に出かけようとしているのかも知れない…」。
イギリス風ペーソスとユーモアでくりひろげられるクリスマスのお話二篇。原書の持つ雰囲気を生かした落語調の翻訳で、また違った味が楽しめる「クリスマス・キャロル」。クリスマス本の二冊目として熱狂的に迎えられた「鐘の音」。風刺雑誌『パンチ』の画家として有名なジョン・リーチらの幻想性に満ちた挿絵と現実が奇妙に溶けこんだ不思議なファンタジー。
イヴに間近いある夜。僕のもとに現れた少年は、サンタクロースの身分証明書を持っていた。僕の彼女への、クリスマス・プレゼント選びの相談にのるためにやって来たのだと言うが…。爽やかさNo.1の作家堀内貴和の、クリスマスと都市生活をめぐるショート・ストーリーズ。
情報屋のケンドリックから数枚の写真を見せられたのは、八月の暑い盛りのことだった。上院選立候補中の議員がSM行為?ウェルズは慎ましく情報提供の申し出を断ったが、翌日ケンドリックは死体となって発見された。失職の危機に瀕したウェルズは、職業生命を賭けて卑しき街をさ迷うが…。夏の終わりに、彼が到達した真実とは?アメリカ探偵作家クラブ最優秀ペイパーバック賞に輝く第三弾。
人類だけが常に地球の主だったわけではない。そう、今もなお〈旧支配者〉は世界の何処かに潜み、虎視眈々とわれわれを狙っているーH・P・ラヴクラフトが生みだした〈クトゥルー神話〉。本書は、あのコナンの生みの親がおくるクトゥール神話傑作短編集である。表題作をはじめ、「妖蛆の谷」「獣の影」「闇の種族」「大地の妖蛆」「鳩は地獄から来る」など全十三編を収録した。
デタントをより促進するために、アメリカ第七艦隊がソ連のウラジオストク港を表敬訪問することになった。だがソ連は目下、太平洋艦隊の増強につとめている。この裏には何かある…。海軍情報部部長マグナソンがにらんだとおり、ソ連海軍は第七艦隊を盾に、中国の領海に眠る大油田を占領しようとしていたのだ。マグナソン配下の工作員たちが中国へ、ソ連へ飛ぶ。米中ソ大海戦の危機が刻一刻と近づいていた。軍事冒険スリラー巨編。
下呂温泉旅館『下呂渓山荘』の経営者坂松寿男から「妻の不倫の証拠をつかんでほしい」との依頼が『フレンド探偵社』に舞い込んだ。夫・坂松との夫婦仲がしっくりいかない女将は男と次々浮気を重ねていく。その一人・河内大介は女将の案内で飛騨高山へ車で見物にいった帰途、舞台峠でトラックと正面突し、怪死する。主人の目を盗んでは女将と不倫を重ねていた番頭・吉田も河内と同じ運命をたどる。一連の死に犯罪の臭いを嗅ぎとった志摩男、倫子のコンビは事件解明に本格的に乗り出す。
叶理香子は26歳の美人監察医である。東京23区内で発見された変死体を検死したり、場合によっては現場から持ち帰って行政解剖して死因を明らかにするのが主な任務である。その理香子のもとへ若林早紀という女性から一通の封筒が舞い込んだ。「姉がはめていたはずの指輪が事故現場になかったこと、姉に一億円の保険金がかけられていたことで姉の事故死に疑惑を抱いている…」との文面である。ミステリ好きの理香子は早紀とともに事故死の裏に隠された謎の解明のため知恵を絞る。
本田由夫、ナホ夫婦は二階を貸間にしている。その一室に平井が越してきた。そして平井の恋人・信子は、あろうことか、平井の情事をナホに洩らした。なんと華麗?なる行動…その思いがどう発展したのか、いつの間にかナホは平井に燃えだしていた。平井の両腕がナホの両脚の間に入る間柄となった。夫の顔が脳裡をよぎる。が、浮気の一回や二回、現代の常識よ。あんただって、レストランの女の子と熱海で…。ナホは自分を納得させ始めた。多彩なシークレット・ラブの狂詩曲。