1991年9月発売
リンカーンズ・イン法曹学院の弁護士カントリップは、あきれてものも言えなかった。信託の運用をまかされていた一流の受託人グループが、九百万ポンドもの信託財産の相続人の名前を紛失してしまうとは。問題の信託は税金対策のためチャネル諸島に設置されており、相続人の名前は五人の受託人のうち弁護士のグリンしか知らなかった。ところがグリンは、別の信託の会合でケイマン諸島を訪れたさい、謎めいた溺死をとげてしまったのである。あわてた受託人の面々はチャネル諸島で会合を開き、助言を求めてカントリップを招いた。だが、ロンドンに陣取ったテイマー教授と若手弁護士たちがカントリップの送ってくるテレックスで事態の推移を刻一刻と見守るなか、またしても事故が…。信託メンバーをつぎつぎと襲う不可解な死の謎を、テイマー教授がテレックスで送られてくる情報をもとに鮮やかに解き明かす。アンソニー賞最優秀長篇賞受賞作。
時は24世紀。天の川銀河ソル星圏に、中心部の星圏から使者が訪れた。アンドロメダ銀河が天の川のエネルギーを盗もうとしており、これを阻止するためには各星圏が連合を結成して、敵工作員を発見する必要があるという。この急報の伝令に選ばれたのが、天の川最高度のオーラの持ち主フリント。かくして惑星さいはてのフリントは、オーラ転移による星間旅行に旅立った。〈魔法の国ザンス〉の作者による一大冒険SF開幕篇。
体内にコンピューターやサーボ・モーターを内蔵し、手足にレーザー・ガンを組みこんだコブラ部隊員ー。見かけはふつうの人と変わらないが、全身がまさに武器庫の超戦士である。そのコブラ部隊員ジョニー・モロウのたてた計画により、惑星クァサマの脅威は排除された。だが、三十年ちかくがすぎ、惑星クァサマの軌道上に投入された偵察衛星に不審な機能停止が発生した。そこでコブラ部隊員の派遣が決定されたのだが…。
惑星クァサマをひそかに調査するのに必要な連絡宇宙艇は、トロフト星人だけが持っている。そのトロフト星人は、派遣するコブラ部隊員にかつて活躍したジョニー・モロウの血縁を入れるように要求してきた。そこでコブラ隊員養成学校で初めての女性訓練生、ジョニーの孫娘で成績優秀なジャスミンが派遣されることになった。厳しい訓練のすえに、ついに惑星クァサマに到着したコブラ部隊員たちを待っていた恐るべき罠とは?
極貧のうちに死んだ父は、実は大地主の跡継ぎだった。だがどうやら、叔父がその財産を横取りしてしまったらしい。これを知った息子のシャンダニャックは、叔父をさがして船で旅立った。ところが、その船が海賊に襲撃されるしまつ。しかも、彼は海賊と共にフロリダにある〈不老不死の泉〉をさがしにいくはめに…。ゾンビーやヴードゥーの黒魔術師が出現する18世紀のカリブ海を舞台に展開する歴史ホラー・ファンタジイ。
火星の開発調整地域で見つかった二人の男の死体は、全身きれいにボイルされていた。その死人のひとりは“ジャンク屋”と呼ばれる臓器密売業者だったー。一方、異星からの謎の侵略者・エリミネーターの正体を追い求め、壮絶な死をとげたゴドー中尉の敵討ちをすべく、シン・ムナカタは情報部への転属を願い出たが…。違法な臓器売買と連邦宇宙軍内部にただよう不正の気配。やがて、ムナカタのまえに巨大な敵が現われた。
異星植民のための移民用巨大宇宙船の空間は限られている。しかもエネルギーはつねに不足気味。市長はエネルギー効率をあげるため公園をつぶしてしまうことに決めたが…。公園の取り壊しとともに飼われているウサギのホップとステップも殺されてしまう。友だちのウサギの命を救うため、子供たちが用いた窮余の一策とはー。表題作はじめ、アシモフばりのSFミステリ「転送室の殺人」などバラエティあふれる5篇を収録。
二人の仲間を失いつつも、アラブの若きテロリスト、ファーミは初めての暗殺任務をやり遂げる決意をした。標的は、イスラエルの原爆開発に携わる科学者ソカレフ。彼を追ってファーミはイギリスへ潜入、そこでIRAの闘士と合流して、着々と準備を進める。一方、暗殺計画を知ったイギリス側は、緊急警備体制をとり、射撃の名手ジミーをソカレフの護衛につけるが…。誇りを賭けた男たちの息詰まる闘いを描く冒険サスペンス。
ニック・チャールズね、といってもぐり酒場のカウンターに近寄ってきたのは、昔なじみの若い娘だった。母と離婚してそれきりになっている発明家の父に会いたいので探してほしいという。私は顧問弁護士に頼むよう勧めたが、数日後その発明家の秘書が死体で見つかった。だが、依然として発明家の消息は知れない。ハードボイルド小説の始祖がおしどり探偵ニックとノラの活躍を都会小説風に描く異色作。40年ぶりの新訳決定版。
シカゴの囮捜査官ジンボは犯罪組織に潜入し、ついに影のボスと接触した。マフィア壊滅は目前だった。が、その矢先、上司が作戦の中止を伝えてきた。かつてジンボが逮捕した凶悪殺人犯が出所し、彼を狙っているというのだー。捜査のためなら法をも犯す刑事と復讐だけに執念を燃やす殺人鬼の対決の時が迫る。大型新人が緊迫感溢れる筆致で描く男たちの物語。
松方光子は32歳、独身の新聞記者。社会部の第一線を経て、現在は世論調査室主任。煙草と英国の女流本格ミステリを愛好し、デスクの引出しにウィスキーの小瓶を隠し持つ一面もある。ほのかな愛情を寄せていた先輩記者の坂口が定年退職後、姿を消したことに疑問を抱き、調査を始めるが、新興リゾート地で彼女を待ち受けていたのは殺人事件と思いがけない真実だった。等身大の主人公を創造し、ミステリ界に新風を吹き込む気鋭の瑞々しいサスペンス。
港々を渡り歩いて気ままな“海のジプシー”暮らしを楽しんでいたジョン・ロセンデールは、母危篤の知らせを受け、故国イングランドへ向かった。じつは、彼は第28代ストウィ伯爵-没落した伯爵家から4年前に逃げ出した当主であった。彼の出奔は、1枚の絵が原因だった。ヴァン・ゴッホの初期の「ひまわり」。母の所有になるその絵は、逼迫した一族を救えるほどの価値のある傑作だったが、4年前に盗まれていた。疑いは絵の保管場所に入ることができたジョンにかけられた。身に覚えのない彼は、一族の白い目に耐えられず海へと逃げ出したのだった。母の死後、残された唯一の財産は精神薄弱である末の妹ジョージーナのための信託基金だけだった。ところが、それさえもジョンの双子の妹エリザベスが狙っていて、もし非情なエリザベスが後見することになれば、愛するジョージーナはどんな扱いを受けるかわからない。行方不明のヴァン・ゴッホを見つけ、コレクターに譲り渡して、ジョージーナの人生を守る。そう決意した彼だったが、何者かに命を狙われる羽目に…。ストーリーテラーの冒険サスペンス。
ネヴァダ州中南部にあるアメリカ空軍の極秘兵器研究所、ドリームランド。ここで、マクラナハン中佐を責任者として、科学技術の粋を結集した最新鋭機の開発が行なわれていた。その名は、XF-34Aドリームスター。コンピュータとパイロットの頭脳が一体化して飛ぶ、高機動性能を備えた夢の戦闘機である。ドリームスターには、傑出した飛行技術をもつ専属のテスト・パイロットがいた。だが彼は、KGBが送り込んだ長期潜入工作員マラクロフ大佐で、アメリカの軍事機密を本国に送り続けていたのだ。任務実行の機会をうかがっていたマラクロフ大佐は、警備の隙をついてドリームスターに乗り込み、母国に向けて飛び立った。強固な防空網を突破して進むドリームスター。ドリームスターの奪回に執念を燃やすマクラナハン中佐は、パイロットのパウエル大尉と共にチーターに乗り、追撃を開始した。炎の男マクラナハン中佐、その恋人ウェンディ、ドリームランドの司令官エリオット将軍など、『オールド・ドッグ出撃せよ』の登場人物がふたたび活躍。大空を舞台に、最新鋭戦闘機同士の壮絶な空中戦を描く航空冒険小説の最高傑作。
不思議な賦活物質をもつダルマをわがものにする野望のために、この巨大植物と共棲してきた惑星プロトコルをも根絶した恒星間帝国に十五年の歳月が経った。帝国は倦み、国家の黄昏は万民の目に明らかだった。そんなある日、齢百六十五歳になったシュラクサイの元に皇帝シビルピューマ五世から招きの親書が届いた。狂宴と拷問と淫行で人生の老期を迎えた皇帝は、不死の妙薬のことを妄執して、かつて帝国に謀反したフレッチェル大尉とプロトコルの首長の娘ラブ=ラブとの間に生まれた男子を利用する話をもちだしたのだ…。
世田谷区成城、高級住宅の自室で、若い女性が顔をつぶされて殺された。被害者は、長野県の成金大財閥の総帥・松平将史の長女、琴子だった。無残な死体の側には、クリスタルの将棋盤が置かれ、何故か盤上には詰将棋が…。第一発見者で松平家のお抱え運転手、平田均は、友人の推理作家・朝比奈耕作に助けを仰ぐが、残忍な殺人鬼の毒牙は美人姉妹に次々と襲いかかるのだった。大胆なトリックと息をのむサスペンスが激しく交錯する、スーパー・ミステリー。大好評、名探偵・朝比奈耕作シリーズ第二弾。
8月25日、静岡県由比町で発見された小松原功・美子夫妻の死体に駆けつけた捜査陣は当惑した。状況としては心中なのだが、28日から新婚旅行の予定だったことや美子がハンカチに口紅で“昌二郎あなたにも…”という謎の言葉を遺していたからである。美子の言葉から事件に巻き込まれた美子の従兄でフリージャーナリストの天知昌二郎は夫婦の不可解な結びつきに疑問を持ち、2人の過去を追った。