1993年発売
「顔の横に、羆の頭がのしかかっている。今にも自分の頭蓋骨が羆の逞しく鋭い歯でかみくだかれるような恐怖におそわれた」-。人をもあざむく知恵を持ち、飢えた時は人を襲って食らう獰猛で巨大な羆。北海道の厳しい大自然を背景に、猟師と羆の息づまる対決を実際に起きた事件に題材を取って描いた迫真の七篇。
中国古代王朝という、前人未踏の世界をロマンあふれる勁い文章で語り、広く読書界を震撼させたデビュー作。夏王朝、一介の料理人から身をおこした英傑伊尹の物語。(齋藤愼爾)
夏王桀に妹嬉をささげることで有〓@61F4氏の危機を救った伊尹は、桀のライバルとして台頭してきた商の湯王から三顧の礼を受け、湯王の臣となる。伊尹の狙いは夏と商の和親だったが、時代の流れはこれを許さず、ついに夏と商は激突し夏王朝は滅亡する。湯王は商王朝を開くが、伊尹の仕事はまだ終りではなかった。新田次郎文学賞受賞作。
ふとしたはずみで不倫してしまった課長と行ったショーパブのトップダンサーに憧れて、自分も華やかな夜の世界へ飛び込もうとするOL・美紀…。しかしそこで彼女を待ちうけていたのは、官能で眠れない夜だった…。現代ギャルの夜の生態を赤裸々に描く官能傑作。
青銅色の鐘楼を屋根にいただく精神病院に続発する奇怪な毒殺事件。自称億万長者、拒食症の少女、休日神経症のサラリーマン…。はたして殺人鬼は誰か?患者なのか、それとも医師なのか?病人を装って、姿なき犯人の行方を追う警視庁の名物刑事・海方の活躍。全編、毒薬の謎に彩られた蠱惑的ミステリー空間。
男は、もうひとりの小男をキャンディの包み紙のように海に投げ捨て、鬼のような形相で私を追ってきたー。宝石泥棒を両親に持つ女性私立探偵ロニー・ヴェンタナが、その恐ろしい事件に遭遇したのは金門橋を見下ろす海岸通りを早朝ジョギングしている時だった。そして、事件は急展開、思わぬ犯人が。
美しい女を争って剛剣がうなり、おのが愛を守ろうと女の“秘剣”が舞い、女敵討ちの悲しい剣が奔る…。やませみが魚を獲る一瞬の妙技から想を得た、鍾捲新流の秘剣“やませみ”。夫の仇を討つためにその敵から“やませみ”を学ぶ決意を固める志乃を描く「秘剣やませみ」ほか八編を収録する秀作仇討ち短編集。
川沿いの澪通りの木戸番夫婦は、人に言えない苦労の末に、深川に流れて来たと噂されている。思い通りにならない暮らしに苦しむ人々は、この2人を訪れて知恵を借り、生きる力を取りもどしてゆく。傷つきながらも、まっとうに生きようとつとめる市井の男女を、こまやかに暖かく描く、泉鏡花賞受賞の名作集。(講談社文庫) 川沿いの澪通りの木戸番夫婦は、人に言えない苦労の末に、深川に流れて来たと噂されている。思い通りにならない暮らしに苦しむ人々は、この2人を訪れて知恵を借り、生きる力を取りもどしてゆく。傷つきながらも、まっとうに生きようとつとめる市井の男女を、こまやかに暖かく描く、泉鏡花賞受賞の名作集。 深川澪通り木戸番小屋 両国橋から 坂道の冬 深川しぐれ ともだち 名人かたぎ 梅雨の晴れ間 わすれもの
奈津が奉公先雁金屋の次男光琳と出会ったのは光琳八歳、奈津十歳のときだった。早くも逸材の片鱗を見せる光琳に奈津は胸をときめかすが、それは果たせぬ恋の始まりだった。尾形光琳・乾山兄弟の間で揺れる女ごころ。京の大呉服商雁金屋を舞台に展開する絢爛豪華な時代絵巻。第一回時代小説大賞受賞作。
後水尾天皇は十六歳の若さで即位するが、徳川幕府の圧力で二代将軍秀忠の娘、和子を皇后とすることを余儀なくされる。「鬼の子孫」八瀬童子の流れをくむ岩介ら“天皇の隠密”とともに、帝は権力に屈せず、自由を求めて、幕府の強大な権力と闘う決意をする…。著者の絶筆となった、構想宏大な伝奇ロマン大作。
徳川家康、秀忠の朝廷に対する姿勢は禁裏のもつ無形の力を衰弱させ、やがて無にしてしまうことだった。「禁中並公家諸法度」の制定や「紫衣事件」などの朝廷蔑視にあって、帝は幕府に反抗し、女帝に譲位し、自らは院政を敷くことにする…。波瀾万丈の生を歩まれる後水尾天皇を描く、未完の伝奇ロマン。