1991年2月1日発売
新宿で爆発し六本木を戦場と変え、京都を狂乱の都とした、一条寺文磨と尾花マリの純愛の終着点はいずこ?京都でマリと引き裂かれた文磨のもとに、マリは北海道にいるとの噂が次々に届き、彼はひとり海を渡る。待ちうけるのは卑劣極まりない敵の罠また罠。釧路湿原、阿寒湖、札幌…。二人の再会は果してなるか?「ダイハード」まっ青のノンストップロマン完結。
勇者の中の勇者、伝説の英雄、矢沢高雄は、死んでしまったはずだった。だが、いま、魔女マダム・マヌー側について、しかもたった一人で世界各地で大量殺戮を繰り返し始めた男は、矢沢高雄の蘇りとしか考えられない。沢村ゆりとその仲間は、この最強の新戦士を敵にまわすことになった。その結果はー。
「お帰り、イーゴリ」。帰宅したベッカーを待っていたのは、コンピューターのディスプレイに映し出されたKGBのメッセージだった。それは16年のスリーパー生活=リッチなアメリカ市民としての優雅な日常と、生まれつつある愛から彼をもぎ取る悪魔の声だった。手に汗握るエスピオナージュ長編。
天皇に殉じて割腹、自死を遂げた作家の死に衝撃を受けた、同じ主題を共有するもう一人の作家が魂の奥底までを支配する〈天皇制〉の枷をうち破って想像力駆使して放つ“狂気を孕む同時代史”の表題作。宇宙船基地よりの逃走男が日本の現人神による救済を夢見る「月の男」。-全く異なる二つの文体により、現代人の危機を深刻、ユーモラスに描く中篇小説二篇。
バリ島をオートバイで駆ける拓也、21歳。ちょっと不器用で、ひとりで生きることを習い性にしている青年。そして、気が強く、どこか陰をひきずっているイラストレーターの美樹、28歳。熱帯の異国情緒を背景にふたりの恋が静かに熱く燃えあがる…。
東京帝大に入学するため九州から上京した小川三四郎にとって、東京は新鮮な驚きに満ちていた。里見美禰子と出会い、強く魅かれてゆく自分に気づいたのも、その驚きのひとつだった…。若者の恋と失恋を描いて常に新たな感動を呼ぶ青春文学の傑作。
ユダヤ系アメリカ人の作家と結婚した道子、2人の息子=15歳のジョンと13歳の脳障害のケン。南カリフォルニヤの真青な冬の空と海、3週間前に施設に入れたケンが帰宅した週末、行儀の良いケンとは対照的な夫婦喧嘩ー「遠来の客」。13年ぶりのニューヨーク滞在。夫の一族再会と血族の聖なる儀式への彼女の憂鬱ー「過越しの祭」。自由を求めて渡米した道子の予期せぬ戦いを描く。
個人事務所を営む弁護士レイチェル・ゴールドは、かつての上司から奇妙な依頼を受けた。ペット墓地に埋葬された“何か”を調べて欲しいというのだ。その墓の信託基金を巡って彼の法律事務所が微妙な立場に陥っていた。ペットの墓に冠された謎の言葉カナン。レイチェルの調査が始まる。やがて彼女の周囲に次々と起こる異変…最もアメリカ的な街シカゴを疾走する長編サスペンス。
フォークランド紛争渦中の1982年、アルゼンチン巡洋艦ベルグラノは、英国原潜コンカラーによってなんの警告もなく撃沈された。そのコンカラーがいま、スコットランド奥地で極秘の魚雷実験を行なっている。復讐心に燃えるアルゼンチン人有志は、ゲリラ部隊による前代末聞の破壊工作を決意。特殊能力を持つ5人のアルゼンチン人チームによる大胆不敵な原潜撃沈作戦がはじまった。
小さな動物をバスにのせて子供たちを訪ねる「移動動物園」。そこで働く二人の若い男女。じりじりと暑い“恋ヶ窪”の夏。懐しい土の匂いと草いきれ…。青春のただ中にいる者だけが知る気負いと絶望、熱情と虚無感を余すところなく書き続け、自ら死を選んだ著者の処女作ほか二作を収録。青春の苦悩と歓喜を鮮かに描いた小説集。
障害をもつ甥の結婚問題を叔父の目から暖かく描き、ときにユーモアで笑わせ、ときにホロリとさせる新潮新人賞受賞作、「ランタナの花の咲く頃に」。作品の裡に流れる人間讃歌は読む者の胸の奥に届くだろう。他に沖縄の風土色濃い「いちじゃま」と、ボクシングチャンピオンの激烈な青春を描いた「チャンピオン」の力作二編を収録した、実力ある新人の小説集。
私立探偵アーロン・ガナーの決意は固かった。理由はどうあれ、自分の調査のせいで女が一人死んだのだ。これ以上探偵をつづけることは、良心が許さない…。だが、依頼人の女は魅力的だった。それに、依頼の内容もこれまでのような他人の秘密を覗き見する仕事とは違っていた。黒人優越論を唱える「決意の兄弟団」の指導的メンバーが暗殺された事件を調査してくれというのだ。目撃者の証言から犯人の身元をつきとめたガナーは、その白人至上主義の若者を捕まえようとスポーツ・ジムに張り込んだ。ところが何者かに襲われて意識を失い、気がついてみると、ジムの外に駐めておいたガナーの車には彼の拳銃で撃たれて事切れた若者の死体が置かれていた。人種問題に揺れるLAで、黒人探偵ガナーが暗殺事件の裏に隠された陰謀に迫る。第二回私立探偵小説コンテスト第一席。