1993年3月発売
精神科医に異常なまでの愛を注いだ元患者が、嫉妬に狂い描いた復讐のシナリオ。愛の究極の姿なのか、盲執なのか。花ことばに激しく燃える想いを映し、女の情念が静かに忍び寄る。愛の裏側にひそむ嫉妬ほど、怖いものはない-。
怪談咄を手に入れるためには、人間の奥深さや恐さを知らねばならない。怪談咄の祖・林屋正蔵のそんな気持ちが、“東海道中膝栗毛”の作者・十返舎一九への好奇心をより強いものにさせていった。一九には、想像もできない奥行きと恐さがある、その正体を暴く必要がある…。林屋正蔵の執念を描く時代小説傑作。
青年二宮金次郎と“百姓論語”を闘わせ鰹節騒動では危うく情事の罠に。とかく学問より俗事に心奪われる伊能隊、再三の“測量中止”の危機を脱し、有望な孤児や人気女形をお伴に江戸へ。忠敬が“人生二山”を生きた江戸後期の、新しい文化の旗手を多士済々に登場させ、人間忠敬とその時代を縦横に描く大作、完結。
グアムのアンダーソン米空軍基地から核ミサイルを装備した爆撃機が飛び立った。極右組織の指令を受けてモスクワ攻撃に向うロックウェルB-1D戦略ステルス機である。米ソ全軍はこれを撃墜できるか?核戦争の危機をはらむ、米ソ首脳たちの焦燥と苦難の一日を描く迫力にみちた戦略テクノ・サスペンス。
裁判における公正とはなにか。裁きの規準とはなにか。政治家をめぐる贈収賄事件、経済犯罪、悦楽的な殺人、外国人の不法滞在など、現代日本のゆがみを象徴する事件を、裁判官の側からリアルに描きながら、裁判の実態、裁判官の生活や心理に肉迫した連作集。犯罪者や法廷を描いて定評のある著者の秀作。
美人アナウンサー細川知子は不倫相手の杉正彦とデート中、杉の妻が何者かに殺される。あわてた二人は死体をひそかに琵琶湖畔に埋めるが、まもなく、「犯行を目撃した。500万用意せよ!」の脅迫状が…。甘い生活から一転、苛酷な運命に翻弄される知子。衝撃のドンデン返しを秘めた、魅惑的長編推理。
少年は大統領をめざした。男の世界の男の仕事ー政治に向かって第一歩を踏み出したとき、少年の心は希望に満ちていた。父の投獄、恋人の死。少年の行く手には幾多の謀略と挫折が待ちかまえていた。政治の世界は汚いが、だからこそ面白いー。少年は自分にそう言い聞かせて旅立った。目標は大統領の座だ。
ホープの友人の探偵が何者かに射殺された。殺されたとき彼は、著名な実業家からの依頼で“シンデレラ”の行方を追っていた。実業家は舞踏会でガラスの靴をはいた美女と出会い、一夜をともにした翌朝、高価な時計を持ち逃げされたのだ。友人を殺した犯人を見つけるため調査を始めたホープは、女が麻薬組織からも追われているのを知るが…。マイアミを舞台に展開する二重三重の追跡劇を緊迫したタッチで描くシリーズ注目作。
三十有余年に亘る基衡の治世を継いだ三代秀衡は、朝廷より鎮守府将軍を拝命し、名実ともに北方の王者として奥州に君臨した。“一丸の蝦夷”こそが清衡以来の陸奥経営の根幹であり、仏国土の建設にその理想郷を追う秀衡であった。都は公家、武家が相争う権謀術数の坩堝と化し、平氏政権の黄金期を迎えていた。だが秀衡は商人吉次を使い、鞍馬に在った源義朝の遺児牛若丸に触手を伸ばした。歴史巨篇。
磐石の平泉政権にも、時代の激浪は及んだ。栄華を謳う平氏に反旗を翻す策動が各地に胚胎、頼朝決起の報を受けるや、秀衡の諌を振り切って義経は鎌倉へ馳せ上った。源平いずれか、蝦夷政権の存亡を賭けた選択は目睫に迫っていた。一ノ谷、屋島と、義経の迅雷の機略の前に、平氏は西海へ遁走した。だがこの時すでに、義経は平泉に在った義経ではなく、また兄頼朝の疑念も深まりつつあった。巨匠の未完の絶筆。
日中は低血圧でちとニブイが、夜になると本領発揮。袋田飛彦、三十五歳。通称“ふくろう警視”。同期はとっくに警視正に出世しているのに、勤務中のいねむりがたたってオチコボレ。でも、無能ではない。犯罪の匂いをいち早くキャッチし、隠れた事件を暴くため特設された特別自由捜査室のキャップなのだ。今回も〈日の出〉のダイイング・メッセージを残して息絶えた銀座の画廊経営者をめぐって大活躍。
あたし、社長秘書なんです。スタイルが良くて歩き方がとてもきれいだって言われるんです。ある日、退社時刻後も独りで社長を持っていると営業部の山本主任がやって来たんです。カレ、社内でも有名なセクハラ男で。営業部隊の斬り込み隊長なんだけど、まさかあたしのパンティに突撃してくるなんて…。「社長秘書のパンティ」他、九篇を収録。OLたちの赤裸々な性態を綴ったエロチック・コメディ。
山崎英世を刺したのは水町圭子だった。小道具の出刃包丁が本物と取り替っていたのだ。誰が取り替えたのか。撮影現場は衆人環視の中にあった。そして直後に「かいじ」に乗って松本へ向った水町圭子の姿は掻き消されたかの如く消えてしまった。捜査の手が彼女の身辺に迫るころ、信州・諏訪湖の冷たい湖面に彼女の水死体が浮いた。いったい誰が。
慶長5年、美濃大垣城、三層総塗りの壮麗な天守閣の奥座敷に、3人の武将が絵図面をひろげ談合していた。「決戦場は関ケ原になろうな」とけわしい面付きで低くつぶやいたのは石田三成であった。その関ケ原に日本六十余州の大名が持てる軍勢凡てを結集した天下わけ目の大決戦、豊臣・徳川の戦いが始まったのだ。絢爛豪華な水滸伝である。