小説むすび | 1994年10月発売

1994年10月発売

野菜畑のインディアン野菜畑のインディアン

この奇妙な青春のストーリーは、わたしが貧しく希望のない町をオンボロ車に乗って逃げ出したことから始まった。オクラホマのチェロキー・ネーションを通過中、インディアンの女が近づいてきて、頼みもしないのに車の座席に小さな子供を置いていった。わたしの体にしがみつこうとするばかりで、声も出せず、体じゅうに生々しいあざがあった。しかもその子は、女の子だったのだ。突然ころがりこんだインディアンの子供を連れたまま、わたしはアリゾナのとある町にたどりつく。そこにはまた、乳呑児をかかえ夫に捨てられた女や、暗い過去をまとうグアテマラからの亡明者夫妻がいた。それぞれの痛みや悲しみにとまどい、途方に暮れながらも、わたしはその町で生活の糧を得て、傷だらけの子供の閉ざされた心に光をあてようと試みるが…やがて、子供の心にさらに傷を負わせる事件が起こった。へらず口を叩きつつひたむきに生きる若い女主人公と、いたいけなインディアンの女の子との心の交感を描く感動作。

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