1992年3月発売
血気にはやる若者ゲドは、魔法の修行中、傲りと妬みの心から禁じられた呪文を唱え、死の国の影を呼び出してしまう。その影(実は自らの魔性の影)との激しい戦いを通して、ゲドは光と闇の世界の神秘に触れ、人生の真実に目覚めてゆく。神話的な多島海世界を舞台に、「無意識の闇」の謎に迫るファンタジーの傑作。
早春の乗鞍高原のペンションに集まったのは、オーディションに合格した若き男女七名。これから舞台稽古が始まるのだ。豪雪に襲われ孤立した山荘での殺人劇である。だが一人また一人、現実に仲間が消えていくにつれ、彼らの中に疑惑が生じる。果してこれは本当に芝居なのか、と。一度限りの大技、読者を直撃。
刑事が追う、女が逃げる。過去のある男と女が出会ったのは、殺人事件の疑惑の中だった。女は本当に財産目当てに夫を焼き殺したのか。はぐれ刑事として違法捜査へ踏み込む刑事は窮地に立たされ、執念も実を結ばず終わるのか?欲望の闇の底から浮かび上がる哀しい人間の営みを社会派推理の旗手が描く。
名君武帝を得て、空前の黄金期を迎えた前漢にも、やがて衰退の風が吹き始める。西暦8年、帝位を簒奪した王莽は新を樹てた。しかし、その政権は余りにもあっけなく滅ぶ。-英雄は激動の時代に生まれる。大陸も狭しと濶歩した梟雄豪傑たち、そして美姫。その確執葛藤の織りなす人間模様を活写。
誇り高い美女からの招待で信州の山荘に出かけた法月警視だが、招待客が一堂に会したその夜、美女が殺される。建物の周囲は雪一色、そして彼女がいたはずの離れまで、犯人らしい人物の足跡もついていないのだ。この奇怪な密室殺人の謎に法月警視の息子綸太郎が挑戦する。出色本格推理。
アメリカ合衆国国立防疫センターで不審火による火災事故が発生した。消火作業は迅速で、死傷者ゼロ。焼失したのは、C棟三階の医薬品二十万トンであった。心臓移植の若き日本人学徒・作田が、留学先のアフリカで直面したのは、白人によるおそるべき黒人差別の現実であった。やがて、黒人ゲットーで、絶滅したはずの天然痘が大量発生する。平和と繁栄に酔う日本を遠く離れて、作田の怒りと正義のたたかいがはじまる。サスペンスに満ちた冒険ハードボイルドの傑作。