1991年発売
スターク・トンプソンがキティ・ゴールドマークとパーティで初めて会った時、これが運命の出会いになるとは夢にも思わなかった。名家出身のウォール街の弁護士と、成り上がりの美しい未亡人。だが数週間後、キティはスタークの勤める法律事務所に現れ、夫の遺産の運用を彼に依頼した。と同時に、二人のめくるめく情事も始まった。自ら事業を手がけるキティは、金に対して飽くなき欲望を抱いていた。彼女がもたらす謎のインサイダー情報をもとに、二人はひそかに莫大な利益を上げていった。しかし、ついに二人に危機が訪れた。あるインサイダー取引に捜査当局が目をつけたのだ。司法の手が伸びてくるのは時間の問題だった。80年代の狂乱のウォール街を舞台に、危険な恋と息づまるマネー・ウォーズを描くサスペンス長篇。
雷鳴とともに現れ、刹那のうちに人を噛み裂く謎の殺戮者-。北海道・大雪山連峰で起きた大量殺人事件は、同地に予定されていた宇宙飛行士訓練センターの建設をついに挫折に追い込んだ。ただ一人、犯人らしき“怪物”と対峙したルポライターの美神佳鷹は、その正体を追い、長野へと向かう。一方、秋田県境の白神山地ではマタギ十数人が殺害される事件が起きていた。その傷痕は、犯人が大雪山の事件と同一であることを物語っていた。犯人の目的は何か。そして事件のある所必ず現れる謎の男、木貂雷介の正体とは…。
1990年8月18日。セキュリティ・コマンドーの山谷剛は、イラクのバスラに潜入した。イラク軍に捕われている英国謀報部員を救出するためだ。見事、作戦は成功したが、その代償は高くついた。山谷は、効き腕である右腕前部を失ってしまったのだ。失意の山谷は故郷の秋田県阿仁に帰り、マタギとなるべく左撃ちの訓練にあけくれているとき、昔馴染みの警察庁公安部次長の相羽から困難な事件処理をもちかけられる。事件が公になれば日本の土台が崩壊するという内容だった…。期待の大型新人の鮮烈なハードロマン。
深夜、リサーチ会社に勤める磯見史郎のもとに一本の電話がかかった。郷里・奥越高原のQ市で一軒宿を営む、高校時代の友人・岩井純一からだった。「ある調査を頼みたい」と告げた後、電話は不意に切れた。翌朝、史郎は、岩井が事故死したとの報を受ける。彼の岩が野山荘は、リゾート開発のため、ダムの水没地域に指定されていた。開発利権をめぐる市長と業者の黒い噂を探っていた岩井は、重大な秘密をつかんでいた。10年ぶりに故郷に飛んだ史郎を待ち受けていたものは…。俊英が描く迫真のスーパー・サスペンス。
事の始まりは、切支舟の瑠璃と、元・長崎奉行竹中采女正の娘、時姫が、共に身も心も美しすぎるところにあった。采女正は、瑠璃が実弟重信を慕っているのを承知のうえで瑠璃を監禁し、一方、采女正の家老不破の伜保太郎も時姫に許婚者がいるのに横恋慕。時姫と瑠璃に頼まれた羽車善三郎と白雉円之介の二剣士は、大阪・長崎を目指して旅立った。その円之介を追って刺客鬼門竜峰斎もまた…。時代長篇。
神々との戦いのさなか、何者かによって火星から石炭紀の地球の転送されたハイパー・マグドナルドにも、ようやく事態の推移が理解されてきた。全ては人類の地球脱出にむけて、世界頭脳が周到に用意した計画の一環だったのだ。ハイパーもまた遺伝子操作を受けて誕生し、敗色濃い地球人を、神々の専制から救う任務を帯びていた。世界頭脳が描く未来世紀の方舟計画とは?スペース・オペラ巨篇。
音楽教師・杉山博之が変死した。杉山が勤務する音楽教室の主宰者・高川伸男は、事件の真相追及を探偵・浅見光彦に依頼する。浅見は、杉山の祖母サキが恐山のイタコであり、「博之は北から来る何かによって殺される」と予言していたことを知る。だが、高川もまた不審な死を遂げてしまう。杉山と高川のかつての教え子・藤波紹子の協力を得て、サキの不可思議な言葉を追い、浅見は北へと旅立つが…。本格長篇推理。
紀州の山間にある城の内村の長老格・一ノ瀬大蔵が惨殺された。息子の大地は、ある致命的な宿命を守るため、父・大蔵の首を切り落として持ち帰る。目撃者の証言から犯人は黒衣の山伏姿の集団であることが判明するが、村の長老格の人物が相次いで殺害されてしまう。犯人を追い始めた大地は、事件が1300年に亙る怨念に起因していることを知り、さらに同族組織の内部にも裏切り者が存在することを漠然と掴み取るー。
吉野での大峰入峰を終えたばかりの修行僧、土岐竜海。偶然に新仏のある家を訪れると、そこには妖艶な未亡人、静香の誘惑が…。熟女の魔力に負けた竜海は、その家にとどまり、やがて娘の美季と結婚するが、静香の魅力を忘れきれない竜海は義母との情事を重ねる。これを目撃した美季は逆上して母親を殺し、みずからの命も断った…。戒めを破った僧、竜海の凌辱・邪淫の“女食巡礼”が始まる。長篇官能ミステリー。