1992年10月発売
二年で終わる予定の研修期間がなぜか延長されて、われらが田中幸太は、いよいよ第一志望の外科に配属となった。しかし、ここに運ばれてくる患者は瀕死の状態の人ばかり。この最後の関門を突破しなくては、幸太は晴れて正式の医者になれないのだが…。「ふたたび腹部外科」。その他、現代医学が抱える問題点を真剣に笑う二篇を収録ー。スーパー・ホスピタル羅門堂病院を舞台に研修医・田中幸太の活躍を描くシリーズ第三弾。
星降る夜のデートのさなか、〈星の怪物〉にいいなずけの少女をさらわれた少年ウィクルは、捜索の旅に出た。連れは勇名を馳せている女ガイドのシルヴァ。〈星の怪物〉の棲みかを求めて、ふたりは宇宙に翔びたった…。試練の旅を経るうちに、か弱いとも思えた少年は、逞しさを増していく。やがて、〈星の怪物〉が少女をつれさらう恐るべき目的が明らかになった。はたして、ウィクルはいいなずけを再び自分の腕のなかに抱くことができるのだろうか?SFファンタジィ巨篇。
1912年、処女航海で氷山と衝突、1500人以上の乗員乗客とともに大西洋の波間に消えた悲劇の豪華客船タイタニック。その船内に3200万ドル相当の金塊が眠っている。タイタニックの積荷目録に隠された暗号から驚くべき秘密を知った元暗号解読専門家モンタギューは、潜水艇の専門家ホーク、海洋学者ヴァン・ブーレンとともに海庭に沈む金塊の回収に乗り出す。冒険好きの大富豪レファーツが資金と船を提供して、探検隊はタイタニックの沈没地点に向かった。だが、現場は1万2千フィートの深海のうえ、潜水艇に原因不明の故障が続発。しかも沈没船に近づくホークたちを待ちかまえていたのは、誰もいるはずのないタイタニックの船窓にたたずむ女性の姿だった。史上最大の沈没船タイタニックに挑む探険隊と、彼らをつぎつぎに襲う謎。『大統領専用機行方を絶つ』などの作品で知られる著者が放つ深海冒険ミステリ。
最初の探検から18年。タイタニックはいまだ謎を秘め、大西洋の深海に横たわっていた。モンタギューらタイタニック探検を知ったアメリカ大統領じきじきの命令で、新たな探検隊が組織された。アメリカ海軍の全面的支援のもと、モンタギュー、超心理学者のヘニングも加わり、ふたたび金塊回収の試みが開始される。だが、最新鋭の深海潜水服やレーザーを駆使してタイタニックに挑む彼らの前に、またも不可解な出気事が立ちはだかった-。ブリッジの残骸のなかには船員服姿の人影がたたずみ、潜水艇には巨大な魚類が襲いかかってきたのだ。はたして探検隊は船倉から金塊を発見、回収することができるのか?最新の深海探索技術を織り込みながら、悲劇の豪華客船の過去と現在を迫真の筆致で描く冒険巨篇。
愛車スカイラインGTRを優秀なメカニック・新村芳実の力を得てN1仕様に改造し、六時間耐久レースに出場した瀬木治男・北路滋チームは、好成績をあげてレースの余韻に浸っていた。その興奮冷めやらぬうちに、瀬木はニスモの高田肇の誘いで日本のトップ・ドライバーを相手にするインターTECレースに参加することを決意した。グループA仕様に改造するにはかなりの費用が必要だったが、スポンサーが現れ、金銭面もクリアに。アマチュアの夢を乗せ、富士スピードウェイを、再び瀬木・北路チームが疾駆する。
若い女性がUFOに殺された。数々の伝説に彩られた那智とはいえ、石倉峠で起こった事件は、実に不可思議な殺人だった。被害者はAGSのコネクティで、UFOと交信するために峠で夜を過ごしたという。窒息死だったが、暴力を加えられた跡もない。AGSの指導者は“宇宙的な強い力に打たれたのだ”と主張したが…。大雲取越えの予定を変更して捜査に乗り出した柳下二匹だったが、新興宗教めいたグループに、持前の洞察力も鈍りがち。苦悩する柳下を尻目に、那智の浜でさらに悲惨な殺人が。好評シリーズ第2弾。
島岡辰治は腕利きの胴師だ。それも手本引きの、本物の腕利きなのだ。胴師は、賭場の主宰役。その腕次第で、親分の儲けは天地の差だ。謙蔵親分の二号とデキた辰治は、静岡から東京へと流れた。先々で、縄張り目当ての出入りと、オンナがらみのもめ事。一宿の恩もあれば、渡世のしがらみも重い。頼れるのは、自分の腕っきり。やっと堅気の女子大生と所帯は持ったが…。若き博徒の半生を描く長篇問題作。
戦国末期の近江国。浅井長政に仕える藤党虎高の次男・与吉は、十三歳で上意討ちを果たし、高虎を名乗る。元亀元年、初陣に破れた高虎は近江を出、浪々の末、織田信澄、次いで羽柴長秀の下へ。播磨攻めなどで手柄を立てるも、戦後の処遇を嫌い再び都を去る。織田、豊臣、徳川と、次々と主君を変え、終には伊勢・伊賀三十二万石の大名となった戦国武将を描く傑作時代長篇。
北一馬は米大陸を根城に、愛機DC3を駆る運び屋だが、なぜか事件がついて回る。今回もアマゾンの奥地で、トラブルだ。受け取った運賃と愛機が盗まれ、おまけに日系の少女の父親捜しまで背負い込んでしまった。すべての元凶は、インディオが隠したという黄金都市にあった。その財宝を狙って、諜報組織やシンジケート、それに革命ゲリラや山師までがからんで、局面は予想外な展開に…。長篇冒険シリーズ。
富豪の実業家がハイテク武器によって惨殺され、強大な破壊力をもつプラスチック爆弾が盗まれる。時を同じくして海洋では、ミサイル28基を搭載した原子力潜水艦がハイジャックされた。合衆国の元特殊工作員キンバリンが捜査にのりだした。2つの地点で起きた事件が結ばれるときー、それはヨハネ黙示録さながら人類滅亡を告げるラッパが高らかに鳴るときだった。壮大な規模で展開するアドベンチャー・スリラー。
辺境を旅する巨大な移動街区-無菌の平和を謳う街に、貴族の影があった。町長ミンに雇われ、街へ上がるD。しかし事件の鍵は、両親と共に一度は街から出た娘-ローリィが握っていた!闇に生きる者への憧れと畏れ…圧倒的想像力で迫るシリーズ第4弾。
ぼくらはいつか光る船に乗り、テレヴィジョンが映すあの星をめざすだろう。〈鐶の星〉のビルディングからの脱出を夢見て、永遠の「夏休み」を過ごす少年たちを描く、書下し長篇小説。
碧い惑星はあるだろうか、ボディを離れたぼくらの〈帰還〉の涯てに。消滅から再生へ向かうビルディングの混沌のなか、〈離脱〉へひた走る少年とスピリットの行方を描く、書下し長篇小説。
朝鮮戦争下の基地佐世保の地下監房にとらわれた日本人労働者、朝鮮人の男女ー。彼、彼女らへの執拗な訊問、蘇える記憶などが交錯しあう中からうかぶ戦争犯罪の本質と、内面の真実。実験的手法を駆使した井上文学中期の代表作。
“ボォーン、ボォーン、ウィップ、ウィップ”、世界の終わりにひびく鯨たちのうたをきけー。調査捕鯨船と反捕鯨船グループのサイケデリックな迷走に、『白鯨』の黙示を甦えらせて絶讃を浴びた、新世代の旗手による第三回三島賞受賞作。