1992年10月発売
ヒマラヤに魅せられた山岳写真家・和人の突然の死。典型的大学生活を謳歌する弟・秀人は、ある日、和人の遺言に従いやむなく兄の命の恩人であるシュルパ族のテンジンに、お礼の「自転車」を届ける旅に出る。ネパールの大地を背景に様々な異文化体験に遭遇し、自己に目醒めてゆく秀人の姿を、21世紀世代へエールを込めてシナリオ作家石森史郎が書き下ろす、感動のヒューマンドラマ。
人妻のベアトリスのアルバイトはヌードモデル。が、もちろん夫には秘密。男たちの視線の前におしげもなくさまざまな姿態をさらすたびに、彼女は生きる喜びにうち震える。そんある日、突然、…。ブリジット・ラエが、自らのAV女優体験をもとに、〈見られること〉で高まっていく女の官能を、大胆な描写とともにみごとに描きあげたエロティック小説。
1989年6月4日「血の日曜日」事件以来、事実上、発表禁止とされた莫言は、黙示録的小説「花兵を抱く女」をひっさげて、二年ぶりに文壇復活を遂げた。-地域共同体も血縁共同体も崩壊に瀕している現代中国農村の状況を的確に描き、新しい中国文学の胎動を伝える待望の第2短篇集。
レズビアン関係にある里佳子と有希は探偵事務所を開設中…、とはいえ、実際はカラダを張って罠にはめ、離婚を成立させてしまうのが本業である。男色の代議士夫婦、マザコンの夫に泣く妻、サドの夫を持つ女流評論家…。若い肉体を駆使して事件にのぞむ彼女たちと、合い間に戯れるふたりの迫力のレズプレイが見もの…。
モグラは最高の性を満喫する動物だという。同窓会で会った旧友の余りの若々しさやはつらつとした姿。それは性の歓びからという「性至上論」を聞き、美沙は、性に開眼する。夫にその性の至理を求め、遂に死に至るまで究極の性を満喫するモグラ以上の性技を会得する。
数々の性遍歴を重ねた大作は、「人見悟空」となって泣く泣く大作に従った、華族出身の冷ややかな妻妙子に、「女房に惚れられないような男は男じゃない」と言われた。そこで大作は、夫婦愛を得るためにあらゆる努力を重ねる。
互いの想いを残しながら別れてしまった男女が10数年ぶりに再会した時、女は既に結婚を決意し、男には離れ難い恋人がいた…。距離も、時間も、そして祝福された結婚生活も、この愛を冷やすことはできなかった。想っても想っても届かない心、せつなくつづる珠玉のラブストーリー。
中高一貫教育の私立男子校“アンリ・ド・ラクロワ学園”のマリアこと伊予部和と寮の同室になった山本志信は、昨年度和と同室で和に心を寄せる平井田慈雨が無理やり和を襲った現場を目撃し、慈雨の恋路を阻む決心をする。そんな折、学園祭のマドンナ役を巡って思わぬ事件が起こった。
湯島育ちの御意見無用、主は浮名の二千石と端唄にまでうたわれる江戸きっての蕩児・神保長十郎義久が、荒らくれどもが跋扈する一触即発の危険地帯、幕府天領・甲州へ乗りこんだ。次つぎに起る難問怪事件…。無頼旗本をひこつれて、勤番支配・長十郎の諸刃くずしの剣が舞う。
行方不明の億万長者の老人が身につけていた27カラットのダイヤが、野積みされた古タイヤ火災跡から発見された。保険金目当ての殺人か?だが20億の保険金の支払は、老人の死亡日がいつか、に掛っていた。真相究明に乗出した保険調査員が遺体で発見され事件は核心へ…。保険金殺人疑惑の過去をもつ、美貌の未亡人由紀江は、大胆にも名警部・宮之原の出馬を要請する。雄大な阿蘇のパノラマを舞台に描く書下ろし旅情ミステリー。
人間は誰もが天使の理性と狼の野性を合わせ持つ。そして天使の仮面に飽きた時、人間は狼への〈変身〉を願望する。狼となった人間の出現する時代は。舞台は。いや、過去、現在、未来、人間の存在するところすべてに、人間の二面性ある限り、変身願望ある限り、〈狼人間〉は跳梁し続けるのだ。10人のベテラン作家や期待の新鋭が、最も現代的なモンスター=〈狼人間〉をテーマに筆を振るい、ホラー、サスペンス、SFのみならず、哲学的領域にまで踏み込むアンソロジーの決定版。
永い封建社会が培ってきた矛盾からの脱出を試みつつもそれを果たせず苦悩しつづけてきたひとりの典型的な中国知識分子。彼の辿った悲運を40年代から解放後という時代を背景に描いた長編小説。