1991年9月発売
「石狩湾に大油田発見か?」のニュースにマンハッタンは揺れた。莫大な資金を投入し、暴落した原油の買占めを命じた謎のアラビア人投資家ガブリエル・ホールディングス社の正体は?そしてそのどす黒い野望は何か。「ウォール街の精油業者」の暗躍と原油先物取引の凄い内幕を描く傑作経済サスペンス。
流氷に埋めつくされた極寒の知床ー。番屋を守る宗吉老人が助けた男、間島勲は国後島の強制収容所を脱走、えん罪をはらすため決死の覚悟で流氷原を渡ってきたのだ。昭和維新を唱える塾頭、経済界の黒幕、彼らを操る影の人物ー、戦後日本の政治・経済・思想史を背景に壮大なるスケールで描く戦慄の復讐劇。
栄光から破滅へ。次期ニューヨーク商品取引所副会長を噂された石油取引の星スティーブ・オサリオの今日は債鬼に追われる身だ。油田発見の報とともに一気に売り浴びせたのは誰か?血で血を洗う石油取引の背後にうごめく各国政府の思惑、世界金融再編の底流、そして「七人の姉妹」を鋭く描く娯楽巨編。
大寺さんの家に、心得顔に一匹の黒と白の猫が出入りする。胸が悪く出歩かぬ妻、二人の娘、まずは平穏な生活。大寺と同じ学校のドイツ語教師、先輩の飲み友達、米村さん。病身の妻を抱え愚痴一つ言わぬ“偉い”将棋仲間。米村の妻が死に、大寺も妻を失う。日常に死が入り込む微妙な時間を描く「黒と白の猫」、更に精妙飄逸な語りで読売文学賞を受賞した「懐中時計」収録。
1925年、中国・上海で起きた反日民族運動を背景に、そこに住み、浮遊し彷徨する一人の日本人の苦悩を描く。死を想う日々、ダンスホールの踊子や湯女との接触。中国共産党の女性闘士芳秋蘭との劇的な邂逅と別れ。視覚・心理両面から作中人物を追う斬新な文体により不穏な戦争前夜の国際都市上海の深い息づかいを伝える。昭和初期新感覚派文学を代表する、先駆的都会小説。
時は後漢末、献帝を擁した曹操の権勢は絶大なものがあった。劉表より荊州を譲られた劉備は、諸葛孔明の進言により蜀に兵を進め、中国は魏・蜀・呉の三分するところとなった。天下盗りを狙う曹操は、馬騰を殺し、献帝を廃して皇帝となり、天下に号令せんとした。これに対し、関羽・張飛・趙雲・馬超らの勇将、孔明・徐庶・〓@70AA統の謀将を従えた劉備は、曹操討滅・漢の復興を目指して遂に兵を挙げた。魏の諸城は次々と陥落し、憂悶のうちに曹操は死ぬ。全ての「正史」はインチキだと主張する著者が、雄大なスケールと厳密な時代考証・見事な人間描写で綴る一大歴史ドラマ。
山の王国のガド王の命により、密書を携え海の王国を目指すシャルの一行。隊商の隊員に化けての旅の途中、自由都市ウィリー市で、誘拐された市長の娘の救出隊に加わることとなる。誘拐したのは仮面党となのる盗賊団。しかもその仮面党は、狩猟の民のシンボルであるエメラルドの原石「雫石」も奪い持っているという。狩猟の民の遺児であるシャルたちは、仮面党の本拠地を探しに山岳へと出発する。しかし険しい山中には、そこに生息する蛮族、ヤニハン族の襲撃が待ちかまえていたー。
ひと目惚れ!かくも胸躍らせる言葉があの時代にはあった。60年代のはじめ、場所はロンドン。クリフォード・ウェクスフォード。35歳、美男で独身でお金持ち、美術オークションの大会社レオナルドの実権を握ろうとしている。ヘレン・ラリー。22歳。額縁職人であり、ボッシュばりだが売れない絵を描く画家の娘。地味なドレスながら、有名人やきらびやかな衣装をまとった美女たちのなかでもひときわ輝く美しさ。二人はパーティ会場を抜け出し、甘く激しい一夜を過ごす。やがて、かわいい娘ネルが生まれるが…。
男心はこんなにもろいものなのか、そして女心は…?クリフォードとヘレンをとりまく男と女たち。大富豪の娘アンジー、つぎつぎと変わるクリフォードの愛人たち、ヘレンを愛する美男の黒人私立探偵、ヘレンの両親、クリフォードの両親、ヘレンの再婚相手のサイモン、そのほか大勢の人々が、男と女の心のゆき違いに悩み、傷つき倦みながら、また新しい出会いで人生が変わろうとしている。そして二人の間に生まれた娘ネルは、想像を絶する運命に弄ばれていく。乾いたユーモアと鋭い人間洞察で描くフェイ・ウェルドンの代表作。
京に逗留中に眠狂四郎に、京都町奉行から突然呼び出しがかかった。禁裏から高貴の身分の姫宮が失踪し、その事件の裏には大阪商人が一枚かんでいるという。御所が金のために姫を売った?狂四郎は姫を取り戻しに商人の別荘へ赴くのだがー。他に狂四郎の独白体で進行する「悪女仇討」、行商人の回想で綴る「のぞきからくり」など、文庫未収録作品を集めた眠狂四郎最後の円月殺法。
時は戦国、氷上の名主に拾われたコナタは快活な少年だった。しかし、戦の終わった戦場で青の魔剣と出会った日から、コナタの運命は一変する。己の出生の秘密を知ったコナタは、運命の導くまま「男でありながら女であるもの」へと変化して京に上る。一方、赤の魔剣の所有者シナは織田信長の元にあった。二振りの魔剣が再び相まみえ火花を散らすー。長編歴史ファンタジー、完結編。
結婚して以来転居を繰り返している智佐子・克郎の若夫婦が今回引っ越してきたのは公団住宅。家賃の安さにつられたけれど、今時珍しい星型の住宅で、五階建てなのにエレベーターなし、おまけに傾きかけている。隣に住む老人が120億の遺産を智佐子に進呈すると言いだして、やっぱり死体が御登場。オンボロ団地の住人を巻き込んで繰り広げられる好評のドタバタ書下ろしシリーズ。
明治政府に反逆し、賊として処刑された者たちが、維新前夜の功績を評価されて次々と贈位されていく中で、奇兵隊三代目総管・赤根武人の名誉がついに回復されなかったのはなぜか。現代の法廷に、山県有朋、伊藤博文らを次々に冥界から証人として喚問し、著者の分身たる弁護人が維新史の暗部に横たわる謎をえぐりだす表題作をはじめ、明治維新前後に材をとった力作3編を収録する。
事故で顔面に重傷を負った女性記者カーリーの顔は、天才的形成外科医の手で見事に修復された。だが彼女はほどなく医師のいかがわしい前歴を知らされる。そして、自分と同じ顔を与えられた女が存在し、しかも彼女が行方不明になっていることもー。医師は完全無欠の顔を作り出し、自分の名を不朽のものにしようとしていたのだ。真相を知りかけたカーリーに、医師の魔の手が迫る。
シアトル市内で八件の連続殺人事件が発生した。独身の若い女性ばかりで、目はテープで見開かされたまま、腹部を十字架の形に切り刻まれて。その残忍な手口から異常者の仕様と思われたが、捜査を嘲笑うかのように、新たな犠牲者が出て、当初の犯人のほかに模倣犯が加わった線も強まる。幾重にも隠された謎を解く鍵は、果たして何処に?実力派作家が入念に描く大型警察ミステリー。
ダンは霧の山道を妻とともにドライブ中、崖下に転落して瀕死の重傷を負った。無残に潰れた顔は手術でもとに戻ったが、失われた記憶は蘇らない。そして、ようやく退院したダンの前に立ちはだかる不可解な謎の数々。同乗の妻がかすり傷だけですんだのはなぜか?書斎に隠されていた妻と男の絡み合った写真は?ダンの心に恐ろしい疑念が暗雲のように拡がっていく…。