1992年8月1日発売
樹々の緑にいろどられ、雨の日には緑の島になる公園。都会のオアシスのようなこの場所に、あの人はきっといるはずだ、という確信がある…。少年野球のコーチ、夫に裏切られた女、高層マンションの1室にひとり暮す老婆、骨折したテニス青年、推理小説家の孤独なハイミス。さまざまな眼が織りなす“あの人”と私の物語。
私立探偵ジョン・カディの目に映った地方都市ナッシャーバーは、悪臭ただよう漁港と薄汚れた工場からなる死んだような街だった。この街でカディは、依頼人の死が本当に自殺だったのかを調べるつもりでいた。死亡した依頼人は、ナッシャーバー警察の腐敗を暴こうとする、若く野心的な女性新聞記者だった。彼女は地元の警官がポルノ業者から賄賂を受けとって違法な幼児ポルノを目こぼししていることを聞きつけ、記事にしようとしていた。だが、それを教えてくれた情報屋が何者かに殺されたことから、彼女はカディに、男を消したのが警察のしわざであると立証してもらおうと考えたのだった。はたして女性記者の疑惑は正しく、彼女自身も自殺に見せかけて警察に殺されたのか?ボストンの知性派探偵カディが単身さびれた地方都市にのりこみ、その暗部を暴きだす、シリーズ最新作。
歴史小説家の調査助手をつとめるジェフは、友人の精神科医の紹介でアニーと出会った。彼女は奇妙な夢に悩まされていた。馬上の将軍や林檎園の死体…。南軍の敗色濃い南北戦争の光景が、夜ごとに夢に出てくる。まるで何者かが時を超えて過去からメッセージを送っているかのように。夢が悲劇的な様相を深めるなか、古戦場を訪れたアニーとジェフを待っていたものは…。実力派作家が歴史と虚構のせめぎあいを描く傑作長篇。
謎の時間変動波に襲われて恒星が次々に新星化し、早すぎる死を迎えていく。宇宙連邦軍提督として地上勤務についていたカークは司令長官モローの要請を受け、航宙鑑〈エンタープライズ〉にスポックやマッコイら元クルーを集め、この宇宙全体の存亡に関わる異常事態の解明に乗り出した。だが時間変動波の源と見られる〈永遠の守護者〉の真意を探るには、はるか五千年前の世界にいるスポックの息子ザールの力が必要だった。
五千年前の世界で国王となっていたザールは、みずからの命運を賭けた戦いを目前に控えているにもかかわらず、突然現われた父スポックたちの訴えにこたえて未来に飛ぶ決心をする。はたして彼らは〈永遠の守護者〉を説得し、時間変動波をおさめられるのか?過去の世界でのザールの運命は?五千年の時にへだてられたふたつの世界をまたにかけ、カーク、マッコイ、スポックら〈エンタープライズ〉の元クルーが活躍する。
クラスネガルの王宮に侵入したインプ軍に追われ、王女イノスと厩番ラップの一行は魔法の窓のある小部屋に逃げ込んだ。そのとき、一同の前にラシャと名乗る女魔法使いが忽然と姿を現わした。ノイスがラシャに促されるままに魔法の窓を通り抜けると、そこはなんと南方の大帝国ザルクの宮廷だった。一方、イノスを追って魔法の窓を通り抜けたラップたちは、ザルクからはるか彼方の未開の島フェアリーに降り立っていた…。
イノスは、皇帝アザクと女魔法使いラシャの賓客としてザルクの宮廷に逗留することになった。ところが、ラシャはイノスを利用して何事か企んでいるようす。それに気づいたイノスは、アザクと共に王宮を脱出した。同じころ、フェアリー島のラップはノイスのもとに行こうと必死の画策を始めていた。だが、仲間二人とはぐれたうえに、あろうことか西の魔道師と北の魔女の陰謀に巻き込まれてしまった…。力作シリーズ第二弾。
花と硝子の都アムネシアが、血と精液の国グユに滅ぼされて15年。グユの狂熱風雲王とアムネシアの王女のあいだに生まれた赤ん坊はひとりのたくましい若者に成長したー彼の名はグレン。アパポクワ族の村で育てられたグレンは、15歳になったいま、成人の儀式に参加しなければならない。だが、一方で彼をアムネシア再興の旗印としようとする者たちがいた…。中井紀夫が渾身の力をこめて描きだす大人のための神話物語第3弾。
最新設備を誇るアラスカの石油基地にパイプライン破壊の予告状が届き、次いでポンプ・ステーションが爆破された。油田事故調査員のダーモットは調査を開始、犯人が基地内部に潜んでいることを突き止める。だが、ほぼ同時にカナダの油田にも同じ内容の脅迫が届けられ、今度は誘拐事件が起きていた。二つの油田地帯を襲った黒い影を追って、ダーモットは極北の大雪原を駆ける。巨匠が男たちの息詰まる対決を描く冒険小説。
現代が「アメリカン・ミステリの第2期ゴールデン・エイジ」と呼ばれるようになって久しい。さまざまな作家、色とりどりの作品がひしめくなか、中心でいま最も生き生きと活動しているのは女たちである。その実力を証明し評価の高い第1巻に続き、今回は大御所メアリ・ヒギンズ・クラークが登場。他にもスー・グラフトン、キャロリン・G・ハート、ナンシー・ピカードら注目の女性作家たちが極上の短篇を提供する第2巻。
どんなに愛しい旦那さまでも、一度くらいは殺したいと思ったことがありませんか?未亡人クラブがあなたの悩みを解決しますー。幸せな新婚生活をおくるエリーは奇妙な老姉妹から、このクラブの存在を知らされた。こんなのどかな村に殺し屋組織だなんて。半信半疑のエリーだったが、やがて彼女の身辺で不可解な事件が次々と起こり始める…。秘密組織に立ち向かう新妻の奮闘ぶりをユーモアたっぷりに描く謎解きミステリ。
ロサンゼルス市警殺人課刑事、トーマス・リュウイチ・グリフィンは頻発する億万長者の自殺事件の捜査の途中で、美貌の新人歌手ポルフィリア・エンドーサと出会う。彼女は言葉で人を自由に操る能力を持ち、それを利用する暗黒街のボス、エルネスト・ブローディに囲われているのだ。出会いを重ねるうちに、次第にリュウに魅かれていくポルフィリアは、遂にエルネストとの決別を決意したー。注目の大型新人、待望のデビュー作。
百万長者の将軍ガイ・スターンウッドの死後、長女のヴィヴィアンは精神を病んだ妹カーメンをサナトリウムに送り込んだ。ところが、ある日突然カーメンは失踪し、追い込まれたヴィヴィアンは、自分に恋をするやくざなクラブ経営者エディ・マースに妹を探し出すように依頼する。一方、スターンウッド家に起こるすべてのことは他人事ではいられない執事のノリスは、過去のいきさつから私立探偵フィリップ・マーロウに何としてもカーメンを探しだしてほしいと依頼してくる。はたして失踪事件の背後にあるものは?調査をすすめるうちに、バラバラ殺人と巨額の詐欺事件が絡み、事件は夢にも思わぬ展開をみせるのだった…。当代随一の人気ハードボイルド作家ロバート・B・パーカーが50年の歳月を経て贈る、師レイモンド・チャンドラーの処女作『大いなる眠り』の続篇。未完の遺作『プードル・スプリングス物語』の完成版につづく「パーカー版フィリップ・マーロウ」第2弾。
英国の名優の息子ニック・ブレークスピアは、父親に反発して海兵隊に入ったが、いまはバハマでチャーター船の雇われ船長をしている。美人でインテリのクルー、エレンとともに長い航海に出ることを夢見ていたニックは、ある日弾痕だらけの遺棄船に遭遇する。船上にあった海図に書き込まれていたルートは、マーダー・ケイ(殺しの島)という悪名高い麻薬ファミリーの巣窟で途絶えていた。それからほどなく、ニックはアメリカの上院議員クラウニンシールドの子供たち、リッキーとロビン-アンを船客として迎えることになった。2人は麻薬中毒で、クルージングに出ることによって使用を断とうというのだ。ところがリッキーとしめしあわせた麻薬の運び屋たちが船を襲って兄妹を奪い去り、ニックの航海士は銃撃戦のさなかに殺されてしまった。官憲さえも麻薬密輸組織には手を出さないバハマで、ファミリーに闘いを挑む決意をしたニック。やがてマーダー・ケイが炎の戦場と化す時が来た。『ロセンデール家の嵐』で人気沸騰のコーンウェルが、またもや送る堂々の英国冒険小説。
ノース・カロライナの小都市ヒルストンでは、二つのことはそうたびたびは起こらない。雪はたいして降らず、人はめったに殺しあわない。ところがその冬は、その二つのことが同時に起きた。ドラード上院議員の妻クローリスが自宅で殺害され、銀器と高価なコインのコレクションが盗まれたのだ。単なる物盗りの犯行かと思われたが、捜査を任されたジャスティン・サヴィル警部補は、真相はほかにあるとにらむ。その矢先、クローリスの友人で、かつて警察に協力して難事件を解決したこともある霊能者のジョアンナが、殺人当夜、クローリスの夢を見たと証言する。夢の中で血まみれのクローリスは、自分は前夫ベイントンの死が原因で殺されたと告げたのだ。ジョアンナによれば、事故死したとされるベイントンもまた何者かに殺されたというのだが…。南部の小都市を舞台に、名門の一家に起きた殺人が政財界を巻き込んで思わぬ展開を見せる。書評子絶賛の傑作『最終法延』の姉妹篇をなす警察ミステリ。
宇部慎吾42歳。帯広の陸上自衛隊第5師団対戦車ヘリコプタ隊の二佐である。勤続20年のベテラン・パイロットの宇部にその日、「日々新報」という全国紙の女記者・安達聡美が取材にきた。濡れた眸をもつ美しい女の誘いに宇部の心は熱く震えた。翌日、札幌丘珠の北部方面航空隊長から呼び出しがかかり、彼の中隊と鹿追の戦車大隊第1中隊に香港視察の命が下った。しかしヘリコプタ隊75名、戦車隊100名を乗せたLST『おじか』が釧路港を出港すると2隻の護衛艦の他に『はるな』『あきづき』等5艦も加わった。この物々しさは何故か。書下し長篇戦争シミュレーション。