1992年5月発売
動乱の東欧から亡命してきた経歴をもつ老人が、不意に消息を絶った。捜索を依頼されたわたしは相手の信心深さを恃んで教会に網を張ったが、思惑どおり現われた老人は、声をかけるや忽然と夜の闇に消えた。この老人は一体…?祖国を喪い、革命に憑かれた人々のあいだに真相を追う、片腕の探偵フォーチューン。東欧抑圧の歴史が現代アメリカに刻みつけた革命の傷痕とは何か?
飛ぶ鳥を落とす勢いの映画プロデューサー、ギル。彼のもとに、ある日一本のビデオテープが送られてきた。そしてそこには、数日前に焼き殺されたある俳優の断末魔の姿が、生々しく映しだされていたのだ。誰が、何のために?そうだ、幼なじみのマクレアリに調査を頼もう。いま彼は夫婦で私立探偵事務所を開いている…。甦る過去の怨念。クィン&マクレアリ・シリーズ第2弾。
故国ガルキスの危機を救わんとするケリシュとフォロルキンは、残る五つの鍵を求めて旅を続ける。醜男のギジャボルゴと仔猫のライラニイを旅の道づれに、一行は熱帯湿原から常冬の国へ、そしてケリシュの亡き母の故郷、エランダーシュの大草原へとわけいるが…。そこここで見聞きし出会う人々のすべてが、彼らにとって驚きの連続だ。次々に独特の異世界が展開する入魂の第二巻。
水の惑星での敗北は、海賊結社〈神の怒り〉にとって大きな痛手となった。渦中にあったサイレンスたちはからくも覇国の手を逃れるが、その過程で思いがけず彼女の稀有な素質が見出された…。異例な、女魔術師としての能力が。そのサイレンスが、覇王に反旗を翻す惑星総督から、覇王の女宮に囚われた娘の奪還を依頼された。失われた地球への手掛りと引換えに。魔術的宇宙活劇。
英国商船の船長チッザムは、大西洋を航行中ドイツのUボートに乗船を撃沈され、捕虜となった。ところが収容されたのは通常の捕虜収容所ではなく、彼はそこで拷問に近い尋問を繰り返し受けるはめになった。しかも捕虜仲間たちまで、彼に冷たくあたるのだ。なんとか脱走しようと策を練るチッザム。しかしチャンスは向こうから訪れた。カナダ軍捕虜とフランス・レジスタンスの立てた脱走計画に参加しないかと、話をもちかけられたのだ。
不思議な捕虜収容所をからくも脱出し、英国に戻ったチッザム。しかし彼の周囲には、常に死と疑惑の黒い影がつきまとっていた。背後に潜む何者かが、彼を謀略戦のまっただなかに陥れたに違いない。彼は生還の喜びにひたる間もなく、今度は連合軍側の厳しい尋問にさらされるはめになった…。きさまは捕虜収容所で転向したのだろう。寝返って、ドイツ軍のスパイになったのだ。はたしてチッザムは、その疑いを晴らすことができるか?
美しい海、澄みきった湖、居心地のよい旅篭、古いテニスコート…。そんな風景を抱いて静まりかえる村々と、そこに生きるちょっぴり風変わりな人々。スコットランドの作家ダンが描く彼らの生活と心情に読者は時に微苦笑し、時に胸を打たれる。英国伝統の田園小説に現代的味つけを加えた珠玉の短篇集。
スペイン文学の流れには、〈スペイン的リアリズム〉と並行して、驚異・怪奇・幻想的要素が脈々と生き続け、独特の精神風土に想像力豊かな、魅惑の作品群を開花させている。ベッケル、アラルコン、クラリン、バレラ、バリェ=インクラン、カステラオ、マトゥテら、12人の傑作を編んだ画期的短篇集。
恐ろしい闇の力を秘める黄金の指輪をめぐり、小さいホビット族や魔法使い、妖精族たちの果てしない冒険と遍歴が始まる。数々の出会いと別れ、愛と裏切り、哀切な死。全てを呑み込み、空前の指輪大戦争へ。-世界中のヤングを熱狂させた、不滅の傑作ファンタジー。旧版の訳にさらに推敲を加え、新たに『追補編』を収録した「新版」です。トールキン生誕100年記念出版。
天正9年、織田信長は伊賀の国に大軍を送り、黒田の悪党の子孫である伊賀忍者とその家族を大量虐殺した。世にいう天正伊賀の乱である。難を逃れた伊賀忍者のひとり、舞十蔵は妹・千鳥が織田軍たちに凌辱された挙句に惨殺されたことを知って、信長への復讐をかたく心に誓う。失意の逃亡生活のなかで、堺の鉄砲鍛冶・かげろうノ道庵を訪ねた十蔵は、道庵が完成させた三連発銃を入手する。やがて、信長狙撃のチャンスがおとずれた。書き下ろし長編時代伝奇アクション第2弾。
「文夫君を預かっている。俺は元警官だから捕まらない。サツに知らせたら子どもの命はない」犯人側からの電話に茅ヶ崎市の建築会社社長・牛津宇三郎は警察に届けず、言われるまま取引に応じた。が、犯人側は身代金を奪って逃走、子どもは戻らない。そこで初めて警察へ-。70歳になる父の再婚式のため柳川市に帰省していた県警特捜班の星亭一は急きょ呼び戻され、6人の部下と捜査にのりだした。子どもの無事を祈りながら…。警察機構に精通している著者が放つ迫真の警官小説。
いぬ語、ねこ語を自在に操る犬猫先生こと大苗吾郎は、教え子のモッペルこと小山田基夫と犬のスージー、猫のトミーを連れて大洗水族館へピクニックへ出かけた。夜遅く戻ってくると、居間には見知らぬ若い女が倒れていた。女は何者?そして何の目的で入りこんでいたのか?(「悪女の口の中」より)。他に珠玉の連作4編を収録した本格ミステリー集。
第2次大戦末期、OSSの工作員マーティン・スパーリングは、対独レジスタンスを支援するために南フランスに潜入していた。40年後、義兄を殺した犯人を追ってボストンに飛んだサンフランシスコの警視ギルマンは、ハーヴァードの教授となっているスパーリングと出会う。折しも、ハーヴァードへの訪問をひかえたポーランド民主化運動の英雄ステファン・アンダーズに不穏なテロの動きが…。
3人の友と生き別れになりながらも、アレクサンドロスは、ついに、未知の力を秘めるオリハルコンの剣を手に入れた。しかし、アスカの賢者たちによって、異世界に封じ込められてしまう。そこは心に浮かぶ事柄が現実と化す異空間だった。アスカの少女との再会も束の間、巨大なドラゴンが、野心に満ちた騎士の生んだ異形の怪物が、アレクサンドロスに襲いかかる。若き日のアレクサンドロス(アレキサンダー大王)の冒険と闘いの物語、ここに完結。
暴力と破壊、そして変異者ー軍に追われる少年に、塔の外の世界は歪んだ姿を見せつれる。葬られた過去が新たな破壊を呼び、都市をむしばんでゆく。変容を続ける生命は、果たして何を目指すのか。遺伝子の中に眠る未来を鮮やかに予見は描き出す、新時代のカルトSF・第2部。