1992年8月1日発売
英国の名優の息子ニック・ブレークスピアは、父親に反発して海兵隊に入ったが、いまはバハマでチャーター船の雇われ船長をしている。美人でインテリのクルー、エレンとともに長い航海に出ることを夢見ていたニックは、ある日弾痕だらけの遺棄船に遭遇する。船上にあった海図に書き込まれていたルートは、マーダー・ケイ(殺しの島)という悪名高い麻薬ファミリーの巣窟で途絶えていた。それからほどなく、ニックはアメリカの上院議員クラウニンシールドの子供たち、リッキーとロビン-アンを船客として迎えることになった。2人は麻薬中毒で、クルージングに出ることによって使用を断とうというのだ。ところがリッキーとしめしあわせた麻薬の運び屋たちが船を襲って兄妹を奪い去り、ニックの航海士は銃撃戦のさなかに殺されてしまった。官憲さえも麻薬密輸組織には手を出さないバハマで、ファミリーに闘いを挑む決意をしたニック。やがてマーダー・ケイが炎の戦場と化す時が来た。『ロセンデール家の嵐』で人気沸騰のコーンウェルが、またもや送る堂々の英国冒険小説。
ノース・カロライナの小都市ヒルストンでは、二つのことはそうたびたびは起こらない。雪はたいして降らず、人はめったに殺しあわない。ところがその冬は、その二つのことが同時に起きた。ドラード上院議員の妻クローリスが自宅で殺害され、銀器と高価なコインのコレクションが盗まれたのだ。単なる物盗りの犯行かと思われたが、捜査を任されたジャスティン・サヴィル警部補は、真相はほかにあるとにらむ。その矢先、クローリスの友人で、かつて警察に協力して難事件を解決したこともある霊能者のジョアンナが、殺人当夜、クローリスの夢を見たと証言する。夢の中で血まみれのクローリスは、自分は前夫ベイントンの死が原因で殺されたと告げたのだ。ジョアンナによれば、事故死したとされるベイントンもまた何者かに殺されたというのだが…。南部の小都市を舞台に、名門の一家に起きた殺人が政財界を巻き込んで思わぬ展開を見せる。書評子絶賛の傑作『最終法延』の姉妹篇をなす警察ミステリ。
俺は、関東テレビの揉めごと解決屋・宇賀神邦彦、通称トラブルバスターだ。メキシコ・ロケの途上、国境の南グァテマラまで足をのばしたカメラマンが帰国後、取材したビデオテープとともに行方不明に。事件を追って、宇賀神邦彦が行動を開始した。パートナーは、なんと16歳の女子高生。
白川美穂、28歳。サッシメーカーの社長秘書で、昨年入社した宗方時彦と愛人関係にあり「非婚」時代を楽しんでいた。ところが、社長がガンで入院してから、美穂の身辺はあわただしくなった。入院中の社長に、美穂は肉体を提供し、また社長代行とも親密になって社内の中枢に迫る。他方、社長代行に敵対する専務派工作には時彦を使い、30代での女重役を夢見る。しかし美穂は、やはり女。スゴ腕の男の技に虜になったり、純情男にほだされたりで、危険な立場に陥るが、自慢の肉体勝負で斬り抜け、目標に近づくが…。
宇部慎吾42歳。帯広の陸上自衛隊第5師団対戦車ヘリコプタ隊の二佐である。勤続20年のベテラン・パイロットの宇部にその日、「日々新報」という全国紙の女記者・安達聡美が取材にきた。濡れた眸をもつ美しい女の誘いに宇部の心は熱く震えた。翌日、札幌丘珠の北部方面航空隊長から呼び出しがかかり、彼の中隊と鹿追の戦車大隊第1中隊に香港視察の命が下った。しかしヘリコプタ隊75名、戦車隊100名を乗せたLST『おじか』が釧路港を出港すると2隻の護衛艦の他に『はるな』『あきづき』等5艦も加わった。この物々しさは何故か。書下し長篇戦争シミュレーション。
大手鉄鋼メーカーの部長代理・堂本三郎は50歳。会社の高齢者対策で窓際に追われた中間管理職である。その彼に韓国企業から、土日の週2日、ソウルで技術ノウハウを講義する人材を、との依頼があった。講演料は1日数十万円。堂本の紹介で後輩の藤木がこの「ウィークエンド・トリップ」に出かけるようになって1カ月、会社は突然、社員のパスポート提出を求めた。会社の“卒業”するための企業問題小説。
難攻不落の大作を世界で初めて翻訳した著者の、6年余の辛苦と歓笑の航跡を克明にたどる。進行中の後半部分訳出過程の実践的な解析もおさめて、世紀の大傑作の深さと広がりが実際にわかる、フィネガン正嫡の解読書。
ヘイ!わたしはチナスキー、作家になった老いぼれのアル中ギャンブラーだ。楽しいことがあると一杯、悲しいことがあると一杯、何もないと何かを起こそうとして一杯。人生とソーダのミックス、ウォツカ・セブンで、とりあえず女たちに、乾杯。ウィリアム・バロウズ、ポール・ボウルズと並んで3Bsと称され、世界中に熱狂的なファンをもつチャールズ・ブコウスキー。映画「バーフライ」では自身をモデルにして脚本を書き、ミッキー・ローク演じるアル中作家が評判をよんだ彼の自伝的小説を、音楽評論家として活躍中の訳者が本邦初紹介。
わたしは50歳。体重102キロ、猪首、短足、目は濁り、赤ら顔。肉体労働者から作家に転職したアル中男。テレビがきらい、映画館もうんざり、パーティにも作家仲間にも、ニューヨークにもビートニクにも何の関心もない、ただの酔っぱらい。そんなわたしを今日もまた、女たちが待っている。卑語俗語にみちたラディカルな愛を描きつづけ、常にアカデミックな文学シーンのアウトサイダーでありながら、世界中の若者に熱く支持されているチャールズ・ブコウスキー、遂に日本に登場。
客との文学論を商売としたコールガール組織に立ち向かう私立探偵カイザーの物語。歯科医ゴッホの芸術的苦脳を描いた『もし印象派画家が歯科医であったなら』。ウディ・アレンの手にかかれば、シェイクスピア、死海写本、心霊現象、バレエの入門書等々、すべては深遠でおかしな物語へとかわる。戯曲『神』、『死』も収録した、ウディ・アレンの第2短編集。
ニューヨークの喧噪を離れ、ペンシルバニアの片田舎で、執筆活動のかたわら夫や息子と穏やかに暮らすことを夢見たイーディス。だが、夫の伯父ジョージの突然の闖入によってその夢は脆くも崩れ去ってゆく。そんなときイーディスに残されたものは、一冊の厚い日記帳だけであった。やがて彼女は日記に描かれたもう一つの別の世界、彼女自身の幻想を生きはじめる…。
寝たきりの生活を続ける伯父ジョージと成人後も無気力でまったく働く気のない息子クリッフィー。息のつまるような現実のなかで、イーディスは次第に自らの狂気に陥ってゆく。やがて彼女は日記に記す…。「現実と夢の世界との差は、耐えられない地獄だ」。ハイスミスが現代の“狂気”を冷たく、乾いた筆致で描き切った傑作、待望の翻訳刊行。
謎の呪文を残し消えたベールゼブブ。タケルたちは妖精王の助けを借り、とびっきりのアイテムを手に悪魔の迷宮に乗り込んだ。果たしてシルリルを救えるか!異次元世界の大冒険、ドンデン返しの大団円。
島根半島の東端、美保関燈台下で美女が扼殺死体で発見された。数カ月後、殺された女性が同級生だったと知った菊地大作は、死体を遺棄したとみられる夜、燈台近くで恋人法子とともに男の恐喝にあっていたことを思い出し、その時拾った写真引き替え券から男を犯人と断定し行方を追った。だが、男はすでに殺されており、菊地も松江で刺殺されてしまう。一方、法子から菊地殺しの犯人探しを依頼された探偵の甲斐正樹は菊地のダイイングメッセージ“米子”の意味を求めて、策略と殺意の罠が待ちうける出雲路へと飛ぶ-。