1993年3月発売
1969年、ニューヨーク市クィーンズ。そろそろ初老にさしかかる年令のパールは、こともあろうに夫の葬式の日に、長年に及ぶ片想いを告白される。相手は夫の友人ジョー。悪い気はしないが、彼を受け入れるにはあまりにも問題がありすぎる。とりわけ離婚経験をもつ2人の娘、年老いた母は心配の種だ。そうした状況の中で、パールの心は揺れ動く…。そして、彼女は生きている限り、新たなステップを踏み出すことの大切さを学んでゆく。
孤児院で育ち、社会的地位と財産を築きながらも、愛を知らずに生きてきた中年女性メリー。知能に障害を持つ美しき青年ティム。孤独であること以外には何一つ共通するもののない彼と彼女が、互いを愛しあっていることに気づいたとき、二人は戸惑い、葛藤し、そして…。純粋な魂同士の結びつきはどれほどの障害をも乗り越えられるのかという問題を通して、今揺らぐ恋愛観・結婚観をあらためて問い直す、本格派恋愛小説。
一九七九年に起きた一人の若者の死。その状況と原因をめぐって、それぞれの関係者が推理するその口から、また新たな物語が紡ぎ出されていく。懐古にふけっていたはずの彼等は、いつしか自分たちで作り上げた迷宮に踏み入っていく…。言葉によって構築される現実の脆さとそこに潜む謎を描いて一気に読ませる、気鋭の力作。
サラ・フォーチュンはふたつの顔をもっていた。昼間は、ロンドンの事務所ではたらく若く有能な弁護士、そして夜は、金持ちの男たちの相手をして、高価なプレゼントをうけとる美女…。サラがそういう生活を送るようになったのは、亡くなった夫が自分の妹と浮気していたのを知ってからだった。以来、彼女は貞節や名誉といったものから解放され、さえない男とつきあって相手に自信をもたせることに喜びを見出していた。弁護士のマルコムも、そういう男たちのひとりだった。彼の内面に隠された繊細さを見抜いたサラは、彼と一夜をともにし、翌朝、姿を消した。だが、マルコムは彼女を忘れられず、執拗に追いもとめた。一方、サラの知らないところでは、おなじく彼女を狂おしいまでに愛し、その行動を見つめつづける、もうひとりの男がいた。愛に絶望した女と愛に憑かれた男たちが織りなす歪んだ三角関係を、緻密な心理描写で描く異色サスペンス。
この光景は以前にも見たことがある。女子大生のリネイは、部屋の鏡に残された血痕を見たとたん、遠い日の記憶をかすかに取りもどした。腕から血を流している母の姿ーだが、あの時いったい何が起きたのか?忌まわしい記憶の断片に苛まれるリネイのもとに、やがて血染めの脅迫状が…。現在と過去の二つの悪夢が交錯する、気鋭女性作家の心理サスペンス。