1993年12月発売
プロの運び屋・佐伯研次は、イスラム革命の国イランに降り立った。古代ペルシャ帝国の遺跡から出土した粘出板を国外に持ち出し、その研究者・カシェフィ博士を亡命させる依頼を受けた佐伯は、脱出ルートを確保し、博士への接触を図る。だが、前国王派のカシェフィは革命委員会の厳しい監視下にあり、更に正体不明の組織が博士の暗殺を企てていた。
急に姿が見えなくなった近所の脳障害児ボビーの家を探偵することから始まった去年の夏休み。13歳の少年少女たちにとってその経験は、大人になるための通過儀礼だった。今にも爆発しそうなものを胸に秘め、世界にたったひとつの自分だけの場所を求めてあがく思春期を作家志望の少年の目を通して描く佳作。1962年の夏、人生でたった一度しかない13歳の夏の忘れられない思い出…。
天正十年六月二日。なぜ智将明智光秀は信長殺害を決行したのか?背後に黒幕は存在したのか、したならばそれは誰なのか?そもそも「明智光秀」とは何者なのか?幾多の仮説を生んだ日本史上最大の謎の一つに本格推理の気鋭が挑む。新発見の事実により導き出された「誰も気づかなかった」真相とは?
R大学医学部第三外科の非常勤医員の三条美和子はG市民病院から紹介されてきた患者の胃癌の摘出手術を行った。三週間経って届いた、胃患部の組織検査結果に、美和子は驚愕した-。病変は胃癌でなく胃潰瘍。“癌”は消えたのか。興味津々、話題沸騰の医学ミステリ。
元世界ジュニア・ウェルター級のチャンピオン最上永吉の息子が誘拐された。彼を破ったジャクソンに義弟が挑むタイトルマッチ二日前の事だった。犯人の要求は、“相手をノックアウトで倒せ。さもなくば子供の命はない”。犯人の狙いは何か。意想外の脅迫に翻弄される捜査陣。ラストまで一気のノンストップ長編推理。
幻想を愛し、奇行で知られたシュール、リアリズムの巨人ーサルバドール・ダリ。宝飾デザインも手掛けた、この天才の心酔者で知られる宝石チェーン社長が神戸の別邸で殺された。現代の繭とも言うべきフロートカプセルの中で発見されたその死体は、彼のトレードマークであったダリ髭がない。そして他にも多くの不可解な点が…。事件解決に立ち上った推理作家・有栖川有栖と犯罪社会学者・火村英生が難解なダイイングメッセージに挑む。ミステリー界の旗手が綴る究極のパズラー。
物語は、貧困にあえぎ、怨嗟と慣怒が渦巻くニューヨーク近郊の黒人スラムを舞台に展開する。殺人事件の容疑者と目された黒人青年を執拗に追い詰める白人のベテラン刑事-。この息詰まる対決を軸に、闇にうごめくコカイン密売人〈クロッカー〉たちの世界がリアルな筆致で描かれてゆく。
ルーズベルト団地を根城にコカインを密売しているストライクは、ある日、ボスのロドニーから殺しの話を持ちかけられる。裏切り者を消せば、クロッカーからオンスマンに取り立ててやるという。ストライクは殺しを引き受け、裏切り者ダリル・アダムズをつけ狙うが、邪魔が入り果たせない。そんなとき偶然入ったバーで、兄のビクターにばったり出くわす。ダリルのことをもらしたストライクは、兄から〈俺の相棒〉なる殺し屋ならその殺しを引き受けるかもしれないと教えられ驚く。数時間後、ダリル・アダムズが射殺された。一方、捜査に乗り出したデンプシー郡検事局殺人課捜査官ロッコ・クラインは麻薬絡みの事件と睨む。そして数日後、ストライクの兄ビクターが自首してきた。これで事件は一気に解決かと思われたが、ビクターの供述はあいまいで動機もはっきりしない。ロッコは真相を究明しようと躍起になるが…。奇才リチャード・プライスが挑む異色ミステリー完結編。
単行本『赤い歳月』から2篇、『菓子祭』から13篇、さらに、文庫初収録の名篇『夢の車輪』から全12篇、計27篇の秀作集。現実と夢の壁を、あたかもなきがごとく自在に行きかい、男と女との“関係”などを鋭く透写する硬質な作家の“眼”。『砂の上の植物群』、『暗室』、『鞄の中身』の達成の上に立つ、短篇の名手、吉行淳之介の冴えわたる短篇群の“かがやき”。
あたしの名前はエヴァ・ワイリー。新米の女子プロレスラーだ。ブスで大女だからとうぜん悪役だけど、プロレスが大好きだから文句はない。ふだんは自動車置場の整備員や、ミスタ・チェンていうちょっとヤバそうな実業家の使い走りをしている。トラブルに巻きこまれたのは、ミスタ・チェンのお使い先のクラブでガードマンのアルバイトを引き受けたりしたからだ。新しいバンドの出演で客が大勢いるところへ、警察の手入れがあるわ、どこかの馬鹿が催涙ガスを投げこむわで、クラブは大混乱。騒ぎのなかからバックコーラスの若い娘を救いだしたのまではよかったけれど、それからというもの、変な奴らにつきまとわれたり生命を狙われたり。どうやらクラブで救った娘が原因らしいんだけど…。タフな外見の下にやさしさを隠しもつ女子プロレスラーが、つぎつぎ襲いくる悪党どもから若い娘を守ろうと、孤軍奮闘の大活躍。英国推理作家協会賞受賞作。
明治二年三月二十五日の夜明け、宮古湾に碇泊している新政府軍の艦隊を旧幕府軍の軍艦「回天」が襲ったー。箱館に立てこもった榎本武揚たちは、次第に追い詰められてゆく状況を打開しようと、大胆な奇襲に賭けたのであった。歴史に秘められた事実を掘り起し充実した筆致で描いた会心の長篇歴史小説。
架空戦争に敗れたジェヴレンの社会は倦怠の極にあった。いくつもの新興宗教が生まれ、人々はジェヴェックスというコンピュータによって作られる架空世界が与えてくれる快楽に酔いしれていた。そんな社会に秩序をもたらすため、おなじみのメンバー-ハント博士、ダンチェッカー教授たちが惑星ジェヴレンに乗り込むこととなった。
ジェヴレンに乗り込んだハント博士らは、ある日突然全人格が他者のものとすり変わってしまう人物が、ジェヴレン社会に頻出していることを知った。アヤトラと名づけられた彼らは、人格変換のために狂ってしまうこともあったが、たいていは新興宗教の活動家となっている。その人格変換の正体を探るうち、ハントは新しい人格がストレスのせいで異常をきたした精神のもたらすものではなく、まったく別の宇宙から、コンピュータ・ネットワークを通じて送り込まれてきていることを発見した。われわれの想像を超えた新しい宇宙がどこかに存在している。その宇宙の正体とは何か?新しい宇宙からの侵略を、ハントたちは止めることができるのだろうか?