1991年発売
アンデルセンが憧れの国イタリアを舞台にくりひろげた愛の物語『即興詩人』は、鴎外の格調高い文章によって紹介されて以来、広く人々の心を捉えつづけてきた。翻訳文学の傑作であり、明治文学史上記念すべき作品である。
原作が童話集ほどの名声を得なかったにもかかわらず、日本において今なお多くの読者をかちえ続けているのは、いつに鴎外の名訳にあることはいうまでもない。自由自在の語法と華麗でリズミカルな文章によって醸し出されるロマン的雰囲気は遙かに原作を凌ぎ、その後の日本文学に多大の影響を与えた。
豪邸に住み、酒色に耽り、人民の膏血をしぼる幹部たち。天安門事件を題材にとりながら、中国の支配者たちの真実に迫る。中国政治小説の第一人者が書き下ろした快著、遂に翻訳なる。
新宿で爆発し六本木を戦場と変え、京都を狂乱の都とした、一条寺文磨と尾花マリの純愛の終着点はいずこ?京都でマリと引き裂かれた文磨のもとに、マリは北海道にいるとの噂が次々に届き、彼はひとり海を渡る。待ちうけるのは卑劣極まりない敵の罠また罠。釧路湿原、阿寒湖、札幌…。二人の再会は果してなるか?「ダイハード」まっ青のノンストップロマン完結。
勇者の中の勇者、伝説の英雄、矢沢高雄は、死んでしまったはずだった。だが、いま、魔女マダム・マヌー側について、しかもたった一人で世界各地で大量殺戮を繰り返し始めた男は、矢沢高雄の蘇りとしか考えられない。沢村ゆりとその仲間は、この最強の新戦士を敵にまわすことになった。その結果はー。
「お帰り、イーゴリ」。帰宅したベッカーを待っていたのは、コンピューターのディスプレイに映し出されたKGBのメッセージだった。それは16年のスリーパー生活=リッチなアメリカ市民としての優雅な日常と、生まれつつある愛から彼をもぎ取る悪魔の声だった。手に汗握るエスピオナージュ長編。
天皇に殉じて割腹、自死を遂げた作家の死に衝撃を受けた、同じ主題を共有するもう1人の作家が魂の奥底までを支配する〈天皇制〉の枷をうち破って想像力駆使し放つ“狂気を孕む同時代史”の表題作。宇宙船基地より逃走する男が日本の現人神による救済を夢見る「月の男」。──全く異なる2つの文体により、現代人の危機を深刻、ユーモラスに描く中篇小説2篇。
バリ島をオートバイで駆ける拓也、21歳。ちょっと不器用で、ひとりで生きることを習い性にしている青年。そして、気が強く、どこか陰をひきずっているイラストレーターの美樹、28歳。熱帯の異国情緒を背景にふたりの恋が静かに熱く燃えあがる…。
東京帝大に入学するため九州から上京した小川三四郎にとって、東京は新鮮な驚きに満ちていた。里見美禰子と出会い、強く魅かれてゆく自分に気づいたのも、その驚きのひとつだった…。若者の恋と失恋を描いて常に新たな感動を呼ぶ青春文学の傑作。
ユダヤ系アメリカ人の作家と結婚した道子、2人の息子=15歳のジョンと13歳の脳障害のケン。南カリフォルニヤの真青な冬の空と海、3週間前に施設に入れたケンが帰宅した週末、行儀の良いケンとは対照的な夫婦喧嘩ー「遠来の客」。13年ぶりのニューヨーク滞在。夫の一族再会と血族の聖なる儀式への彼女の憂鬱ー「過越しの祭」。自由を求めて渡米した道子の予期せぬ戦いを描く。
個人事務所を営む弁護士レイチェル・ゴールドは、かつての上司から奇妙な依頼を受けた。ペット墓地に埋葬された“何か”を調べて欲しいというのだ。その墓の信託基金を巡って彼の法律事務所が微妙な立場に陥っていた。ペットの墓に冠された謎の言葉カナン。レイチェルの調査が始まる。やがて彼女の周囲に次々と起こる異変…最もアメリカ的な街シカゴを疾走する長編サスペンス。
フォークランド紛争渦中の1982年、アルゼンチン巡洋艦ベルグラノは、英国原潜コンカラーによってなんの警告もなく撃沈された。そのコンカラーがいま、スコットランド奥地で極秘の魚雷実験を行なっている。復讐心に燃えるアルゼンチン人有志は、ゲリラ部隊による前代末聞の破壊工作を決意。特殊能力を持つ5人のアルゼンチン人チームによる大胆不敵な原潜撃沈作戦がはじまった。