1993年発売
現場に残された血まみれのナイフと、胴体を切り裂かれた人形ー。リンダの脳裏には、三年前の忌まわしい光景が焼きついていた。娘のエイミーが何者かに惨殺されたのだ。容疑はリンダ自身にかけられ、裁判で無罪が証明されたものの、以来、彼女は人目を避けてひっそりと暮らしてきた。が、彼女の身辺でふたたび殺人事件が起こり、現場にはまたもや切り裂かれた人形が…。繊細な筆致と豊かな感性で紡ぎだす出色のサスペンス。
わたしは夢に破れた男だ。念願だった司祭にもなれず、今は友人の法律事務所で調査員をしている。今度の仕事は、四十年前の自家用飛行機墜落の事故状況を探ることだった。事故で兄を失った大実業家の依頼だ。調べるうち、何者かが飛行機に細工していたらしいことが判明した。そして背後に潜む複雑な人間関係も…。過去の深い謎を追う調査員オーエンが見た意外な真実とは?期待の新人が描く、自己再生を賭けた男の物語。
のっぽでニキビだらけの高校生アンディは、近視で運動音痴の醜い男の子。ひと目惚れした同級生プレストンも、少しは興味を示してくれたハンサムな転校生ライアンも、アンディのニキビ・コンプレックスを増長させるばかり。でも、醜い自分が美しいもの(とくに美少年!)に惹かれてしまう性癖はどうしようもなく、たまに女の子とうまく行きかけても彼の心は今一つはずまない…。70年代の地方都市を舞台に、ゲイのみならず誰もが持つ思春期のコンプレックス、疎外感をユーモア溢れるポップな文体で描く。
1951年10月、福田定一は戦車中隊を卒いて北海道南部にあった。太平洋戦争後、日本帝国は崩壊し南北に分断されたのである。日本民主主義人民共和国人民空軍大尉・藤堂守は、MIG15を操って列機を従え高度7000を飛行中だった。日本占領軍総司令官・J・パットン大将は、函館周辺に追い詰められている国連軍の窮状を打開するために上陸作戦を開始した。アイアン・フィスト作戦である。合衆国に接収され旧呉工廠で改装された〈やまと〉が出撃した。総反攻を前にソヴィエトは義勇艦隊を結集させた。超弩級篇。
どうしたんだ。能登呂はどうしたんだ。あ号作戦はどうなったんだ。榧や響はどうして救援に来ないのだ。超高速駆逐艦波風の砲術長兼副長の水島吾郎は焦っていた。米第七艦隊の激しい集中攻撃にさらされ、戦況はほとんど絶望的といってもいい。あ号作戦の目的は、敵の主力艦隊をおびき寄せ、影の艦隊の主力をもってして、一気にこれを殲滅することにあったが、これはあまりに危険な作戦だったのか?このままでは轟沈させられる…。波風、危機一髪。世界最強の米第七艦隊を相手に打つ手はあるのか?
「戦艦大和、わが最大の敵ぞ。大和がわが第三帝国の前にたちはだかったとき、第三帝国は滅亡の危機を迎えよう」ヒトラーはかっと眼をみひらき、ゲーリング元帥を睨んだ。英霊・山本五十六が指揮する大和は、日本軍としてではなく“超大本営”としてヨーロッパ戦線に参戦すべく北大西洋上を一路、ドーバー海峡にむかった。これに対し、ドイツは飛行大隊をさしむけ、大和とユンカースは壮絶な死闘を繰り広げた。その先には超戦艦「ウォータン」が待ち受けている。決戦近し。世界の命運は「大和」にかかっていた。
人類の未来のために、という崇高な理念のもと、究極の女体をもつセクシー・ロボットの開発に意欲を燃やす藤堂京太。とうとう自慢のイチモツに真珠まで入れて、さらなる女体遍歴に乗り出した。京太の改造棒は抜群の威力を発揮し、研究の成果はあがりっ放し。この体験を活かして、女性用のペニロボ開発もスタートした。共同研究者の椿千鶴という美人博士を得て(もち論研究済み)、男性用も女性用も、人体ロボットは完璧といっていいほどの域に近づいてきた。誰もがもっているエッチな夢を実現する、ユーモア・エロティカ。
淫道外法を操る尼将軍・北条政子、平家の侍大将・悪七兵衛景清、京都神護寺の神異僧・明恵は、高天原の秘密を巡って、富士山頂で激烈な戦いを展開した。辺津の鏡によって現出した七色の光の空間と黒縄の異形の化物は一体何だったのか。聖徳太子の『未来記』に記された謎を追い求める明恵は、佐渡へ渡り、もうひとつの太子の秘本『幻義疏』のありかをつきとめる。一方、『闇の祭主』の異名を持つ本霊日別が率いる御先衆は、秘密に迫る明恵に刺客を放った。いよいよ混迷を極める超歴史伝奇大河ロマン第2弾。
景気低迷が続く中、米国銀行から巨額の融資を得る交渉を進めていた業界大手の富国自動車工業。社内では、海外進出に積極的な国際派の常務と、通産省との太いパイプを持つ民族派の専務が、次期社長の座を狙って激しく対立していた。一方、富国自工経営陣への発言力低下を恐れた国内の主力銀行は、同社の個人筆頭株主に接触、対抗策を巡らせるが…。
スペイン人による新世界の征服、インディオの奴隷化を告発したラス・カサスを主人公とする歴史小説。著者はドイツの良心といわれたカトリック作家。
夫との別居に始まり、離婚に至る若い女と稚い娘の1年間。寄りつかない夫、男との性の夢、娘の不調、出会い頭の情事。夫のいない若い女親のゆれ動き、融け出すような不安を、“短篇連作”という新しい創作上の方法を精妙に駆使し、第1回野間文芸新人賞を受賞した津島佑子の初期代表作。 光の領分 水辺 木の日曜日 鳥の夢 声 呪文 砂丘 赤い光 体 地表 焔 光素
パリ近郊のトム・リプリーのもとにロンドンの画廊から連絡が入った。天才画家ダーワットの個展を前にして、贋物を掴まされたと蒐集家が騒いでいるのだという。それも当然のこと、トムと画廊の仲間でダーワットが数年前に死んだことを隠し、贋作を作り続けていたのだ。トムは画家に変装して記者会見で健在ぶりを示すが、そこに当の蒐集家が現われ…。名作『太陽がいっぱい』に続くリプリー・シリーズ第二弾。
美紀のマン力は強烈だった。加賀山徹平の挿入した欲棒が動かせない程だ。彼女はこのセックスをやりとげればツキが呼べるという。彼はその話に賭けた。川瀬電商を乗っ取り、傘下の高級クラブ“女の城”とママの敬子は手に入れたのも束の間、今度は敬子が男をつくり、逆に乗っ取りをかけてきたからだ。企業を乗っ取り、美女を自在に操る男の野望とロマン。
あの『若草物語』から登場人物を拝借した、イタリアにはちょっとなかったタッチの少女小説。ヒロインは自称ナスターシャ・キンスキー、山盛り好奇心の生意気娘ジョー。幼い頃に別れてしまったパパを求めて、ローマからバルセロナへ。そこで出会ったブロンドの美青年マイクとともに、アフリカの木彫り人形を巡るキナ臭い犯罪事件に巻き込まれてゆく。命からがらの逃避行、果たしてパパとの再会は?最後はちょっぴり切ない大団円。
建安十二年冬、「三顧の礼」の二度目の訪問も失敗に終わった劉備らの一行は、新野城にもどっていった。隆中にある一軒の酒屋では、孟公威、石公元、崔州平らが劉備や曹操について熱っぽく論じている。やがて春を迎え、劉備の兵士募集に応じた飛剣の名手・虚空児が、襄陽城郊外にある幽鬼楼で怪死をとげる。容疑者と思われた道士・王圭も、その翌日、幽鬼楼の三階で死体となって発見される。若き日の諸葛孔明の推理はいかに。その謎解きのあげくに、孔明がたどりついた真実とは。