1993年8月31日発売
戦前・戦後、新聞社のパリ特派員を勤め、フランス文化をこよなく愛して「ムッシュ・クラタ」と呼ばれた男。日本人の常識から逸脱した行動をとり、鼻持ちならないキザな奴と見られていた彼が、記者として赴いたフィリピンの戦場でしめしたダンディな強靭さを鮮やかに描いた表題作。ほかに夫婦の絆の裏表を鋭い人間観察で切り取った「晴着」「へんねし」「醜男」をおさめる中・短編集。
反乱、暗殺、裏切り、虐殺、謀略。栄耀栄華を極めた者は、明日は無残な敗者となったー。長屋王、平将門、千利休、田沼意次、坂本龍馬、西郷隆盛ら、時代の頂点で敗れ去った悲劇のヒーローたちの人間ドラマを、気鋭の時代小説作家が生き生きと描きだす。大和時代から明治維新まで、千三百年にわたるわが国の歴史を四十六の短編小説によって俯瞰する、新しい“日本通史”の試み。
経清・貞任の死により前九年の戦いは終わった。経清の妻結有は敵方の清原氏へ嫁がされ、清衡と改名した清丸は安倍氏の再興を心に誓う。さきの大戦から20年、清原真衡・清衡・家衡異父・異母兄弟の確執と源義家の陸奥守就任が、みちのくを再び炎に包む。北の覇者をめぐっての壮大なドラマは、黄金の都・平泉へ向けていよいよ動き始めた。
人類居住宙域と銀河系深部を結ぶゲイトウエイの開通から90年。人類は意欲的に銀河へ進出し、多くの船が新世界めざしてこの天空の水路を下っていったー。少女クローディの乗る〈チャリティ〉もそんな植民船の一つだった。だが航行中の同船は、空間を思いのままに破壊する獰猛な異星人スロッグに襲われる。逃げ場のない水路の中で、一行は生き延びることができるのか…。未知の試練に直面した少女の冒険を描く力作宇宙SF。
発見当初、惑星エピメテウスは自転していないとみなされ、人々は大量の放射線を浴びる昼側を避けて夜側にナイトサイド・シティを築いた。が、その後の調査で惑星の自転が判明。シティは遠からず昼側に移動し、居住不能となる運命だ。シティの片隅で探偵稼業をいとなむカーライルは、ある日依頼人からシティ買い占めの動きがあることを聞く。“夜明け”を間近にしていったいなぜ…。タフな女探偵が活躍するミステリSF。
フォークランド紛争の英雄でヨットマンのニックは、海運王カソーリから恐るべき依頼をもちかけられた。外洋レースに出場するニュースキャスター、バニスターの艇に乗り、彼を誤った海域に導けというのだ。バニスターはカソーリの娘を殺害したと噂されており、洋上で何かが起きることは間違いない。依頼を断わったニックは、陰謀を阻止すべく愛艇で激浪の海域に急行する。英国冒険小説の新旗手が放つ傑作冒険サスペンス。
現場に残された血まみれのナイフと、胴体を切り裂かれた人形ー。リンダの脳裏には、三年前の忌まわしい光景が焼きついていた。娘のエイミーが何者かに惨殺されたのだ。容疑はリンダ自身にかけられ、裁判で無罪が証明されたものの、以来、彼女は人目を避けてひっそりと暮らしてきた。が、彼女の身辺でふたたび殺人事件が起こり、現場にはまたもや切り裂かれた人形が…。繊細な筆致と豊かな感性で紡ぎだす出色のサスペンス。
わたしは夢に破れた男だ。念願だった司祭にもなれず、今は友人の法律事務所で調査員をしている。今度の仕事は、四十年前の自家用飛行機墜落の事故状況を探ることだった。事故で兄を失った大実業家の依頼だ。調べるうち、何者かが飛行機に細工していたらしいことが判明した。そして背後に潜む複雑な人間関係も…。過去の深い謎を追う調査員オーエンが見た意外な真実とは?期待の新人が描く、自己再生を賭けた男の物語。
のっぽでニキビだらけの高校生アンディは、近視で運動音痴の醜い男の子。ひと目惚れした同級生プレストンも、少しは興味を示してくれたハンサムな転校生ライアンも、アンディのニキビ・コンプレックスを増長させるばかり。でも、醜い自分が美しいもの(とくに美少年!)に惹かれてしまう性癖はどうしようもなく、たまに女の子とうまく行きかけても彼の心は今一つはずまない…。70年代の地方都市を舞台に、ゲイのみならず誰もが持つ思春期のコンプレックス、疎外感をユーモア溢れるポップな文体で描く。
1951年10月、福田定一は戦車中隊を卒いて北海道南部にあった。太平洋戦争後、日本帝国は崩壊し南北に分断されたのである。日本民主主義人民共和国人民空軍大尉・藤堂守は、MIG15を操って列機を従え高度7000を飛行中だった。日本占領軍総司令官・J・パットン大将は、函館周辺に追い詰められている国連軍の窮状を打開するために上陸作戦を開始した。アイアン・フィスト作戦である。合衆国に接収され旧呉工廠で改装された〈やまと〉が出撃した。総反攻を前にソヴィエトは義勇艦隊を結集させた。超弩級篇。
どうしたんだ。能登呂はどうしたんだ。あ号作戦はどうなったんだ。榧や響はどうして救援に来ないのだ。超高速駆逐艦波風の砲術長兼副長の水島吾郎は焦っていた。米第七艦隊の激しい集中攻撃にさらされ、戦況はほとんど絶望的といってもいい。あ号作戦の目的は、敵の主力艦隊をおびき寄せ、影の艦隊の主力をもってして、一気にこれを殲滅することにあったが、これはあまりに危険な作戦だったのか?このままでは轟沈させられる…。波風、危機一髪。世界最強の米第七艦隊を相手に打つ手はあるのか?
「戦艦大和、わが最大の敵ぞ。大和がわが第三帝国の前にたちはだかったとき、第三帝国は滅亡の危機を迎えよう」ヒトラーはかっと眼をみひらき、ゲーリング元帥を睨んだ。英霊・山本五十六が指揮する大和は、日本軍としてではなく“超大本営”としてヨーロッパ戦線に参戦すべく北大西洋上を一路、ドーバー海峡にむかった。これに対し、ドイツは飛行大隊をさしむけ、大和とユンカースは壮絶な死闘を繰り広げた。その先には超戦艦「ウォータン」が待ち受けている。決戦近し。世界の命運は「大和」にかかっていた。
人類の未来のために、という崇高な理念のもと、究極の女体をもつセクシー・ロボットの開発に意欲を燃やす藤堂京太。とうとう自慢のイチモツに真珠まで入れて、さらなる女体遍歴に乗り出した。京太の改造棒は抜群の威力を発揮し、研究の成果はあがりっ放し。この体験を活かして、女性用のペニロボ開発もスタートした。共同研究者の椿千鶴という美人博士を得て(もち論研究済み)、男性用も女性用も、人体ロボットは完璧といっていいほどの域に近づいてきた。誰もがもっているエッチな夢を実現する、ユーモア・エロティカ。
淫道外法を操る尼将軍・北条政子、平家の侍大将・悪七兵衛景清、京都神護寺の神異僧・明恵は、高天原の秘密を巡って、富士山頂で激烈な戦いを展開した。辺津の鏡によって現出した七色の光の空間と黒縄の異形の化物は一体何だったのか。聖徳太子の『未来記』に記された謎を追い求める明恵は、佐渡へ渡り、もうひとつの太子の秘本『幻義疏』のありかをつきとめる。一方、『闇の祭主』の異名を持つ本霊日別が率いる御先衆は、秘密に迫る明恵に刺客を放った。いよいよ混迷を極める超歴史伝奇大河ロマン第2弾。