1993年3月発売
巨額の遺産を相続した若い独身女性の家に侵入してみると、なぜかどの部屋のなかも鏡だらけ。意外な結末が待ち受ける「ステップファザー・ステップ」など、すばらしい着想と軽妙なユーモアに彩られた傑作7編。
’60年代最後の年、22歳の上山哲夫は、アコースティック・ギターひとつを持ってアメリカへ旅立つ。子供の頃、ベース・キャンプの金網の向こう側にしかなかった「アメリカ」を求めて。西海岸から東へたどる哲夫が出会ったものはベトナム戦争の影とヒッピーたち…。巨大な異文化に裸で身をさらし、己れの根を必死に捉まえようと彷徨する若者の姿を鋭い感性で描きだした青春の書。
小学4年生になっても、ぬいぐるみの「くますけ」と片時も離れられない成美は、交通事故で突然両親を亡くして、ママの親友の裕子さんに引き取られた。裕子さんはとても優しい人だけれど、成美には誰にも言えない秘密があるから、くますけ以外は信じることができない…。正常と異常、現実と非現実の境界にある閉ざされた少女の心の内面をモダン・ホラーの手法で描く異色の長編。
低い扶持にあえいでいても、こころはいつもサムライ。十年のうち九年は百姓暮らし、一年だけ赤錆だらけの槍を担いで日光山警護にあたる八王子槍組千人同心・鷹取俊太郎。後に陰の御庭番・信濃屋芳兵衛となり、将軍の耳目となって活躍した男の元服後の筆下ろしを描く表題作をはじめ、江戸時代の底辺を担って生きた下級武士たちの心意気を無類のユーモアとペーソスで綴る時代短編集。
オレゴン州の小さな町ホープ・バレーが宇宙からの攻撃としか考えられない方法で消滅させられた。一方、CIAから離れてフリーとなったマクラッケンは、むかし愛し合った女から何者かに脅迫されている宝石商である祖父の救援を依頼される。マクラッケンの追跡が、ホープ・バレーを攻撃した巨大な勢力とクロスした時、恐るべき〈アルファ計画〉の全貌が浮かび上がる。シリーズ第2弾。
ブルックリンに根を張る大ファミリー、プリッツィ一家。13歳からこの業界に手を染めたチャーリー・パルタンナは、30歳になった今や副ボス兼執行人である。マジメでトッポいチャーリーが一目惚れしたショー・ガールのマーデル。これがなかなか一筋縄ではいかない女だった。一方で、ボスの娘メイローズがチャーリーに惚れたから話はややこしい。恋と義理と人情のマフィアン・コメディー。
ホームズの下宿のあったベイカー街、ワグナーのオペラをみにいったロイヤル・オペラ・ハウス、彼とワトスンが初めて出会ったセント・バーソロミュー病院、二人が犯人を追跡したオックスフォード街からリージェント街、そして散策した公園はどこか?-大英帝国の最も華やかな時代に大活躍した名探偵中の名探偵シャーロック・ホームズ。その足跡をたどると、ヴィクトリア朝時代の残り香が色濃くただよう都・倫敦が霧の中から…。
時は徳川三代将軍・家光の治世-。現世を憂える軍学者・由井正雪の一党は、幕府転覆を企んでいた。江戸の町には不穏な事件が相次ぎ、殺生奉行の織部多聞も、その渦中に巻き込まれていくが…。時代小説界の新星が放つ傑作長編。
まるで永遠に続く休暇のように、高校をドロップアウトした虹彦は、自らの魂の置き処を求めて彷徨う。「ニューヨークへ行こう」-行方知れずの父を捜す旅を決意した虹彦、その時、彼を見つめる残酷で淫靡で、しかも典雅な眼差しに出会った。その男の名は遊。魔性の瞳に虹彦はたちまち魅せられ…。
東京の大宝石商の一家を恐怖のどん底へと突き落とす無気味な数字の通信。日一日と減っていくその数は、いったい何を意味しているのか。一家に異常なまでの復讐心を抱く怪人〈魔術師〉とは何者?玉村家からの依頼を受けて保養先から帰京するなり、賊の手にかかって誘拐された名探偵明智小五郎の運命やいかに。壮絶な結末に至るまで、息つく間もなく展開される波乱万丈の物語。
両親と死別し、遠縁にあたるドリーとヴェリーナの姉妹に引き取られ、南部の田舎町で多感な日々を過ごす十六歳の少年コリン。そんな秋のある日、ふとしたきっかけからコリンはドリーたちと一緒に、近くの森にあるムクロジの木の上で暮らすことになった…。少年の内面に視点を据え、その瞳に映る人間模様を詩的言語と入念な文体で描き、青年期に移行する少年の胸底を捉えた名作。