1992年10月発売
愛車スカイラインGTRを優秀なメカニック・新村芳実の力を得てN1仕様に改造し、六時間耐久レースに出場した瀬木治男・北路滋チームは、好成績をあげてレースの余韻に浸っていた。その興奮冷めやらぬうちに、瀬木はニスモの高田肇の誘いで日本のトップ・ドライバーを相手にするインターTECレースに参加することを決意した。グループA仕様に改造するにはかなりの費用が必要だったが、スポンサーが現れ、金銭面もクリアに。アマチュアの夢を乗せ、富士スピードウェイを、再び瀬木・北路チームが疾駆する。
若い女性がUFOに殺された。数々の伝説に彩られた那智とはいえ、石倉峠で起こった事件は、実に不可思議な殺人だった。被害者はAGSのコネクティで、UFOと交信するために峠で夜を過ごしたという。窒息死だったが、暴力を加えられた跡もない。AGSの指導者は“宇宙的な強い力に打たれたのだ”と主張したが…。大雲取越えの予定を変更して捜査に乗り出した柳下二匹だったが、新興宗教めいたグループに、持前の洞察力も鈍りがち。苦悩する柳下を尻目に、那智の浜でさらに悲惨な殺人が。好評シリーズ第2弾。
島岡辰治は腕利きの胴師だ。それも手本引きの、本物の腕利きなのだ。胴師は、賭場の主宰役。その腕次第で、親分の儲けは天地の差だ。謙蔵親分の二号とデキた辰治は、静岡から東京へと流れた。先々で、縄張り目当ての出入りと、オンナがらみのもめ事。一宿の恩もあれば、渡世のしがらみも重い。頼れるのは、自分の腕っきり。やっと堅気の女子大生と所帯は持ったが…。若き博徒の半生を描く長篇問題作。
戦国末期の近江国。浅井長政に仕える藤党虎高の次男・与吉は、十三歳で上意討ちを果たし、高虎を名乗る。元亀元年、初陣に破れた高虎は近江を出、浪々の末、織田信澄、次いで羽柴長秀の下へ。播磨攻めなどで手柄を立てるも、戦後の処遇を嫌い再び都を去る。織田、豊臣、徳川と、次々と主君を変え、終には伊勢・伊賀三十二万石の大名となった戦国武将を描く傑作時代長篇。
北一馬は米大陸を根城に、愛機DC3を駆る運び屋だが、なぜか事件がついて回る。今回もアマゾンの奥地で、トラブルだ。受け取った運賃と愛機が盗まれ、おまけに日系の少女の父親捜しまで背負い込んでしまった。すべての元凶は、インディオが隠したという黄金都市にあった。その財宝を狙って、諜報組織やシンジケート、それに革命ゲリラや山師までがからんで、局面は予想外な展開に…。長篇冒険シリーズ。
辺境を旅する巨大な移動街区-無菌の平和を謳う街に、貴族の影があった。町長ミンに雇われ、街へ上がるD。しかし事件の鍵は、両親と共に一度は街から出た娘-ローリィが握っていた!闇に生きる者への憧れと畏れ…圧倒的想像力で迫るシリーズ第4弾。
ぼくらはいつか光る船に乗り、テレヴィジョンが映すあの星をめざすだろう。〈鐶の星〉のビルディングからの脱出を夢見て、永遠の「夏休み」を過ごす少年たちを描く、書下し長篇小説。
碧い惑星はあるだろうか、ボディを離れたぼくらの〈帰還〉の涯てに。消滅から再生へ向かうビルディングの混沌のなか、〈離脱〉へひた走る少年とスピリットの行方を描く、書下し長篇小説。
朝鮮戦争下の基地佐世保の地下監房にとらわれた日本人労働者、朝鮮人の男女ー。彼、彼女らへの執拗な訊問、蘇える記憶などが交錯しあう中からうかぶ戦争犯罪の本質と、内面の真実。実験的手法を駆使した井上文学中期の代表作。
“ボォーン、ボォーン、ウィップ、ウィップ”、世界の終わりにひびく鯨たちのうたをきけー。調査捕鯨船と反捕鯨船グループのサイケデリックな迷走に、『白鯨』の黙示を甦えらせて絶讃を浴びた、新世代の旗手による第三回三島賞受賞作。
スペインへの旅の途上、運命の夏の一夜、人妻マリアは、夫ピエールとその若く謎めいた恋人クレールへの嫉妬に身もだえながら、幼い妻をその手にかけた殺人犯ロドリゴ・パエストラと悲劇的な邂逅を遂げる…。デュラスが、血と悦楽の国スペインを舞台に、それぞれ狂気を秘めた四人の男女の愛のかたちを流麗な筆致で描き切ったフランス文学の秀作、待望の文庫化。
人けのない古寺で密会する老年ながら精気に溢れた二人の男。政権与党内で次期総裁の座を射止めんとする第二、第三派閥の参謀同士が互いの肚の内を探りあっているのだ。総理総裁現職の大嶋雄策が党内の不文律を無視し、三選を目指す動きを見せたため政界は大混乱に陥っていた。裏切り、疑心、中傷の渦巻く修羅場で飽くなき覇権争いを制する者は。
奈良で売薬を業としていた大森通仙一家に思わぬ災難がふりかかってきた。店の前に鹿の死体が置かれていたのだ。鹿殺しの堅い禁制を破り、所払いとなった通仙親子に襲いかかる、数奇な運命から、いつしか江戸吉原の花魁になっていた娘のおたかだったが…。(第1話曲水の盃)。“いろまち”にまつわる物語を艶に絡めて描く浮世草紙。全十一話の傑作集。
1944年4月、アメリカ・タコマ市にあるB-29製造工場の爆撃に成功した「富岳」隊に次なる命令が下った。それは、ニューギニアにいるマッカーサー将軍の爆殺計画だった。ブーゲンビル島で撃墜された山本五十六長官の仇討ちに燃える近藤正己少佐は、18機の富岳を率いて出撃していった。さらに、囮部隊として空母大鳳を旗艦とする第1機動艦隊がパラオ島方面に進出…。だが、富岳隊撃滅の責任者であるドナルド・フォス中尉は、日本軍の意図を察知、迎撃態勢を整えていた。富岳隊に肉迫するP-51マスタング。新型戦闘機「旋風」登場。息をのむ大空中戦。絶好調書下ろし長編スペクタクル小説の圧巻。