1993年9月発売
景気低迷が続く中、米国銀行から巨額の融資を得る交渉を進めていた業界大手の富国自動車工業。社内では、海外進出に積極的な国際派の常務と、通産省との太いパイプを持つ民族派の専務が、次期社長の座を狙って激しく対立していた。一方、富国自工経営陣への発言力低下を恐れた国内の主力銀行は、同社の個人筆頭株主に接触、対抗策を巡らせるが…。
スペインによるアメリカ原住民への暴虐を暴露した「インディオの父」=ラス・カサスを主人公とする歴史小説。ドイツの良心といわれた国内亡命者シュナイダーのナチへの抵抗文学の代表作。国際先住民年にふさわしい一冊。訳者による「シュナイダーの生涯と作品」を付す。
夫との別居に始まり、離婚に至る若い女と稚い娘の一年間。寄りつかない夫、男との性の夢、娘の不調、出会い頭の情事。夫のいない若い女親のゆれ動き、融け出すような不安を、“短篇連作”という新しい創作上の方法を精妙に駆使し、第一回野間文芸新人賞を受賞した津島佑子の初期代表作。
パリ近郊のトム・リプリーのもとにロンドンの画廊から連絡が入った。天才画家ダーワットの個展を前にして、贋物を掴まされたと蒐集家が騒いでいるのだという。それも当然のこと、トムと画廊の仲間でダーワットが数年前に死んだことを隠し、贋作を作り続けていたのだ。トムは画家に変装して記者会見で健在ぶりを示すが、そこに当の蒐集家が現われ…。名作『太陽がいっぱい』に続くリプリー・シリーズ第二弾。
美紀のマン力は強烈だった。加賀山徹平の挿入した欲棒が動かせない程だ。彼女はこのセックスをやりとげればツキが呼べるという。彼はその話に賭けた。川瀬電商を乗っ取り、傘下の高級クラブ“女の城”とママの敬子は手に入れたのも束の間、今度は敬子が男をつくり、逆に乗っ取りをかけてきたからだ。企業を乗っ取り、美女を自在に操る男の野望とロマン。
あの『若草物語』から登場人物を拝借した、イタリアにはちょっとなかったタッチの少女小説。ヒロインは自称ナスターシャ・キンスキー、山盛り好奇心の生意気娘ジョー。幼い頃に別れてしまったパパを求めて、ローマからバルセロナへ。そこで出会ったブロンドの美青年マイクとともに、アフリカの木彫り人形を巡るキナ臭い犯罪事件に巻き込まれてゆく。命からがらの逃避行、果たしてパパとの再会は?最後はちょっぴり切ない大団円。
建安十二年冬、「三顧の礼」の二度目の訪問も失敗に終わった劉備らの一行は、新野城にもどっていった。隆中にある一軒の酒屋では、孟公威、石公元、崔州平らが劉備や曹操について熱っぽく論じている。やがて春を迎え、劉備の兵士募集に応じた飛剣の名手・虚空児が、襄陽城郊外にある幽鬼楼で怪死をとげる。容疑者と思われた道士・王圭も、その翌日、幽鬼楼の三階で死体となって発見される。若き日の諸葛孔明の推理はいかに。その謎解きのあげくに、孔明がたどりついた真実とは。
「顔の横に、羆の頭がのしかかっている。今にも自分の頭蓋骨が羆の逞しく鋭い歯でかみくだかれるような恐怖におそわれた」-。人をもあざむく知恵を持ち、飢えた時は人を襲って食らう獰猛で巨大な羆。北海道の厳しい大自然を背景に、猟師と羆の息づまる対決を実際に起きた事件に題材を取って描いた迫真の七篇。
商の湯王を輔け、夏王朝から商王朝への革命を成功にみちびいた稀代の名宰相伊尹の生涯と、古代中国の歴史の流れを生き生きと描いた長篇小説。桑の木のおかげで水死をまぬがれた〈奇蹟の孤児〉伊尹は、有〓@61F4氏の料理人となり、不思議な能力を発揮、夏王桀の挙兵で危殆に瀕した有〓@61F4氏を救うため乾坤一擲の奇策を講じる。新田次郎文学賞受賞作。
夏王桀に妹嬉をささげることで有〓@61F4氏の危機を救った伊尹は、桀のライバルとして台頭してきた商の湯王から三顧の礼を受け、湯王の臣となる。伊尹の狙いは夏と商の和親だったが、時代の流れはこれを許さず、ついに夏と商は激突し夏王朝は滅亡する。湯王は商王朝を開くが、伊尹の仕事はまだ終りではなかった。新田次郎文学賞受賞作。
ふとしたはずみで不倫してしまった課長と行ったショーパブのトップダンサーに憧れて、自分も華やかな夜の世界へ飛び込もうとするOL・美紀…。しかしそこで彼女を待ちうけていたのは、官能で眠れない夜だった…。現代ギャルの夜の生態を赤裸々に描く官能傑作。
青銅色の鐘楼を屋根にいただく精神病院に続発する奇怪な毒殺事件。自称億万長者、拒食症の少女、休日神経症のサラリーマン…。はたして殺人鬼は誰か?患者なのか、それとも医師なのか?病人を装って、姿なき犯人の行方を追う警視庁の名物刑事・海方の活躍。全編、毒薬の謎に彩られた蠱惑的ミステリー空間。