1991年発売
元アイドルタレントの阿季子は若手敏腕プロデュサーと結婚、子供にもめぐまれ何不自由ない幸せな生活をおくっていた。テレビ界へのカムバックも決まった12月、彼女は夫の知人や高校時代の友人を招いてホームパーティを開いた。ところがその日に送られてきた宅急便の袋の中には顔の部分を無数の針で刺した阿季子のブロマイドが入っていた。そしてもう一個の宅急便にも悪意の品が…。阿季子の周辺で小さな亀裂がしだいに重なり合っていく。
星ヶ丘市は星空が名物の小さな地方都市。転校生の三田村絵理は、クラスメート・相原淳の誘いで町の不思議な骨董店〈有宝堂〉に足を踏み入れる。そしてその日から、少年と少女のひと夏の冒険がはじまる…。ファンタスティック・ロマンの新鋭が贈る、新しいスタイルの青春イキイキ・ストーリー、ここに登場。
花の高校一年生、神無木良太が入学した私立神堂学園は、“日本の頭脳中枢”といわれるS学園都市にある。創設者は良太のおじいちゃんで、理事長は伯父さんという、小さな学校だ。ところがそこの学校ときたら、教室の扉を開ければカッパが立ってるし、クラスメートの美少女は二階の窓からヘーキで出入りするし、一体こいつらなんなんだ!?実は彼らの正体は、あるプロジェクトのために、全国から密かに集められた妖怪たちだった…。ハイテク都市を舞台にモンスターたちが駆け巡る、新鋭・霜島ケイのスーパーアクション。
秋田県・男鹿で、大晦日に初嫁が殺された。動機不明の殺人に、調査依頼を受けた郷土史家・実相寺禅堂とアシスタントの佐緒里を待っていたのは、ナマハゲによる威嚇と警告だった。ところが、殺された初嫁は中国人で、しかも、太平洋戦争中の日本で起きた中国人暴動事件の生き残りの娘だったとわかり…。戦時下の日本の暗部をえぐる書下ろし長篇ミステリー。
帝の勅命により「鬼」退治を命ぜられ京に上った上総の国守源頼光は、渡辺綱、卜部季武、坂田金時、碓井貞光らの活躍により羅城門において首尾よく「鬼」を倒すのだが、意外にも彼らが倒した「鬼」の姿は人間と寸分違わぬものだった。これが人を食らうという「鬼」なのか?人もまた「鬼」になれるのか?人を遥かに越えたあの力は何なのか?彼ら五人の心の中には、しだいにその正体に対する疑問が脹らみつつあった。そんなおり、頼光とその一党は帝の住吉神社参詣の供を命じられるのだったが-。「鬼」の正体とは何なのか、その真の目的とは?平安京を舞台に新鋭が描くファンタジー伝奇ロマン第二巻。
すべての帆を揚げて走りに走り、ファビアンはついにニューオーリンズにたどりついた。この地の司令官パターソンは、階級は下だが思慮深く、現地の事情に精通していた。信頼できる男だ、ファビアンはこの男と協力してイギリス軍を要撃しようと思った。力強い味方がもう一人いた。いとこのギデオンである。一方つらい役目もあった-。
古くからの宗教的救済と現代文明への渇望と混沌が渦巻くチベット社会-そのチベット民族の歴史文化、民族の運命をまるごと掴むべく、循環あるいはねじれた小説時間の手法を駆使して描く新しいチベット文学の全貌を伝える待望の短篇集。
時は昭和2年。加藤唐九郎から借り受けた芝居の台本が、焼物原料業を瀬戸で営む加藤庄三の後の人生を変える。瀬戸の窯神・加藤民吉と九州に置き去りにしたとも伝わる現地妻との哀しい物語であった。民吉が新しい焼もの技術を九州で盗み出したという通説は違うのではないか。「第69回オール読物新人賞」「第12回小説CLUB新人賞」受賞作家である著者自らが、カルチャー・サスペンスと名付ける書下ろし最新作。